アルバムレビュー：Powerstation by BBMak

発売日: 2019年10月11日
ジャンル: アコースティック・ポップ、ポップロック、アダルト・コンテンポラリー、ソフトロック

概要

『Powerstation』は、BBMakが17年の歳月を経て再集結し、2019年にリリースした3枚目のスタジオ・アルバムである。

2002年の『Into Your Head』以来となる本作は、再結成ブームの中で生まれた単なる懐古作ではなく、3人の音楽家としての成熟と、年月を経た友情が結実した誠実なカムバック・アルバムである。

グループのトレードマークである3声のハーモニーとアコースティック主体のサウンドは健在でありながら、全体的に落ち着いたトーンと“家族・記憶・時間”といったテーマが漂う構成が印象的。

かつて青春を歌ったBBMakは、いまや人生の季節を俯瞰するようなまなざしで音楽に向き合っている。

本作は、かつて彼らの楽曲に惹かれたリスナーが“大人になった今”だからこそ響く、タイムレスなポップ・アルバムとして高く評価されるべき作品である。

1. Powerstation
アルバムの表題曲にして、再結成の意義を象徴するような高揚感あるオープナー。人生の再起動をテーマに、洗練されたポップロックが展開される。

2. So Far Away
遠く離れても変わらぬ絆を歌うバラード。シンプルなアコースティックギターと重なるコーラスが感情を引き立てる。

3. Uncivil War
別れとその後の“冷戦状態”を描いた内省的なミディアムナンバー。大人の恋愛観がリアルに滲む歌詞が印象的。

4. No One Like You
かつてのBBMakを想起させる爽やかなラブソング。ポップなメロディとノスタルジックなアレンジが絶妙に融合している。

5. You Don’t See Me
見過ごされる心の声を歌った楽曲。控えめなビートと淡々としたボーカルが、内なる寂しさを美しく描く。

6. We Can Be Lovers
ストリングスが彩るエレガントなバラード。“もしもう一度出会えたら”という仮定法的な視点がロマンティックで切ない。

7. Wolves
メランコリックなギターに乗せて、欲望と理性の葛藤を描いた深いナンバー。グループとしての表現力の広がりが感じられる。

8. Out of Time
時計の針のような繰り返しのビートと“時間切れ”というテーマがリンクした曲。タイトル通り、限りある時間への切実な思いが伝わる。

9. Falling Up
“上に落ちる”という逆説的タイトルが示すように、矛盾を抱えたまま進む人生を肯定する前向きな楽曲。

10. Ghost of Me
過去の自分に囚われながらも今を生きようとする意志を歌った、アルバムを象徴する内省的バラード。静かな幕引きが深い余韻を残す。

『Powerstation』は、BBMakの原点であるアコースティックな美しさと、長い歳月を経たからこそ描ける成熟した感情表現とが、高い次元で融合した作品である。

デビュー当時の甘く切ないティーンロマンスから、今作では人生そのものの美しさや儚さを歌う領域へと到達しており、音楽的にもリリック的にも深化が著しい。

サウンド面では過度な装飾を避け、必要最小限のアレンジで3人のボーカルとハーモニーを際立たせており、聴き手に“声の温度”がダイレクトに届くような設計がなされている。

本作は、かつて彼らの音楽に夢中になった世代だけでなく、今の静かなポップスを求めるすべてのリスナーにとっての“人生のBGM”となり得る、上質な作品である。

『Powerstation』は、BBMakが活動停止・再結成という長い時を経て、音楽家として、仲間として、そして表現者として再び“現在”に立った証である。

それは単なる懐かしさではなく、“今を語る力”を持った音楽としての再起動であり、リスナーの人生にもそっと寄り添う灯火のような存在となっている。

『Back Here』で始まった旅は、ここで静かに、しかし力強く続いているのだ。