発売日: 2000年6月6日
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、ストーナーロック、デザートロック
Queens of the Stone Age（QOTSA）が2000年にリリースした2作目のアルバム『Rated R』は、ストーナーロックというジャンルを新たな次元に押し上げた作品として評価されている。このアルバムでは、前作で培ったヘヴィでサイケデリックな要素を核としながら、幅広い音楽的冒険に挑戦している。ジョシュ・ホーミ率いるバンドは、ヘヴィでありながらメロディアスな楽曲群を展開し、その多様性によってより多くのリスナーにアピールすることに成功した。
『Rated R』の制作には、ドラムで参加したデイヴ・グロール（後に正式メンバー）や、ホーミと旧知の間柄であるマーク・ラネガンなど、多彩なゲストミュージシャンが関与している。この作品の特徴は、ヘヴィなギターリフと独特のグルーヴ、そして風刺的な歌詞だ。「Feel Good Hit of the Summer」のドラッグカルチャーへの皮肉や、「The Lost Art of Keeping a Secret」の謎めいたムードは、単なるロックアルバムの枠を超え、アート作品としての完成度を持っている。
QOTSAはこのアルバムを通じて、90年代後半から2000年代初頭のオルタナティヴロックシーンにおいて、唯一無二の地位を確立した。本作は、グラムロックやパンク、ポストパンクの要素を取り入れたストーナーロックの進化形であり、ジャンルを超えたリスナーにも大きな影響を与えている。
トラックごとの解説
1. Feel Good Hit of the Summer
アルバムの幕開けを飾る、キャッチーで挑発的な楽曲。反復的な「Nicotine, Valium, Vicodin, Marijuana, Ecstasy and Alcohol, C-c-c-cocaine」という歌詞は、ドラッグカルチャーを皮肉る形で語られる。攻撃的なギターリフと疾走感が、初聴きでも耳に残るインパクトを持つ。
2. The Lost Art of Keeping a Secret
このアルバムを代表するトラックの一つ。メロディアスでありながら、どこか不穏な雰囲気を醸し出す。この曲はジョシュ・ホーミの歌声と、不規則なリズムパターンが特徴的だ。秘密を守ることの難しさをテーマにした歌詞は、リスナーに考えさせる余地を残している。
3. Leg of Lamb
スパイ映画のサウンドトラックを彷彿とさせる、不穏でミステリアスな楽曲。ファズギターの響きが印象的で、ホーミの軽快なボーカルが楽曲の独特なテンポを支えている。
4. Auto Pilot
ベースのリズムが心地よい、リラックスした雰囲気のトラック。歌詞は自己反省や内省的なテーマを扱っており、アルバムの中で一息つける瞬間を提供する。特に中盤のギターパートは、穏やかでありながら深い余韻を残す。
5. Better Living Through Chemistry
7分近くに及ぶ大作で、ストーナーロックらしいサイケデリックなサウンドが全面に押し出されている。ギターとシンセサイザーが複雑に絡み合い、浮遊感のある楽曲構成が特徴的。薬物使用に対する皮肉が歌詞の中で描かれており、タイトルも毒の効いたメッセージを含んでいる。
6. Monsters in the Parasol
ユーモラスで風刺的なトーンが特徴の曲。軽快なリズムと風変わりな歌詞が独特の魅力を生んでいる。ホーミのボーカルスタイルとギターリフが、楽曲全体のテンポ感を支えている。
7. Quick and to the Pointless
荒々しくパンキッシュなトラックで、エネルギッシュなドラムと攻撃的なボーカルが印象的。バンドの破天荒な一面が強く表現されており、ライブでの盛り上がりを容易に想像できる一曲。
8. In the Fade
マーク・ラネガンがボーカルを担当した哀愁漂う楽曲。渋い声が際立つ一方で、曲全体のムードは穏やかでメランコリック。バンドの中でのラネガンの存在感が如実に現れているトラックだ。
9. Tension Head
タイトル通りの緊張感と攻撃性が凝縮された曲。ヘヴィなギターリフとドラムの勢いが圧倒的で、パンクやハードロックの影響が色濃く反映されている。
10. Lightning Song
美しいアコースティックギターが印象的なインストゥルメンタル。アルバム全体の激しいトーンの中で、ほっと一息つける場所を提供している。
11. I Think I Lost My Headache
アルバムのフィナーレを飾る約8分の楽曲。重厚なギターサウンドと不穏なメロディが展開され、最後は不協和音が続く実験的なエンディングを迎える。この曲は、感情的な葛藤と不安をテーマにしており、アルバム全体の締めくくりにふさわしい。
アルバム総評
『Rated R』は、Queens of the Stone Ageがその音楽性を広げるための重要なステップとなったアルバムである。多様なジャンルを取り入れつつも、バンドのアイデンティティをしっかりと保っている点が素晴らしい。リスナーを挑発しつつ楽しませるこの作品は、ストーナーロックを愛する人々にとって必聴の一枚であり、オルタナティヴ・ロックの重要作として語り継がれている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Songs for the Deaf by Queens of the Stone Age
QOTSAの最高傑作と言われるアルバム。さらにヘヴィで攻撃的なサウンドと、デイヴ・グロールのドラミングが圧巻。
Blues for the Red Sun by Kyuss
ジョシュ・ホーミのルーツであるストーナーロックバンドKyussの作品。デザートロックの原点を感じられる。
Lullabies to Paralyze by Queens of the Stone Age
ミステリアスでダークなトーンが特徴で、『Rated R』の続編的な要素も感じられる。
Superunknown by Soundgarden
ヘヴィかつサイケデリックなサウンドが共通し、オルタナティヴロックの金字塔的なアルバム。
Elephant by The White Stripes
シンプルなロックの美学と独特のリズムが『Rated R』のエッジの効いた部分と重なる。
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