
発売日: 1976年5月
ジャンル: ハード・ロック、アシッド・ロック
2. 概要
『Skullduggery』は、カナダ/アメリカのロック・バンド Steppenwolf が1976年に発表した9作目のスタジオ・アルバムである。
Epicレーベル移籍後の3作目であり、『Slow Flux』(1974)、『Hour of the Wolf』(1975)と続いた“Epic期三部作”の締めくくりにあたる作品なのだ。
録音は1976年1月に行われ、同年5月にリリース。
レーベルは前作と同じくEpic、プロデュースはバンド自身が担当している。
メンバーは、John Kay(Vo/Gt)、Bobby Cochran(Lead Gt, Vo)、George Biondo(Ba, Vo)、Wayne Cook(Key)、Jerry Edmonton(Dr, Perc, Backing Vo)という編成。
このラインナップは『Hour of the Wolf』から継続しており、サウンド面ではEpic期Steppenwolfの集大成と言えるが、同時に本作を最後にキーボーディストのWayne Cookが脱退し、後にPlayerへ加入することになる。
『Skullduggery』はまた、“Steppenwolf”名義での70年代最後のスタジオ作でもある。
この後、バンドは再び活動停止状態となり、80年代以降は“John Kay & Steppenwolf”名義での活動へと移行する。
その意味で、本作は“オリジナルSteppenwolf”の終幕を告げるアルバムとして、ディスコグラフィ上の象徴的な位置を占めているのだ。
楽曲構成は全8曲。
A面はタイトル曲「Skullduggery」に始まり、モータウンの名曲を取り上げた「(I’m A) Road Runner」、カナダのソングライターValdyことValdy Horsdalのカバー「Rock ’n Roll Song」、Alan O’Day提供の「Train Of Thought」と、オリジナルとカバー/外部ライター曲が半々に並ぶ。
B面も、Bobby Cochran作の「Life Is A Gamble」「Sleep」、レゲエ/ゴスペル寄りの「Pass It On」、そしてバンド共作の「Lip Service」という構成で、全体で見るとオリジナルとカバー(ないし外部作家曲)がバランスよく配置されている。
この“オリジナル+カバー半々”という構成は、一部の評論家からは“契約消化的”“統一感に欠ける”と批判されてきた。
実際、当時のレビューには「多くの曲が単調で、歌詞も浅い」「バンドの“空洞な側面”ばかりが出てしまっている」といった辛口の評も見られる。
しかし、近年Epic期3作をまとめたボックス『The Epic Years 1974–1976』の再発に伴い、『Skullduggery』を再評価する声も増えている。
特に、タイトル曲「Skullduggery」や、ファンク感のある「Life Is A Gamble」、レイドバックしたカバー「Rock ’n Roll Song」、ラストの「Lip Service」などは、“Epic期Steppenwolfのベスト・トラック”としてもしばしば名前が挙げられている。
サウンド面では、『Slow Flux』『Hour of the Wolf』で確立された“ミッド70s型Steppenwolf像”をさらに推し進めた印象だ。
Cochranのギターは70年代らしい切れ味とファンク・フィールを備え、Wayne Cookのキーボードはオルガンに加えてエレピ系やシンセ的ニュアンスも取り入れている。
そこにJerry Edmonton のタイトなドラムとBiondoの歌えるベースが加わり、“ラフなブルース・ロック”から“整理されたハード・ロック/シティ寄りロック”へと変化した状態がよく表れている。
一方、歌詞のテーマは、70年代半ばの空気を反映して、自由や反体制よりも、日常、運命、自己不信といった“内側”へ向きがちである。
ギャンブルを人生にたとえる「Life Is A Gamble」、スピリチュアルな“バトン渡し”を描く「Pass It On」、疲弊とまどろみの境界を歌う「Sleep」など、“終わりの気配”と“まだ続いてしまう日々”を同時に感じさせるトーンがアルバム全体を支配している。
商業的には、前2作よりもさらに影が薄く、Billboardチャート上での大きな成功は残していない。
しかし、Epic期ボックスの登場以降、“レコードもCDも長らく見つからなかった幻のアルバムがやっと聴けた”という文脈も加わり、“Steppenwolf後期の隠れた魅力”を示す一枚として、じわじわと存在感を増している作品なのである。
3. 全曲レビュー
1曲目:Skullduggery
タイトル曲「Skullduggery」は、Bobby Cochran 作の5分超えナンバー。
Epic期3作の中でも屈指のハイライトとしてしばしば名前が挙がる楽曲である。
イントロからJerry Edmontonの“機関銃のようなドラミング”が炸裂し、その上をCochranのリード・ギターとWayne Cookのキーボードが交差する。
リフはシンプルだが推進力があり、中盤にはギター・ソロとキーボード・ソロが交互に展開される、70年代ハード・ロック的王道構成だ。
タイトルにある“Skullduggery”は“いかさま”“悪巧み”“汚い手”といった意味を持つ言葉で、歌詞では、裏で暗躍する支配者層や、筋の通らないルールを押しつける権力者への不信感が描かれる。
『Monster』ほど露骨な政治テーマではないが、“筋の通らない世の中への苛立ち”というSteppenwolfらしい視点が、70年代後期のサウンドでアップデートされている印象だ。
John Kay のヴォーカルは、この曲ではかなり荒ぶったモードで、フレーズの語尾にかけてしゃがれ声を強く押し出してくる。
Epic期に入って落ち着きがちだった“ウルフの咆哮”が、久々に前面に出てくる瞬間でもある。
2曲目:(I’m A) Road Runner
続く「(I’m A) Road Runner」は、Motown黄金コンビHolland–Dozier–Hollandによる、Jr. Walker & The All Starsのヒット曲のカバー。
原曲はソウルフルなサックスを前面に押し出したモータウン・チューンだが、Steppenwolf版はギターとオルガンを軸にしたハード・ロック寄りのアレンジに変換されている。
テンポはオリジナルに近いが、ドラムのビートはよりタイトで、Cochranのギター・リフがリズムを引っ張る。
歌詞は、止まらないロードランナー(走り続ける男)を主人公にした“逃げ足の速いアウトロー”ソング。
初期の「Born to Be Wild」や「Sookie Sookie」と通じるバイカー的自由のイメージを、ミッド70s仕様で再演していると言えるだろう。
ボックスセットのレビューなどでは、“原曲に負けないパワフルなカバー”と評価されることも多く、本作の“即効性のあるフック”として機能している。
3曲目:Rock ’n Roll Song
「Rock ’n Roll Song」は、カナダのシンガー・ソングライター Valdy(Valdy Horsdal)による楽曲のカバー。
原曲はアコースティック寄りのフォーク・ロックだが、Steppenwolf版ではエレキ・ギターとオルガンを加え、適度にドライヴさせたロック・アレンジとなっている。
とはいえ、テンポも歌い口も比較的穏やかで、Epic期Steppenwolfが持つ“レイドバックした一面”をよく表すトラックだ。
歌詞は、タイトルどおり、“ロックンロール・ソング”そのものについて歌ったメタ・ソング。
ロックが人の心をどう動かし、日常のどの瞬間に寄り添うのか――そんな視点が、シンプルな言葉で綴られている。
Epic期ボックスのレビューでは、この曲を“リリカルで魅力的なカバー”“Skullduggeryの中でも特に味わい深い1曲”として推す声もあり、“地味だが手放せない”タイプの楽曲である。
4曲目:Train Of Thought
A面ラストの「Train Of Thought」は、「Smokey Factory Blues」や「It Never Rains in Southern California」で知られるAlan O’Dayによる提供曲。
テンポはミディアムで、イントロのギターとキーボードが作るコード進行が印象的だ。
リズム・パターンは比較的シンプルだが、Biondoのベースが細かい動きでグルーヴを付け、Kayのヴォーカルもフレーズごとに強弱を付けて歌うことで、静かな緊張感が生まれている。
“思考の列車”というタイトルどおり、歌詞は主人公の頭の中を次々と駆け抜けるイメージや記憶を描写していく。
Epic期Steppenwolfの中でも、より“内面の独白”に近いタイプの曲で、政治や社会ではなく、個人の意識の流れにフォーカスした歌だと言える。
アルバム前半の締めくくりとして、勢いだけで押し切るのではなく、“余韻と考え込ませる感覚”を残す役割を果たしている。
5曲目:Life Is A Gamble
B面頭の「Life Is A Gamble」は、Bobby CochranとH. Garfieldの共作。
タイトルどおり、“人生は賭けだ”という古典的なメタファーを正面から扱った楽曲である。
イントロのリフはファンキーで、ドラムもシャッフル気味のグルーヴを刻む。
ギターが小気味よくカッティングを入れ、キーボードはコードを厚く支える役に回ることで、“中音域がぎっしり詰まった70年代ハード・ロック”らしいサウンドになっている。
歌詞では、手札を選べない人生の不条理と、それでも賭けに出るしかない現実が、カジノ/カードゲームのイメージを通じて描かれる。
“負けが込みながらも、たまに勝つからやめられない”という感覚は、バンド生活やツアー人生の比喩として受け取ることもできる。
Epic期の総括的なレビューでは、「Skullduggeryを支える軸のひとつ」「タイトル曲と並ぶハイライト」とされることも多く、実際、ハード・ロックとしての完成度も高い。
6曲目:Pass It On
「Pass It On」は、レゲエ/ルーツ・ロック畑のソングライター Jean Watt の提供曲で、オリジナルはスピリチュアルなルーツ・レゲエとして知られている。
Steppenwolf版では、完全なレゲエではなく、バックビートを強調したミドル・テンポのロックにアレンジされている。
ギターはシンコペーション気味のカッティングを挟み、ベースはルーツ・レゲエのようなうねりを残しつつも、ロック・アルバムの文脈に収まるように整理されている。
歌詞のテーマは、“愛や慈しみ、良いバイブレーションを次の世代へ受け渡すこと”。
宗教的・スピリチュアルなニュアンスを潜ませながら、“善意のバトンを渡していく”という普遍的メッセージに落とし込まれている。
Epic期の硬質なハード・ロック曲と並べて聴くと、ここだけ少し空気が柔らかく、アルバムの緊張を一瞬ほぐす役割を果たしている。
7曲目:Sleep
「Sleep」は、Bobby Cochran 単独名義の楽曲。
タイトルのとおり“眠り”をテーマにしたミディアム・スローのナンバーで、アルバムでもっともドリーミーな質感を持つ一曲である。
ギターは控えめなクリーン〜クランチ・トーンでアルペジオと短いリフを織り交ぜ、キーボードはパッドのような長い音で空間を満たす。
ドラムとベースはシンプルなリズムを刻みつつ、細かなフィルとフレーズで“半覚醒状態”的な浮遊感を演出している。
歌詞は、現実から一時的に逃れたい願望と、眠りに落ちる瞬間の安心感が交錯する内容だ。
人生の“Skullduggery=いかさま”に疲れた心が、一時的に保護される場所としての眠り――アルバム全体の流れの中で聴くと、そうした解釈も浮かび上がってくる。
70年代当時の批評では「キャッチーなリフだが小品にとどまる」と辛口な評価もあったが、現在の視点で聴き返すと、Epic期Steppenwolfの“夜の顔”を象徴する、味わい深いトラックに思える。
8曲目:Lip Service
ラストの「Lip Service」は、Steppenwolf名義のバンド共作。
5分半に及ぶエンディング・ナンバーであり、『Skullduggery』だけでなく、70年代のSteppenwolfそのものを締めくくる役割を担う曲と言ってよい。
サウンドは、ミディアム・テンポのハード・ロックを基調にしつつ、キーボードが程よくコードを彩り、ギターがサビで厚みを増す構成。
中盤には、CochranとCookのソロ・パートが挿入され、Epic期3作で培ったアンサンブルが自然に発露している。
“Lip Service”は“口先だけのサービス”“上辺だけの約束”を意味する。
歌詞では、権力者やメディア、あるいは音楽業界そのものが“口先だけの約束や誉め言葉”を並べ立てる姿が批判的に描かれる。
“結局、行動が伴わなければ意味がない”というメッセージは、バンド自身が体験してきたレーベルやビジネスの現実とも重なる。
Epic期ボックスのレビューでは、“Skullduggeryを締めくくるにふさわしい、骨太なラスト・トラック”と評されることも多く、静かな怒りと諦観が混ざった独特の余韻を残してアルバムは幕を閉じる。
4. 総評
『Skullduggery』は、Steppenwolfの長いキャリアの中でも、とりわけ“評価が割れる”アルバムである。
ある批評家は、“多くの曲が凡庸で、歌詞も単純”“バンドのラフなロックの“空洞な側面”しか見えない”と酷評した。
別のレビューでは、“カバーとオリジナルが半々という構成自体が、契約消化的である”“彼らの“ヘヴィ・メタル・サンダー”時代とは程遠い”と述べられている。
一方で、Epic期3作を俯瞰する近年のボックスセット・レビューでは、“タイトル曲『Skullduggery』や『Life Is A Gamble』『Rock ’n Roll Song』など、優れた楽曲に満ちたフラストレーティングな作品”“クラック(ひび)は見えているが、中身は決して空ではないアルバム”という評価も見られる。
このギャップをどう理解すべきか。
まず、サウンド面の観点から見ると、『Skullduggery』は明らかに“ミッド70s仕様のSteppenwolf”である。
初期Dunhill期の作品にあったガレージ/ブルース寄りのラフさ、オルガンの轟音、ドラッグと政治が入り混じる空気はかなり後景に退き、代わってタイトに整えられたハード・ロック/シティ寄りロックが前面に出ている。
Bobby Cochranのギターは切れ味が良く、ファンクやR&B寄りのグルーヴ感を持ち込んでいる。
Wayne Cookのキーボードは、Goldy McJohnの暴れ回るオルガンとは対照的に、アンサンブルを整理し、時にシンセやエレピ的なニュアンスで質感を彩る。
Jerry Edmontonのドラムも、“土煙の上がるドラミング”から、“スタジオ録音向けのタイトさ”へと変化している。
この“整理されたSteppenwolf”像が、初期の粗削りなヘヴィ・ロックを愛するファンからすると“らしくない”と感じられる一方で、70年代ロックの文脈で聴くと、“ほどよく枯れた大人のハード・ロック”として魅力的に響く場面も多い。
特に、「Skullduggery」「Life Is A Gamble」「Lip Service」といったオリジナル曲は、リフと構成、演奏のバランスが良く、Epic期3作の中でも上位に挙げられる出来だと言ってよい。
次に、構成面の問題。
オリジナル曲とカバー/外部ライター曲が半々という形は、確かに“コンセプト性”の面では弱く見える。
『Monster』や『For Ladies Only』のような、政治やジェンダーをめぐる明確なテーマ・アルバムと比べると、『Skullduggery』は“良い曲を集めたロック・アルバム”に留まっているようにも見える。
しかし、選ばれたカバー曲の顔ぶれ――Motownクラシックの「(I’m A) Road Runner」、カナダのフォーク・シンガーValdyの「Rock ’n Roll Song」、ルーツ・レゲエの「Pass It On」――を眺めると、そこには一貫したロジックも見えてくる。
それは、“ロックの源泉(ソウル/フォーク/レゲエ)への敬意”と、“70年代半ばのアメリカという広い意味でのルーツ・ミュージックとの対話”である。
Steppenwolfは、60年代末には“ヘヴィ・メタル・サンダー”の象徴として語られてきたバンドだが、その実、ブルースやフォーク、ソウルからの影響を強く受けている。
『Skullduggery』では、そのルーツをカバーという形であえて前景化し、自分たちのオリジナル曲と並べることで、“今この時代のSteppenwolfがどこに立っているか”を静かに示そうとしているようにも思えるのだ。
歌詞世界の変化も見逃せない。
『Monster』がアメリカ史とベトナム戦争を正面から扱い、『Slow Flux』がギャングや司法制度、工場労働など、社会の断面を多面的に切り取っていたのに対し、『Skullduggery』では、テーマがより内面や日常へと縮んでいる。
“いかさま”“嘘”“口先だけのサービス”“眠り”“人生は賭け”――これらのモチーフは、1970年代半ばの幻滅した空気の中で、人が自分自身とどう折り合いをつけるかという問題とも結びついている。
政治的スローガンの時代は終わり、個人の諦観と小さな希望だけが残った――『Skullduggery』は、そんな時代のムードを、派手なコンセプト抜きでロック・アルバムの中に滲ませた一作なのかもしれない。
Epic期3作の中でどの位置に置くべきかという問いに対しては、批評家やファンのあいだでも意見が割れている。
“完成度の高さでは『Slow Flux』、バランスでは『Hour of the Wolf』、荒削りだが妙味があるのが『Skullduggery』”という見方もあれば、“タイトル曲と『Life Is A Gamble』だけで『Skullduggery』を選ぶ価値がある”という意見もある。
今日の耳で聴くと、『Skullduggery』は“代表曲が少ない分、アルバム単位でじっくり味わうべき”タイプの作品だと感じられる。
ヒット曲中心のベスト盤では決して見えてこない、“中期〜後期Steppenwolfの質感”――乾いたギター、渋い歌い回し、地に足の着いたグルーヴ――を、最も素直な形で体験できる一枚なのだ。
Steppenwolfを“60年代のバイカー・ロック・バンド”としてだけ捉えているリスナーにとって、『Skullduggery』は、そのイメージを静かに更新してくれるアルバムである。
時代のギラつきが薄れた後、それでもステージに立ち続けるバンドがどんなロックを鳴らしていたのか――その答えのひとつが、この作品の中に刻まれている。
5. おすすめアルバム(5枚)
- Slow Flux / Steppenwolf(1974)
Epic期三部作の1作目。
「Straight Shootin’ Woman」「Smokey Factory Blues」など、ブルース色の濃いハード・ロックが並ぶ、Epic期の軸となるアルバム。
『Skullduggery』と聴き比べることで、2年のあいだにサウンドがどれだけスムーズになったかがよく分かる。 - Hour of the Wolf / Steppenwolf(1975)
Epic期2作目で、『Skullduggery』の直前作。
「Another’s Lifetime」「Mr. Penny Pincher」など、キーボード主体のプログレッシヴな楽曲も含む、実験色の強い作品。
両者を聴き比べると、“同じラインナップが1年のあいだにどう変化したか”が立体的に見えてくる。 - Steppenwolf 7 / Steppenwolf(1970)
Goldy McJohn在籍期の終盤を代表するアルバムで、「Snowblind Friend」「Who Needs Ya」などを収録。
オルガンが前に出たサイケ/ブルース寄りのSteppenwolfと、Epic期の整理されたサウンドを比較すると、バンドの“音響デザインの変遷”がよく見えてくる。 - Monster / Steppenwolf(1969)
アメリカ史とベトナム戦争を題材にした政治コンセプト作。
マクロな政治批評に振り切った『Monster』と、日常や個人の内面をテーマにする曲が多い『Skullduggery』を対比すると、70年代にかけてSteppenwolfがどのように視点を変えていったかが見えてくる。 - L.A. Woman / The Doors(1971)
同じウェストコーストのバンドが、ブルースとR&Bを取り込みながら都市の闇と幻滅を描いた名盤。
カウンターカルチャーの終焉と、その後の“夜の長さ”を描くという点で、『Skullduggery』と通じる部分があり、70年代ロックの空気を広い文脈で感じることができる。
8. ファンや評論家の反応
『Skullduggery』の評価は、リリース当時と現在でかなりニュアンスが異なる。
1976年当時の代表的なレビューのひとつでは、“アルバムの大半は、バンドのラフなロック・スタイルの“最も空虚な側面”を示すだけだ”“『Life Is A Gamble』『Pass It On』『Rock ’n Roll Song』は単調な音楽と単純な歌詞の組み合わせにすぎない”と、かなり厳しい言葉が並んでいる。
また、Epic期三部作を総括する近年のあるレビューでは、“Skullduggeryのカバーとオリジナルの混在は契約履行アルバムのように見える”“バンドのポテンシャルに対して物足りない”と指摘されている。
一方で、2020年代に入ってからのボックスセット『The Epic Years 1974–1976』のレビューでは、トーンがかなり変わっている。
- “3枚とも素晴らしいが、とくにタイトル曲『Skullduggery』と『Life Is A Gamble』は、mid-70s Steppenwolfのベスト・トラックだ”
- “『Rock ’n Roll Song』はリリカルで、バンドの柔らかい一面を見せる佳曲”
- “カバーとオリジナルが混ざってはいるが、サウンドの統一感は意外なほどある”
といったポジティブな評価が目立ち、当時“地味な新作”として見過ごされた作品が、時間を経て“後期のカルト的人気盤”として見直されつつある。
ファン・コミュニティの声を拾っていくと、
- “Steppenwolfをベスト盤だけで判断している人にこそ聴いてほしい隠れ名盤”
- “LPもCDも長く入手困難だったせいで評価される機会が少なかったが、ボックス再発でようやく再発見された”
- “確かにピークではないが、バンドの“老成したロック”を味わえる貴重な記録”
といった感想が多い。
総じて、『Skullduggery』は“Steppenwolf黄金期”の代表作とは呼ばれないまでも、Epic期を語るうえでは避けて通れないアルバムとして、じわじわと評価を高めている。
60年代のヘヴィ・メタル・サンダーばかりが語られがちなバンドの、もうひとつの側面――ミッド70sの渋く乾いたロック・サウンドと、疲弊と諦観を内包した歌詞世界――を知るための重要な鍵となる作品なのだ。
参考文献
- Wikipedia “Skullduggery (album)”(基本情報、リリース年、編成、Epic期での位置づけ)
- Discogs “Steppenwolf – Skullduggery”(トラックリスト、作曲者クレジット、パーソネル)
- AllMusic “Skullduggery – Steppenwolf”(アルバム解説、評価傾向)
- Jeff Burger “Music Review: Steppenwolf’s ‘Skullduggery’”(1976年当時の批評、辛口レビューの内容)
- Metal Planet Music / LouderSound / Now Spinning “The Epic Years 1974–1976” レビュー(Epic期三部作と『Skullduggery』の再評価)
- 日本語ニュース/通販サイト(Epic Yearsボックスの紹介、収録内容)



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