アルバムレビュー：Reggatta de Blanc by The Police

発売日: 1979年10月5日
ジャンル: ポストパンク、ニューウェーブ、レゲエロック

The Policeの2作目のスタジオアルバムである『Reggatta de Blanc』は、デビュー作『Outlandos d’Amour』からさらに洗練されたサウンドを引き継ぎながらも、新しい地平を切り開く重要な作品だ。アルバムタイトルの「Reggatta de Blanc」は、バンドのレゲエ的アプローチ（「regatta」）と白人の視点（「de Blanc」）を掛け合わせた造語であり、彼らの音楽スタイルを象徴している。このアルバムでは、ポリリズムや空間を重視したアレンジが際立ち、彼らの個性をさらに確立している。

本作は、スティング（ベース、ボーカル）、アンディ・サマーズ（ギター）、スチュワート・コープランド（ドラム）のトリオ編成の中で、各メンバーの才能が高度に絡み合った作品であり、スタジオでの即興的なアプローチを中心に制作された。とりわけ、タイトル曲「Reggatta de Blanc」や「The Bed’s Too Big Without You」では、ジャムセッションを基にした創造的な曲作りが発揮されている。

全体として、レゲエ、ロック、ポストパンクの融合により、シンプルでありながらエモーショナルな深みを持つ楽曲が多く収録されている。聴くたびに新たな発見がある多面的なアルバムだ。

トラック解説

Message in a Bottle
アルバムのオープニングを飾るこの楽曲は、The Policeの代表曲の一つだ。スティングの象徴的なリフレイン「I’ll send an S.O.S. to the world」が耳に残り、孤独や自己救済のテーマがリスナーの心に響く。ギターリフはシンプルながら中毒性があり、アンディ・サマーズの独特の音色が曲全体を躍動感で満たしている。
Reggatta de Blanc
このインストゥルメンタル・トラックは、バンドが即興演奏の中で築き上げた傑作だ。リズムパートが主役となり、コープランドのドラムのダイナミックなパフォーマンスが特に際立つ。エキゾチックな雰囲気とエネルギッシュな展開が聴き手を引き込む。
It’s Alright for You
疾走感あふれるこの曲は、ポストパンクの鋭さとレゲエ的なリズムが絶妙に融合している。スティングのボーカルが攻撃的かつ軽快で、リズムセクションの緻密な絡みが曲を引き締めている。
Bring on the Night
暗く詩的な雰囲気を持つこの曲は、スティングの作詞の深さが光る一曲だ。彼の独特なボーカルスタイルと、アンディ・サマーズの繊細なギタープレイが、夜の静けさと孤独感を表現している。
Deathwish
緊張感のあるイントロが印象的で、複雑なリズム構成が聴きどころだ。タイトルが示すように、不穏な空気感が漂う一曲であり、エッジの効いたギターとダイナミックなドラムが支配する。
Walking on the Moon
シンプルなギターフレーズとレゲエのリズムが特徴的なこの曲は、浮遊感を与えるスティングのボーカルが魅力だ。歌詞は夢想的でありながらも現実味があり、「月を歩く」という比喩が自由と高揚感を見事に描いている。
On Any Other Day
コープランドがボーカルを担当したこのトラックは、軽快なメロディと皮肉の効いた歌詞が印象的だ。ユーモラスな一面が感じられる曲で、アルバムの中で一息つけるポイントとなっている。
The Bed’s Too Big Without You
レゲエの要素が強く感じられるこの曲は、孤独感と失恋の痛みを巧みに表現している。スティングの感情的なボーカルとサマーズの幻想的なギタープレイが、この楽曲をアルバムのハイライトの一つにしている。
Contact
この曲では、コープランドが作曲の手腕を発揮している。キレのあるドラムとストレートなロックのエネルギーが印象的で、終盤の展開が特に聴き応えがある。
Does Everyone Stare
イントロのピアノが異色で、バンドの実験精神が垣間見える。歌詞は日常生活のストレスや孤独感をテーマにしており、意外性のある楽曲構成がアルバムに多様性を加えている。
No Time This Time
アルバムの締めくくりにふさわしい疾走感あるナンバー。直球のロックサウンドとスピード感が、アルバム全体をエネルギッシュにまとめ上げている。

アルバム総評

『Reggatta de Blanc』は、The Policeがポストパンクやレゲエロックというジャンルの枠を超えて、新たな音楽的地平を切り開いた作品だ。シンプルながら深みのある楽曲構成と、メンバー3人の卓越した演奏技術が凝縮されており、アルバム全体を通じて緊張感と高揚感が織りなされている。特に「Message in a Bottle」や「Walking on the Moon」といった楽曲は、時代を超えた名曲として輝きを放っている。リスナーにとって、何度聴いても新たな発見がある魅力的なアルバムである。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚

『London Calling』 by The Clash
パンクロックとレゲエ、ロカビリーなど多様なジャンルが融合した一枚。The Policeの音楽に共鳴するスリリングなサウンドが特徴。

『Synchronicity』 by The Police
The Policeの最高傑作と名高いアルバム。『Reggatta de Blanc』でのスタイルをさらに進化させた集大成的な作品。

『Talking Heads: 77』 by Talking Heads
ニューウェーブとポストパンクの要素を取り入れた独創的なアルバムで、The Policeと同時代の空気感を共有している。

『Catch a Fire』 by Bob Marley and the Wailers
レゲエの代表的作品であり、The Policeのレゲエへのアプローチに影響を与えたであろうアルバム。

『So』 by Peter Gabriel
ポストパンク的な感覚とポップなアプローチが融合した一枚で、エモーショナルな歌詞と印象的なアレンジが共通点。