発売日: 2013年5月6日
ジャンル: ポストパンク、オルタナティブロック
ロンドン出身の4人組バンドSavagesによるデビューアルバム『Silence Yourself』は、2010年代ポストパンク・リバイバルの中で異彩を放つ、鋭さと力強さに満ちた作品だ。鋭いギタートーン、突き刺さるようなリズムセクション、そしてジェニー・ベスの感情的でダイナミックなボーカルが、緊張感に満ちた音楽体験を提供する。
アルバムタイトルの「Silence Yourself(自分を黙らせろ)」は、現代社会における過剰な情報やノイズに対抗し、自らを見つめ直す重要性を訴えている。Savagesは、このアルバムでポストパンクのエッセンスを取り入れながら、現代的で挑発的なメッセージを音楽を通じて届けることに成功している。音楽そのものが武器であり、このアルバムはその武器が最大限に振るわれた結果だ。
各曲解説
1. Shut Up
アルバムの幕開けを飾るトラックで、イントロには映画のセリフが使用され、リスナーを緊張感のある音世界に引き込む。疾走感のあるギターと冷たく響くベースラインが、Savagesの持つエネルギーを象徴している。
2. I Am Here
ジェニー・ベスの挑発的なボーカルが印象的なトラック。繰り返される「I Am Here」というフレーズが、自己の存在を強く主張しており、楽曲全体にパワフルなエネルギーを与えている。
3. City’s Full
都会の不穏さや過密さを描写した曲。鋭いギターリフとタイトなリズムセクションが、曲のテーマを強調し、息苦しい都市生活を音で表現している。
4. Strife
不安定さと緊張感が漂うトラックで、反復するギターパターンとジェニー・ベスの内省的な歌詞が印象的。楽曲の構造が次第に熱を帯び、終盤に向かって爆発する。
5. Waiting for a Sign
スローテンポの楽曲で、重厚なギターサウンドが特徴的。歌詞には、何かを待ち続ける焦燥感が反映されており、アルバム全体の中で特に感情的な一曲。
6. Dead Nature
インストゥルメンタルのトラックで、アルバム全体の緊張感をさらに高める役割を果たしている。静寂と不穏さが交錯する、映画のサウンドトラックのような楽曲。
7. She Will
強烈なエネルギーを放つ一曲で、女性の自己主張や力強さをテーマにしている。攻撃的なリズムセクションとジェニー・ベスの鋭いボーカルが完璧に調和している。
8. No Face
人間関係の表層的な部分を切り取った楽曲で、歌詞には「本当の顔」を隠す人々への批判が込められている。シンプルながら鋭いギターリフが際立つ。
9. Hit Me
衝撃的で攻撃的な楽曲。リズムセクションが特に力強く、短いながらも鮮烈な印象を残す。
10. Husbands
アルバムの中でも特に緊張感が強いトラックで、繰り返される「Husbands」というフレーズが耳に焼き付く。人間関係の緊張や不安を鋭く描写している。
11. Marshal Dear
アルバムを締めくくる楽曲で、ピアノとホーンセクションが新たな音楽的な方向性を提示している。静かな中にも深い感情が込められた、美しい終幕だ。
アルバム総評
『Silence Yourself』は、Savagesが持つ音楽的な可能性を余すところなく詰め込んだデビュー作であり、ポストパンクの精神を現代に蘇らせた傑作だ。特に「She Will」や「Husbands」といった楽曲は、バンドの持つ挑戦的なエネルギーと鋭いメッセージ性を象徴している。音楽そのものがプロテストであり、現代社会への鋭い視点が、アルバム全体を通じて鮮やかに描かれている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Unknown Pleasures by Joy Division
ポストパンクの名盤で、Savagesの冷たく緊張感のあるサウンドと通じる部分が多い。
Entertainment! by Gang of Four
鋭いギターと社会的なメッセージが込められたアルバムで、『Silence Yourself』のファンに響く一枚。
Is This It by The Strokes
シンプルな構成ながらもエネルギーに満ちた作品で、Savagesの攻撃的な音楽性と共鳴する部分がある。
Turn on the Bright Lights by Interpol
ポストパンクリバイバルを象徴するアルバムで、暗く緊張感のあるサウンドがSavagesのスタイルに近い。
The Scream by Siouxsie and the Banshees
女性ボーカルとポストパンクを融合した先駆的なアルバムで、Savagesに影響を与えた作品の一つ。
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