アルバムレビュー：Sofa Kings by Royel Otis

発売日: 2024年2月16日
ジャンル: インディー・ロック、ドリーム・ポップ、サイケ・ポップ、オーストラリアン・オルタナティブ

概要
全曲レビュー（主要トラック抜粋）
総評
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概要

『Sofa Kings』は、オーストラリア・シドニー出身のインディー・デュオ、Royel Otisによるデビュー・アルバムであり、洒脱さと憂い、緩やかな脱力感と鋭い美意識が共存する、“海風と都会が混じった新世代のギターポップ”の到達点である。

Royel Otisは、ギタリストのOtis PavlovicとヴォーカリストのRoyel Maddellによるユニットで、マック・デマルコ以降の“宅録的サイケ・ポップ感覚”と、リアルなリリックの情感をミックスした作風が特徴。
本作『Sofa Kings』では、2人のリラックスした演奏と内省的な詞世界が、オーストラリアの都市の空気感と夢幻的なムードを絶妙に融合させている。

アルバムタイトルは、“王座に座る脱力系”という皮肉を帯びたもので、何者にもなれない若者の視点から描く、軽さとシリアスの間をたゆたう言葉と音に満ちている。

全曲レビュー（主要トラック抜粋）

1. Heading For The Door

アルバムの幕開けは、微睡むようなギターフレーズと穏やかなビート。
「誰にも何も言わずに、ただドアへ向かう」というフレーズに象徴される逃避願望と倦怠が、甘美なメロディに包まれて逆説的に輝く。

2. Adored

90年代のブリットポップを思わせるギターの煌めきと、ナイーブな歌声が融合したドリーミー・ナンバー。
“愛されたい”という普遍的で切実な感情が、飾らない言葉と開放的なコード進行で表現されている。

3. Foam

バンド名のような浮遊感をまとった、ミッドテンポのサイケ・ポップ。
海辺の情景を思わせるエフェクトと、ぼんやりとした歌い口が印象的。
現実と夢のあいだを揺らぐ心象風景が浮かび上がる。

4. Fried Rice

軽妙なリズムとリフが特徴の異色曲。
ジャンクフードを題材にしながら、実は空虚さと孤独を描いているという“笑ってるけど泣いてる”系の逸品。

5. I Wanna Dance With You

The Cure的コード進行と、ほのかなシンセのきらめきが絡むインディー・ラブソング。
Royelのボーカルがここで最もストレートに感情を吐露しており、この一曲でアルバム全体の重力がぐっと増す瞬間でもある。

総評

『Sofa Kings』は、Royel Otisが自分たちの居場所を探しながら、“どこにも居ない感覚”そのものを音楽にしたような、浮遊と定着のあいだに揺れるインディー・ロックの秀作である。

力まず、飾らず、でも美意識ははっきりと。
そうしたバランス感覚は、Z世代以降のインディー・ポップ・シーンにおける新しい佇まいとして注目されている。

都会の朝とビーチの午後が同居するようなサウンドスケープは、ジャンルや国境を超えて、静かに、そして確実に広がっていくはずだ。