1. 歌詞の概要
「Seventh Sign」は1991年のアルバム『Prisoners in Paradise』に収録された楽曲である。タイトルが示すように「第七の兆候（Seventh Sign）」をキーワードに、世界の終焉や人類の行く末に対する不安と予兆を描き出したシリアスなロックナンバーである。歌詞には宗教的・黙示録的なイメージが散りばめられており、人間社会の暴力や欲望の果てに訪れる破滅を暗示している。
それと同時に、「終末が来ようとも生き抜こうとする人間の意志」や「希望を失わない姿勢」も表現されており、単なる黙示録ソングではなく、希望と恐怖のせめぎ合いを描いた作品として響いている。
2. 歌詞のバックグラウンド
1991年は冷戦の終結後で、世界は新しい秩序を模索していた。しかし同時に湾岸戦争や経済不安が現実化し、「新時代の希望」と「破局の予感」が同居する時代でもあった。「Seventh Sign」はそうした時代の空気を反映し、社会的不安と宗教的モチーフを結びつけた歌詞になっている。
ヨーロッパは『The Final Countdown』の成功後、華やかなシンセ・ロックのイメージが強いが、この時期にはよりシリアスで社会性のある作品に取り組んでいた。「Seventh Sign」はその流れを象徴する楽曲であり、アルバムの中でも最もダークで重厚な世界観を持つ曲のひとつである。
サウンドはヘヴィでパワフルなギターリフに支えられ、ドラマティックな展開を伴っている。ジョーイ・テンペストのボーカルは終末を告げる預言者のように響き、曲全体に緊張感を与えている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元：Genius
“I can hear the sound, it’s coming from the sky
I can see it all with my naked eye”
「空から響く音が聞こえる
肉眼でそのすべてを見ているんだ」
“Something’s wrong, it’s the seventh sign
Oh, heaven let your light shine”
「何かがおかしい、これが第七の兆候なのか
ああ、天よ、その光を輝かせてくれ」
“They say the end is near, we’re running out of time
We’ve got to change it now, before we lose our minds”
「終わりが近いと言われている、僕たちに残された時間は少ない
狂気に飲み込まれる前に、今こそ変えなければならない」
黙示録的な予兆と、それを食い止めようとする必死の願いが重なっている。
4. 歌詞の考察
「Seventh Sign」は、ヨハネの黙示録や終末論的なイメージを現代社会の問題に重ね合わせている。人類は豊かさや力を追い求めながらも破滅に向かっているのではないかという不安が、歌詞全体に濃厚に漂う。
しかし同時に、この曲は「絶望の預言」にとどまらない。歌詞の後半では「今こそ変わるべきだ」と訴え、破滅を避けるための人間の意志を強調している。つまり「Seventh Sign」は単なる終末の描写ではなく、「警鐘」としての役割を果たしているのだ。
音楽的には、ギターのリフとシリアスなメロディラインが「預言的な緊張感」を醸し出し、ジョーイ・テンペストの歌声が「叫び」と「祈り」の中間に位置している。結果として、この曲は80年代の享楽的なハードロックから一歩進み、人類の未来に対する真剣な問いを投げかける作品となっている。
（歌詞引用元：Genius Lyrics / © Original Writers）
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Sign of the Times by Europe
同じく社会不安や未来への不安をテーマにした楽曲。 - Prisoners in Paradise by Europe
物質的繁栄の裏の空虚さを描いたアルバムの表題曲。 - Children of the Grave by Black Sabbath
人類の未来と破滅をテーマにしたメタルの古典。 - Silent Lucidity by Queensrÿche
夢と現実の狭間から人間の存在を問うバラード。 - Holy Wars… The Punishment Due by Megadeth
社会と戦争に対する鋭い批判を盛り込んだスラッシュメタルの代表曲。
6. 黙示録的ロックとしての意義
「Seventh Sign」は、ヨーロッパの音楽が持つ叙情性に黙示録的なテーマを重ね合わせた異色の楽曲である。華やかでポップな側面が注目されがちな彼らだが、90年代に入ってからはより重厚で思想的な音楽を志向していた。その中で「Seventh Sign」は、時代の不安や社会的混乱を鋭く映し出した作品といえる。
この曲は、リスナーに「終末が近づいているかもしれないが、まだ変えることはできる」というメッセージを伝える。つまり、「Seventh Sign」は破滅の歌ではなく「希望への警鐘」なのだ。ヨーロッパのキャリアの中でも特異な位置を占めるこの曲は、90年代初頭の世界の空気を刻み込んだロックの証言として今なお重要な意味を持っている。
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