アルバムレビュー：Salad Days by Mac DeMarco

アルバムレビュー

2024.10.17

発売日: 2014年4月1日
ジャンル: インディーロック、ローファイ、サイケデリックポップ

Mac DeMarcoの3rdアルバム『Salad Days』は、彼の音楽スタイルが成熟し、より深みを増した作品である。ゆったりとしたローファイサウンド、独特の気だるいボーカル、そして彼の代表的な「ジャングリー」ギターサウンドが印象的で、彼自身の内省や日常の中に潜む哲学的な問いがテーマとなっている。『2』で確立したシンプルで親しみやすいサウンドをさらに発展させ、リスナーにより感情的な深みを伝える。彼の音楽には、若さの儚さや時間の流れへの洞察が感じられ、ノスタルジックでありながら現実的な視点が巧みに織り交ぜられている。

各曲ごとの解説:

Salad Days
アルバムのタイトル曲であり、シンプルなギターリフが中心の軽やかな楽曲。歌詞は、名声やプレッシャーに対する厭世的な視点を描いているが、サウンドは軽やかで、Mac DeMarcoらしいリラックスした雰囲気が漂っている。
Blue Boy
明るくポップなメロディと、控えめながらもキャッチーなギターリフが特徴の一曲。内向的な人間の葛藤をテーマに、短いながらも感情的に充実した曲で、歌詞の深さと軽やかなサウンドが見事に融合している。
Brother
自己反省をテーマにしたメランコリックな楽曲。ゆったりとしたテンポと浮遊感のあるギターが印象的で、Macの内省的な歌詞が際立つ。彼の特徴である、日常の中での迷いや孤独感が詩的に描かれている。
Let Her Go
別れや変化をテーマにした軽快な楽曲。シンプルなギターラインとMacの柔らかいボーカルが相まって、明るくも哀愁を感じさせる。恋愛や人間関係の中での諦めや前進を描いている。
Goodbye Weekend
自由を求める気持ちを歌ったアップビートな楽曲。Macは、自分の生き方に対する他者の批判を無視し、自分のペースで生きるというメッセージを軽快なリズムに乗せて表現している。
Let My Baby Stay
優しく甘いバラード。シンプルなアコースティックギターと控えめなボーカルが、愛する人を失いたくないという切実な感情を描き出している。Mac DeMarcoの感情的な一面が特に感じられる美しい楽曲。
Passing Out Pieces
サイケデリックな要素が強い楽曲。エレクトリックピアノとシンセサイザーが重なり合い、独特の空間を作り出している。Macの個人的な体験を反映した歌詞は、彼の変化とそれによる喪失感がテーマとなっている。
Treat Her Better
リズムが軽快でキャッチーなギターメロディが印象的な楽曲。人間関係の中で、他者をもっと大切にするべきだというメッセージが込められている。Macらしい軽いタッチの中に深い感情が潜んでいる。
Chamber of Reflection
アルバムの中で最も実験的な曲の一つ。エレクトロニックなビートとシンセサウンドが主導し、彼のサウンドの新たな側面を探求している。内面的な反省や自己発見をテーマにしており、タイトルの「内省の部屋」が示す通り、深い瞑想的な空気が漂う。
Go Easy
ゆったりとしたテンポの楽曲で、リラックスしたムードが全体に広がる。過度な期待やストレスから解放され、気楽に生きることの大切さを歌っており、Macのシンプルながらも洞察に満ちた歌詞が光る。
Jonny’s Odyssey
アルバムを締めくくるインストゥルメンタル曲。サイケデリックなギターと軽快なリズムが融合し、アルバム全体のテーマである「気楽さ」と「内省」を音で表現している。

アルバム総評:

『Salad Days』は、Mac DeMarcoが成熟し、音楽的にも内面的にも深みを増したアルバムだ。彼のローファイサウンドはそのままに、若さの儚さや変化する日常の中での葛藤がテーマとして描かれており、軽快なメロディと深い感情が共存している。リスナーは、彼の音楽の中に感じられる飄々とした態度の中にも、鋭い洞察と感情的な重みを感じ取ることができるだろう。『Salad Days』は、気楽でありながらも豊かな感情を提供するアルバムであり、彼のキャリアにおける重要な作品だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

2 by Mac DeMarco
Mac DeMarcoの代表作であり、シンプルで親しみやすいローファイサウンドが特徴。『Salad Days』の前作であり、彼の音楽スタイルが確立された作品。
B’lieve I’m Goin Down… by Kurt Vile
ゆったりとしたギターとリラックスしたムードが特徴的なアルバム。リズムの軽さと深い歌詞が、『Salad Days』のスタイルと共通している。
The Weather by Pond
サイケデリックなサウンドとインディーロックが融合したアルバム。『Salad Days』のドリーミーで浮遊感のあるサウンドに共鳴する部分が多い。
Twin Fantasy by Car Seat Headrest
ローファイなプロダクションと、個人的な内面を描いた歌詞が印象的。若さやアイデンティティのテーマが、『Salad Days』と共通する。
This Old Dog by Mac DeMarco
『Salad Days』の次作で、より内省的で落ち着いたトーンが特徴。アコースティックギターを中心としたシンプルなサウンドが、彼の成熟した音楽性を感じさせる一枚。