アルバムレビュー：Stranger Things by Yuck

発売日: 2016年2月26日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブロック、ノイズポップ

『Stranger Things』は、Yuckの3枚目のスタジオアルバムで、バンドが再びノイズポップとオルタナティブロックのルーツに回帰した作品だ。前作『Glow & Behold』では、ドリームポップやシューゲイザーの影響が強く感じられたが、『Stranger Things』では、より粗削りでエネルギッシュなサウンドが復活している。ギターの歪みとキャッチーなメロディ、そしてノスタルジックな90年代オルタナティブロックへのオマージュが感じられるこのアルバムは、デビューアルバムの荒々しい魅力を思い起こさせると同時に、バンドの進化も示している。

フロントマンのマックス・ブルームが再びメインボーカルを務め、彼のソングライティングがアルバム全体に大きな影響を与えている。エネルギッシュなギターリフと、シンプルながらも力強いリズムが際立つ本作は、バンドのオルタナティブロックシーンへの愛とルーツへの回帰が明確に感じられる作品となっている。

各曲ごとの解説:

Hold Me Closer
　アルバムのオープニングトラックで、Yuckのエネルギッシュなサウンドがすぐに炸裂する。激しいギターリフと、キャッチーなボーカルメロディが印象的。デビューアルバムを思わせるノイズポップ的な要素が強く、力強い幕開けとなっている。
Cannonball
　スピード感のあるロックナンバーで、シンプルなギターリフとドラムが強烈なインパクトを与える。ノイズの中にもポップなメロディが存在し、Yuckの得意とするダイナミズムが感じられる。パンクロック的な勢いが楽曲を駆け抜ける。
Like a Moth
　ディストーションギターが中心となった曲で、少し抑えた雰囲気の中に、メロディの切なさが漂う。繊細なボーカルと激しいギターサウンドの対比が印象的で、Yuckのメロディセンスが光る一曲。
Only Silence
　ゆったりとしたテンポで進むこの曲は、前作の『Glow & Behold』で見られたドリームポップ的な要素が再び現れる。静かで内省的な雰囲気が漂うトラックで、ギターのリバーブが幻想的なサウンドスケープを作り出している。
Stranger Things
　アルバムのタイトル曲で、シューゲイザー的なサウンドとオルタナティブロックが融合した楽曲。歪んだギターが曲を支配し、エコーの効いたボーカルが浮遊感を与える。Yuckの音楽的多様性を感じさせる重要なトラックだ。
I’m OK
　疾走感のあるポップロックナンバーで、シンプルでありながらもキャッチーなメロディが特徴。軽快なリズムとメロディアスなコーラスが、アルバム全体のバランスをとっている。パワーポップ的な要素が強く、ポジティブなエネルギーを感じる一曲。
As I Walk Away
　メランコリックな雰囲気を持つトラックで、ノスタルジックなメロディが印象的。静かで控えめなボーカルとエフェクトのかかったギターが、内省的な感情を表現している。Yuckの感情的な一面がよく表れた楽曲だ。
Hearts in Motion
　力強いギターリフとポップなメロディが融合したトラックで、オルタナティブロックの王道を行くサウンドが特徴。ボーカルのエネルギーとギターの荒々しさが絶妙にバランスしており、アルバムの中でも特に目立つ一曲。
Swirling
　スローテンポで進行し、シューゲイザー的なムードが漂う。ギターのフィードバックと柔らかいメロディが、夢幻的なサウンドスケープを作り出し、アルバム全体に静かな余韻をもたらす。
Yr Face
　アルバムの最後を飾る曲で、緩やかなテンポと美しいメロディが特徴。静かなギターと感情を抑えたボーカルが織りなす、内省的で感情的な締めくくりにふさわしいトラックである。

アルバム総評:

『Stranger Things』は、Yuckが再びノイズポップとオルタナティブロックのルーツに戻り、荒々しいギターサウンドとエネルギッシュなロックを展開したアルバムだ。前作『Glow & Behold』で見られたドリーミーで繊細なサウンドとは対照的に、より力強く、ノスタルジックな90年代のオルタナティブロックを思わせるサウンドが前面に出ている。エフェクトのかかったギターとキャッチーなメロディが融合し、シューゲイザーやノイズポップのエッセンスが加わった多様性のあるアルバムとなっている。「Hold Me Closer」や「Cannonball」のようなエネルギッシュなトラックから、「Only Silence」や「Yr Face」のような内省的でメランコリックなトラックまで、Yuckの幅広い音楽性を感じさせる一枚だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

Crooked Rain, Crooked Rain by Pavement
90年代オルタナティブロックの名盤で、Yuckの荒々しいギターサウンドやキャッチーなメロディに共感するリスナーにぴったり。DIY精神が溢れるサウンドが魅力。
Last Splash by The Breeders
グランジとオルタナティブロックを融合させたアルバムで、Yuckのノイズポップ的なサウンドと通じる要素が多い。力強いギターとキャッチーなメロディが共通点。
Loveless by My Bloody Valentine
シューゲイザーの名盤で、Yuckの歪んだギターサウンドや、夢幻的なムードが好きなリスナーにおすすめ。ギターノイズの美しさを追求した作品。
Slanted and Enchanted by Pavement
インディーロックの金字塔で、ラフなギターサウンドとシンプルなメロディが特徴。Yuckのオルタナティブロックへの回帰を楽しめる人にぴったり。
Doolittle by Pixies
ノイズポップとオルタナティブロックの代表作で、Yuckのサウンドに影響を与えたバンドの一つ。激しさと繊細さが共存するアルバムで、Yuckファンにとっても必聴の一枚。