発売日: 1989年1月24日
ジャンル: アートポップ、オルタナティブポップ、フォーク
アルバム全体の印象
「Strange Angels」は、ローリー・アンダーソンが1989年にリリースした3枚目のスタジオアルバムであり、それまでの実験的なスタイルから、よりメロディックでポップな方向性を取り入れた作品である。本作では、彼女の独特な語りに加え、歌唱を重視したアプローチが取られており、アートポップという枠を超えた幅広いリスナーにアピールしている。
このアルバムでは、アンダーソンの詩的な世界観と日常的なテーマがより親しみやすい形で表現されている。シンセサイザーや電子音響だけでなく、アコースティック楽器やストリングスが効果的に使われ、温かみのあるサウンドが特徴的だ。プロデューサーとして、アンビエント界の巨匠ブライアン・イーノや著名なセッションミュージシャンが参加し、アンダーソンのアート性を損なうことなく、洗練されたポップアルバムとして完成されている。
「Strange Angels」や「Babydoll」のような楽曲では、ユーモアと内省的なテーマが見事に融合し、アンダーソンのアーティストとしての進化が感じられる。本作は、彼女の実験精神とメロディックなポップセンスが絶妙なバランスで組み合わさったアルバムであり、1980年代末のポップシーンにおけるユニークな存在として光り輝く。
各曲解説
1. Strange Angels
アルバムのタイトル曲で、軽やかで親しみやすいメロディが特徴的。アンダーソンの歌声が柔らかく響き、日常の中に潜む不思議さや美しさを描いた歌詞が印象的。
2. Monkey’s Paw
ダークでミステリアスな雰囲気を持つ楽曲。シンセサウンドとリズミカルなビートが絡み合い、寓話的な歌詞が深い印象を残す。
3. Coolsville
ジャジーなアプローチが際立つトラックで、アコースティックギターと低音が楽曲に独特のグルーヴを加えている。アンダーソンの語りと歌が交錯するユニークな一曲。
4. Ramon
ミニマルなリズムと詩的な歌詞が特徴のトラック。内省的なムードが漂い、アルバム全体の中でも静かな魅力を持つ。
5. Babydoll
シングルカットされたキャッチーな楽曲で、エレクトロポップの軽快さが特徴。ウィットに富んだ歌詞がアンダーソンのユーモアセンスを感じさせる。
6. Beautiful Red Dress
フェミニズムや社会的なテーマをユーモラスに扱ったトラック。エネルギッシュなリズムと鮮やかなメロディが耳に残る。
7. The Day the Devil
物語的な歌詞が際立つ楽曲で、ダークでシアトリカルなムードが特徴的。アンダーソンの物語性豊かな表現が楽しめる。
8. The Dream Before
静謐で感動的なトラック。ヴォーカルと楽器のアレンジが繊細に絡み合い、夢見るような雰囲気を作り上げている。
9. My Eyes
アルバムの中で最も内省的な楽曲の一つ。アコースティックなサウンドとアンダーソンの語り口調が調和し、心に響く一曲。
10. Hiawatha
アルバムの締めくくりを飾る楽曲で、壮大なスケールと詩的な歌詞が特徴的。静かに高揚感を与えるフィナーレ。
アルバム総評
「Strange Angels」は、ローリー・アンダーソンが実験的なアートポップの領域から、より親しみやすいポップサウンドへと進化を遂げたアルバムである。それまでのシュールな語り主体のスタイルを維持しつつ、彼女の歌声やメロディセンスが一層引き立てられた作品となっている。
「Strange Angels」や「Babydoll」のような楽曲では、アンダーソンの人間味とユーモアが感じられ、ポップ音楽としての完成度が高い。彼女の知的なアプローチと親しみやすさが見事に融合し、初めてローリー・アンダーソンを聴くリスナーにもおすすめの一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「Big Science」 by Laurie Anderson
アンダーソンのデビュー作で、実験的な電子音楽と詩的な語りが融合した作品。
「Homogenic」 by Björk
オーケストラ的なサウンドとエレクトロニカが融合した作品で、アンダーソンの影響を感じさせる。
「The Sensual World」 by Kate Bush
詩的で感情的なアートポップの名盤で、「Strange Angels」と同じくリリカルな魅力がある。
「Speaking in Tongues」 by Talking Heads
ポップでありながらもアート性を備えたアルバムで、アンダーソンの作風と通じる部分が多い。
「The Future」 by Leonard Cohen
深い歌詞と洗練されたアレンジが特徴のアルバムで、アンダーソンの詩的な側面に共感できるリスナーにおすすめ。
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