アルバムレビュー：Selling England by the Pound by Genesis

アルバムレビュー

2024.11.24

発売日: 1973年10月12日
ジャンル: プログレッシブロック

アルバム全体の印象
トラックごとの解説
アルバム総評
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アルバム全体の印象

『Selling England by the Pound』は、Genesisが1970年代プログレッシブロックの頂点を極めた作品であり、彼らのディスコグラフィーの中でも最も愛されるアルバムの一つだ。本作では、イギリス的な要素が色濃く反映されており、アルバムタイトルは当時のイギリスの商業主義への皮肉を表現している。

このアルバムは、Peter Gabrielの演劇的なボーカルと詩的な歌詞、Tony Banksの複雑で美しいキーボードアレンジ、Steve Hackettのギターの繊細さとダイナミズムが完璧に融合した、Genesisの音楽的到達点の一つである。長尺の楽曲と緻密なアレンジ、そして叙情的なストーリーテリングが特徴で、リリース当時も批評家とリスナーの双方から高い評価を受けた。

『Selling England by the Pound』は、プログレッシブロックの黄金時代を象徴する作品であり、Genesisの音楽的野心と技術が結晶化した一枚だ。

トラックごとの解説

1. Dancing with the Moonlit Knight

アルバムを開幕する壮大なトラックで、Peter Gabrielのアカペラで始まるドラマチックなイントロが印象的。曲はゆったりしたパートから力強いセクションへと移行し、商業主義やイギリスのアイデンティティをテーマにした詩的な歌詞が光る。Tony BanksのキーボードとSteve Hackettのギターが絡み合い、アルバムのトーンを決定付けている。

2. I Know What I Like (In Your Wardrobe)

シングルとしてもリリースされ、Genesisの初のヒットとなった楽曲。ファンキーなリズムとキャッチーなメロディが特徴で、イギリスの庶民的な生活をユーモラスに描いた歌詞が印象的だ。シンプルな構成ながらも、バンドの多彩な音楽性を感じさせる一曲。

3. Firth of Fifth

アルバムの中核を成す名曲で、Tony Banksの壮麗なピアノイントロから始まるシンフォニックな一曲。Steve Hackettのギターソロは、プログレッシブロック史上でも最も美しい瞬間の一つとされており、感情的な深みを楽曲に与えている。歌詞には、自然や水の流れといった象徴的なテーマが描かれている。

4. More Fool Me

Phil Collinsがリードボーカルを担当した穏やかなバラードで、アコースティックギターを中心にしたシンプルなアレンジが特徴。恋愛の失敗をテーマにした歌詞が優しく語りかける。

5. The Battle of Epping Forest

コミカルで演劇的な長尺トラック。イギリスの都市伝説を元に、ギャング同士の争いを描いた内容で、Peter Gabrielの多彩なボーカルパフォーマンスが楽しめる。変拍子を多用した複雑なアレンジが、Genesisらしい独特の魅力を放つ。

6. After the Ordeal

インストゥルメンタル曲で、クラシカルなアコースティックギターと流麗なキーボードが織りなす美しい一曲。アルバム全体の流れを整える役割を果たしている。

7. The Cinema Show

二部構成の長尺トラックで、前半は繊細なギターと詩的な歌詞が展開され、後半はTony Banksによる壮大なキーボードソロが主役となる。男女の関係やギリシャ神話をテーマにした歌詞が印象的。バンドの卓越したアンサンブルが堪能できる一曲。

8. Aisle of Plenty

アルバムのエンディングを飾る短いトラックで、「Dancing with the Moonlit Knight」のメロディを引用し、物語の円環を完成させる。商業主義への皮肉が再び強調される。

アルバム総評

『Selling England by the Pound』は、Genesisがプログレッシブロックの美学を極限まで追求した傑作であり、彼らの音楽的な頂点の一つとされている。イギリス文化を背景にした詩的な歌詞と、精緻な楽曲構成、そしてバンドメンバー全員の卓越した演奏が融合し、聴き手に深い感動を与える。

特に「Firth of Fifth」や「The Cinema Show」は、プログレッシブロックの名曲として今なお多くのファンに愛されており、本作がGenesisの代表作として語り継がれる理由を裏付けている。