アルバムレビュー：Relationship of Command by At the Drive-In

発売日: 2000年9月12日
ジャンル: ポストハードコア、オルタナティブロック

Relationship of Commandは、At the Drive-Inの3枚目にして最後のスタジオアルバムであり、ポストハードコアのジャンルにおける名盤として広く評価されている作品だ。バンドは、このアルバムで圧倒的なエネルギーと緻密な楽曲構成を披露し、激しい攻撃性と繊細な感情表現が見事に融合している。フガジやRefusedからの影響を受けつつ、独自のスタイルを確立したこのアルバムは、複雑なリズムとエモーショナルな歌詞、斬新なサウンドが詰め込まれている。彼らのキャリアの絶頂を象徴するこの作品は、ジャンルを超えて多くのリスナーに強い影響を与えた。

各曲ごとの解説:

Arcarsenal
　アルバムの冒頭を飾るこの曲は、炸裂するようなギターと迫力のあるリズムでリスナーを一気に引き込む。セドリック・ビクスラーのシャウトと、ジム・ウォードのギターリフが絡み合い、激しさとカオスが共存する。力強いイントロがアルバム全体の攻撃的なトーンを設定する一曲。
Pattern Against User
　テンポの速いギターリフと重厚なベースラインが特徴的なトラック。ポストハードコアのエネルギーが前面に押し出され、リズムセクションが曲全体を引き締めている。歌詞は社会的なメッセージを込めており、シンプルだが強烈なインパクトを持つ楽曲。
One Armed Scissor
　バンドの代表曲で、アルバムの中でも最も有名な楽曲の一つ。緊張感のあるギターリフと、キャッチーでありながらも感情的に揺さぶるサビが特徴。歌詞はツアー生活の孤独や疎外感を描いており、セドリックのエモーショナルなボーカルが強い印象を残す。この曲はポストハードコアの枠を超え、広くロックファンに受け入れられた。
Sleepwalk Capsules
　激しいギターワークと、変則的なリズムが特徴のトラック。曲全体にわたって高いテンションが維持され、セドリックのボーカルはますます激しさを増している。無秩序の中に精密さが感じられるこの曲は、アルバム全体のダイナミズムを強調している。
Invalid Litter Dept.
　静かなイントロから徐々に盛り上がる構成が印象的なトラック。メキシコのフアレスで起きた女性の失踪事件をテーマにした歌詞が社会的なメッセージを含んでおり、音楽的な実験性と深い感情表現が融合している。感情的なピークに達する瞬間が心に残る一曲。
Mannequin Republic
　速いテンポと攻撃的なギターワークが中心となるトラック。リズムの変化や激しいシャウトが絡み合い、曲全体に緊張感が漂う。短いながらも強烈なインパクトを与える楽曲で、バンドの持つパワーが存分に発揮されている。
Enfilade
　電話の会話から始まる異色のイントロが印象的なトラック。曲は徐々にテンポを上げ、激しさを増していく。ギターとドラムの緊張感ある演奏が、楽曲に重厚感とスリルを与えている。ミステリアスでありながらも、エネルギッシュな展開が魅力。
Rolodex Propaganda
　元The Stoogesのイギー・ポップがゲストボーカルとして参加しているこの曲は、パンキッシュなエネルギーが詰まっている。キャッチーでシンプルな構成ながらも、圧倒的な勢いで聴き手を飲み込む。イギーの独特なボーカルスタイルが、曲に独特のダイナミズムを加えている。
Quarantined
　アルバムの中でも特に感情的な深みが感じられる一曲。ゆっくりとしたテンポと重厚なベースラインが曲を引っ張り、ボーカルは静かながらも力強い表現をしている。内省的で暗いムードが漂い、アルバム全体のバランスを取る役割を果たしている。
Cosmonaut
　エネルギッシュなギターリフと、ドラムのスピーディーなリズムが特徴のトラック。セドリックのシャウトが激しさを増し、曲のスピード感と攻撃性が際立つ。ダイナミックな展開が続き、バンドの持つ爆発的なエネルギーを感じられる。
Non-Zero Possibility
　アルバムを締めくくるこの曲は、比較的落ち着いたテンポで、静と動のバランスが取れた楽曲。内省的な雰囲気の中で感情的なクライマックスが訪れ、アルバム全体の余韻を残すようなエンディングとなっている。バンドの成熟したサウンドが感じられる一曲。

アルバム総評:

Relationship of Commandは、At the Drive-Inの音楽的キャリアの頂点を象徴する作品であり、ポストハードコアというジャンルを定義する名盤として広く評価されている。このアルバムでは、激しい攻撃性と複雑な楽曲構成、そしてエモーショナルな歌詞が見事に融合しており、バンドのパフォーマンスは圧倒的な迫力を持っている。特に「One Armed Scissor」や「Invalid Litter Dept.」といった楽曲は、感情の振れ幅と緊張感が強く、リスナーを深く引き込む力を持っている。このアルバムは、At the Drive-Inの音楽が一つの完成形に達したことを示すものであり、ポストハードコアファンだけでなく、幅広い音楽リスナーにとっても必聴の作品だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

The Shape of Punk to Come by Refused
ポストハードコアと実験的な要素が融合した名作。エネルギッシュでありながらも洗練されたサウンドが、Relationship of Commandに共通する。
Worship and Tribute by Glassjaw
エモとポストハードコアの要素を融合させたアルバムで、感情的な爆発と繊細な表現が光る。Relationship of Commandのファンにとっても聴き応えがある。
The Argument by Fugazi
社会的メッセージと緻密なサウンドが特徴のポストハードコアの名盤。At the Drive-Inと同じく、感情的な深みと複雑な楽曲構成が魅力。
The Hot Rock by Sleater-Kinney
エネルギッシュなギターワークと鋭いリリックが特徴のアルバム。ポストハードコア的なアプローチを持ちながらも、独自のサウンドが楽しめる。
De-Loused in the Comatorium by The Mars Volta
At the Drive-In解散後、セドリックとオマーが結成したバンドのデビューアルバム。プログレッシブで複雑なサ