Sun by Two Door Cinema Club(2012)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Sun」は、Two Door Cinema Clubが2012年にリリースした2ndアルバム『Beacon』に収録された楽曲であり、前作『Tourist History』から一歩踏み込んだ成熟と叙情性を感じさせるナンバーである。軽快なビートとトロピカルなムードを感じさせるサウンドが特徴的だが、その陽気なトーンとは裏腹に、歌詞には「終わりゆく関係」や「決して戻らない過去」への郷愁が込められている。

タイトルの「Sun(太陽)」は、一見すると光や希望を象徴する存在のようにも思えるが、歌詞のなかではむしろ「眩しすぎて直視できないもの」「やがて沈んでしまうもの」として描かれているようでもある。語り手は、過去にあった美しい記憶に囚われながらも、それを手放さなければならない現実と向き合っている。愛と別れ、理想と現実の交差点に立つこの楽曲は、Two Door Cinema Clubの中でも特にエモーショナルで詩的な作品といえるだろう。

2. 歌詞のバックグラウンド

『Beacon』は、Two Door Cinema Clubにとって初のアメリカ録音作品であり、プロデューサーにはDeath Cab for CutieやThe Shinsなどを手がけたジャックナイフ・リー(Jacknife Lee)を迎えて制作された。その影響もあり、前作よりもスケール感のある音作りがなされており、より広がりのあるサウンドスケープが構築されている。

「Sun」は、アルバムの中でも特にリリックに重きを置いた楽曲であり、メロディやリズムだけでなく言葉の響きと意味が強調されている。フロントマンであるアレックス・トリムブル(Alex Trimble)は、この曲をツアー中の個人的な経験に基づいて書いたと語っており、ステージ上の興奮と、バックステージで感じる孤独との落差がテーマの根底にあるとされている。

アルバム全体が「距離」や「不在」、「すれ違い」といったテーマを軸に構成されているが、「Sun」はその中でも最も純粋に「想いの終焉と残光」を描いた曲であり、多くのリスナーにとって心に残る一曲となっている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Sun」の印象的な一節を引用し、日本語訳とともに紹介する。

Drawn apart, new aim, we’ll never win
引き裂かれ、新たな目的へと向かっていく もう僕たちは勝てない
And slowly run down
そしてゆっくりと、失速していく

Hope you stay the same, wonderful
君がそのままでいてくれることを願ってる 本当に素晴らしい人だから
And all the things that I could never say
僕が言えなかったすべてのこと
Will come out slowly and be replaced
ゆっくりとこぼれ出しては、言い換えられていく

出典:Genius – Two Door Cinema Club “Sun”

4. 歌詞の考察

この曲は、過去の関係を悔やむことなく、しかし未練を完全に断ち切れない「揺らぎ」の中に身を置く心情を描いている。とりわけ「Hope you stay the same, wonderful」という一節には、別れた相手への敬意や温かい眼差しが込められており、痛みのなかにも優しさがある。

歌詞において頻出するモチーフは「変化」と「遅れ」。引き裂かれた関係性、新たな方向性、言葉にならなかった想い——これらが「太陽」という象徴のもとに集約されている。「太陽」はここでは必ずしも明るさや希望の象徴ではなく、「過去の輝き」や「失われた時間」を照らし続ける存在として描かれているように見える。

また、「And all the things that I could never say」というフレーズには、伝えるべきだった言葉を飲み込んだことへの後悔がにじむ。だが、その想いが「slowly」と流れ出していくことで、ようやく語り手は過去と折り合いをつけようとしているようにも感じられる。ここにあるのは激しい感情ではなく、静かな受容と希望の余韻である。

「Sun」は、Two Door Cinema Clubの初期の代表曲と比べるとテンポは落ち着いているが、その分、内省的で詩的な魅力が際立っている。人生における別れや変化を経験した人にとって、この曲の静かな情熱は深く響くだろう。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Holocene by Bon Iver
    静謐なサウンドと内省的な歌詞が特徴。自己との対話を描く点で「Sun」と通じ合う部分がある。
  • Take Care My Baby by Matthew E. White
    別れに際してのやさしさを歌ったバラード。大人の余韻を感じさせる。
  • Settle Down by Kimbra
    トロピカルなアレンジと感情の起伏を持つボーカルが「Sun」のリズムと共鳴する。
  • Midnight City by M83
    夢幻的なサウンドとノスタルジックなムードが共通。夜と光、そして遠く離れた感情を描く。
  • This Must Be the Place (Naive Melody) by Talking Heads
    愛と居場所をテーマにした不朽の名曲。シンプルな言葉のなかに深い感情が込められている。

6. 感情の成熟を表す転機の楽曲として

「Sun」は、Two Door Cinema Clubのサウンドが、単なるダンスロックやインディーポップを超えて、より複雑で深い感情を扱い始めたことを示す転機の楽曲である。それまでの彼らの楽曲は、青春の疾走感や衝動を前面に出すことが多かったが、この曲では時間の流れ、別れ、内省といった大人びたテーマを扱っており、バンドの表現の幅が大きく広がっている。

アルバム『Beacon』全体が「光(beacon)」をキーワードにしているが、そのなかでも「Sun」は光と影、始まりと終わりを最も繊細に表現した楽曲と言えるだろう。情緒的でありながらも決して湿っぽくならず、明るいサウンドと複雑な感情のバランスを絶妙に保ったこの曲は、バンドの成熟を象徴する作品であり、リスナーにとっても人生の変わり目にふと聴き返したくなるような1曲となっている。

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