発売日: 1972年6月16日
ジャンル: アートロック、グラムロック、プロトパンク
『Roxy Music』は、イギリスのバンドRoxy Musicのデビューアルバムであり、1970年代のアートロックやグラムロックの幕開けを告げる重要な作品だ。このアルバムは、バンドのリーダーであるブライアン・フェリー(ボーカル、作詞)と、後にソロキャリアで成功を収めるブライアン・イーノ(シンセサイザー、エレクトロニクス)が創り上げた革新的なサウンドで、ロックの枠を大きく超えた実験的な要素が詰め込まれている。フェリーの洗練されたヴィジュアルと独特のボーカルスタイル、イーノの電子音とノイズのコントロールによって、ロックの伝統的なスタイルを打ち破る大胆でアーティスティックな音楽性を持つ。
『Roxy Music』は、グラムロック特有の派手なスタイルと、アバンギャルドな実験性を融合させ、未来的なサウンドスケープを創り出している。ジャズ、ロック、クラシック音楽など、幅広いジャンルを取り入れたこのアルバムは、後のニューウェーブやポストパンクのシーンにも大きな影響を与えた。
各曲ごとの解説:
- Re-Make/Re-Model
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュなトラックで、バンドの実験的な精神が存分に発揮されている。各メンバーのソロパートが挿入される中、フェリーのユニークなボーカルと、イーノのシンセサイザーがサウンドに個性を与えている。ロックの伝統的な枠を超えた大胆なアプローチが印象的。 - Ladytron
サイケデリックで夢幻的な雰囲気を持つ曲。ブライアン・イーノのシンセサイザーとアンディ・マッケイのオーボエが美しく絡み合い、バンドのサウンドにミステリアスな深みを加えている。フェリーのボーカルはメランコリックでロマンチック。 - If There Is Something
長尺の曲で、複雑な構成とダイナミックな展開が特徴。最初はカントリー調のリズムで始まり、次第にロック的なグルーヴへと変化し、クライマックスに向けて感情が高まる。バンドの多様な音楽的引き出しが感じられる一曲。 - Virginia Plain
アルバムには収録されていないが、シングルとして同年にリリースされた代表曲。キャッチーなメロディとシンセサイザーが際立つ、グラムロックのアイコン的存在となった曲で、バンドのスタイルを象徴するナンバー。 - 2 H.B.
映画スター、ハンフリー・ボガートに捧げられたトラックで、フェリーの個人的な憧れが反映された曲。控えめなリズムとシンセサイザーのエフェクトが、曲に映画のようなムードを与えている。 - The Bob (Medley)
断片的な構成が特徴のメドレースタイルの曲で、戦争をテーマにした歌詞が印象的。バラード風のパートと激しいロックのパートが交互に現れる複雑な構造を持ち、バンドの実験的なアプローチが光る。 - Chance Meeting
静かでミステリアスなトラックで、フェリーのボーカルが前面に出た曲。イーノの電子的なノイズとアンディ・マッケイのオーボエが、曲全体に不穏な雰囲気を漂わせている。感情的な歌詞とサウンドが絡み合う。 - Would You Believe?
50年代風のロカビリーテイストを取り入れた楽曲。ノスタルジックな雰囲気と、バンド特有の実験的なアレンジが融合しており、フェリーの幅広い音楽的背景が感じられる一曲だ。 - Sea Breezes
長尺でドラマチックな曲。静かでメランコリックなイントロから、途中で一転して激しいリズムとノイズが加わる。バンドのダイナミックな演奏とフェリーの感情豊かなボーカルが見事に融合している。 - Bitters End
アルバムを締めくくるトラックで、50年代のドゥーワップスタイルを彷彿とさせる曲。シンプルながらも温かみのあるアレンジが、アルバム全体を優しくまとめ上げている。
アルバム総評:
『Roxy Music』は、グラムロックとアートロックの融合を実現した、革新的なデビューアルバムだ。ブライアン・フェリーの独特なヴィジュアルと洗練されたスタイル、ブライアン・イーノの実験的なサウンドメイキングが一体となり、ロックの枠を超えた新しい音楽性を提示している。ポップな要素とアバンギャルドな要素が絶妙に融合した本作は、後のニューウェーブやポストパンク、電子音楽シーンにも大きな影響を与えた。シンプルなロックから実験的なサウンドスケープまで、多彩な楽曲が詰まっており、Roxy Musicの音楽的ヴィジョンが鮮明に表現されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- For Your Pleasure by Roxy Music
バンドの2枚目のアルバムで、さらに実験的な要素が強化された作品。イーノが最後に参加したアルバムで、Roxy Musicのアートロック的要素が全開となっている。 - The Man Who Sold the World by David Bowie
同時期に活動していたDavid Bowieのグラムロックアルバムで、Roxy Musicのエキセントリックな要素と共鳴する部分が多い。派手なスタイルと実験的なサウンドが共通している。 - Here Come the Warm Jets by Brian Eno
Roxy Musicを脱退した後のブライアン・イーノによるソロデビューアルバム。アバンギャルドな音楽性とポップな感覚が融合した作品で、Roxy Musicのファンには必聴の一枚。 - Low by David Bowie
ブライアン・イーノがプロデュースを手掛けたアルバムで、アンビエントとロックを融合させたサウンドが特徴。Roxy Musicの実験的な要素に惹かれたリスナーにおすすめ。 - A Night at the Opera by Queen
プログレッシブロックとグラムロックの要素が融合した名盤。Roxy Musicのドラマチックなサウンドや、独特な音楽的アプローチに共感する人におすすめ。
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