
1. 歌詞の概要
「Starcrossed Losers」は、The Fratellisが2018年に発表したアルバム『In Your Own Sweet Time』に収録された楽曲で、アルバムを代表するシングルのひとつである。歌詞の中心にあるのは“運命に導かれた落伍者たち(Starcrossed Losers)”というフレーズで、これは古典的な「Star-crossed lovers(宿命の恋人たち)」という表現をもじったものである。つまり、この曲は「運命に翻弄される恋人たち」の物語を、The Fratellis流にユーモラスでシニカルに描いたものである。愛は美しくも悲劇的で、登場人物は自らの不運を受け入れつつも、共に過ごす時間に意味を見出そうとする。軽快なメロディとは裏腹に、歌詞には諦観と哀愁が漂っている。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Fratellisは、デビュー当初から享楽的でパブ・ロック的な勢いを持ちながら、街角の物語をユーモラスに描いてきた。『In Your Own Sweet Time』は2018年にリリースされた彼らの5作目のアルバムであり、従来のロックンロール的エネルギーを保ちながらも、ポップでカラフルなアレンジを大きく取り入れている。
「Starcrossed Losers」は、アルバムの中でも最も叙情的でストーリーテリング色の強い楽曲であり、グラスゴーの酒場や街角を舞台にした「不運な恋人たち」の寓話として機能している。バンドが昔から影響を受けてきたブリティッシュ・トラッドの語り口や、シアトリカルな要素も濃く反映されており、単なるラブソングではなく「人生の縮図」として響く曲になっている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
英語歌詞(抜粋)
“We were starcrossed losers
Born to be forgotten”
日本語訳
「僕らは運命に翻弄された落伍者
忘れ去られるために生まれてきたんだ」
さらに運命の儚さを示すフレーズ。
英語歌詞(抜粋)
“And if we’re lucky, we might get to see
Another day in the sun, you and me”
日本語訳
「もし運が良ければ、君と僕は
もう一度だけ太陽の下で過ごせるかもしれない」
(歌詞引用元: Genius)
4. 歌詞の考察
「Starcrossed Losers」は、運命に翻弄される恋人たちの物語を描きながら、「愛と不運は切り離せない」という普遍的なテーマを歌い上げている。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に代表される“Star-crossed lovers”の概念を逆手に取り、「負け犬たちの恋」として描くことで、The Fratellisらしいユーモアとアイロニーが生まれている。
歌詞のトーンは悲劇的でありながら、そこに漂うのは完全な絶望ではなく、むしろ「不運な者同士だからこそ分かち合える愛」への肯定感である。二人が社会から忘れ去られた存在であっても、共に過ごす時間の価値は揺るがない――この視点が曲全体を貫いている。
音楽的には、キャッチーで軽快なメロディと華やかなアレンジが、歌詞のシリアスさを和らげ、むしろ親しみやすさを加えている。悲喜劇的な要素を同居させることで、リスナーは「楽しく口ずさみながら、ふと人生の切なさを感じる」ような体験を得る。これはThe Fratellisが得意とするスタイルであり、この曲がアルバムの核となる理由でもある。
(歌詞引用元: Genius)
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Whistle for the Choir by The Fratellis
哀愁とロマンティシズムを帯びた叙情的なバラード。 - Ole Black ‘n’ Blue Eyes by The Fratellis
傷と愛を同時に抱えた人間性を描く温かいクロージング曲。 - Seven Nights Seven Days by The Fratellis
放埒な一週間を描いた享楽と虚無の歌。 - Don’t Look Back into the Sun by The Libertines
退廃的で浪漫的な若者の物語を描いたUKインディ名曲。 - There Is a Light That Never Goes Out by The Smiths
悲劇的でロマンティックな愛を描いたUKロックの名曲。
6. 現在における評価と影響
「Starcrossed Losers」は、The Fratellisのキャリアにおいて特に物語性の強いシングルであり、ファンから高い評価を得ている。ライブでも人気の定番曲となり、観客が合唱する姿はまるで現代の街角悲劇を祝祭的に共有する場のようである。
また、この曲は『In Your Own Sweet Time』の中でバンドの成熟を示す存在となり、単なる「飲み歌ロックバンド」というイメージを超え、「哀愁と物語を描けるソングライター集団」であることを改めて証明した。現在ではThe Fratellisの代表曲のひとつとして、彼らの“享楽と切なさの両立”を象徴する楽曲に数えられている。



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