90年代のオルタナティブロックを語る上で欠かせない存在といえば、アメリカ出身のバンド、Pavement(ペイヴメント)です。個性的で、少しひねくれたリリックとキャッチーなメロディーで、インディーロックの王者とも言える彼らの音楽は、今でも新鮮さを失わず、多くのファンの心を掴み続けています。今回はPavementの音楽性、代表曲、アルバムごとの進化、そして音楽シーンに与えた影響について深掘りしていきます。
アーティストの背景と歴史
Pavementは1989年にカリフォルニア州ストックトンで結成されました。結成当初は、スティーヴン・マルクマス(ボーカル・ギター)とスコット・カンバーグ(ギター)という2人の友人がレコーディングを始めたのがきっかけで、その後メンバーが増え、独自のサウンドを確立していきました。彼らの音楽は「DIYスピリット」の象徴とも言え、インディーシーンで大きな支持を集めました。
彼らがデビューアルバム『Slanted and Enchanted』をリリースした1992年は、NirvanaやPearl Jamといったグランジの全盛期でしたが、Pavementは異なるアプローチでリスナーの注目を集めました。ノイジーでありながら、ポップなメロディと独自のリリックは、ファンにとって非常に新鮮なものでした。
音楽スタイルと影響
Pavementの音楽スタイルは、ガレージロック、ローファイ、サイケデリック・ロックなど様々なジャンルを取り入れたもので、どこか雑然としているけれどもクセになるサウンドが特徴です。特にスティーヴン・マルクマスの脱力感あふれるボーカルスタイルと、鋭いウィットに富んだリリックが、他のオルタナティブバンドとは一線を画しています。
Pavementの音楽を聴いていると、無造作でありながらも繊細なバランスを感じます。彼らが影響を受けたアーティストには、The Fall、Velvet Underground、Canなどが挙げられ、彼らの影響がPavementの独特な曲作りに表れています。
代表曲の解説
Cut Your Hair
Pavementの代表曲といえば、1994年にリリースされたシングル「Cut Your Hair」です。この曲は、業界への風刺的なリリックが特徴で、ポップで耳に残るメロディーラインが一度聴けば忘れられません。音楽業界に対する批判を込めつつも、リスナーを楽しませるユーモアを感じることができ、Pavementのユニークなスタンスを象徴しています。
Here
デビューアルバム『Slanted and Enchanted』に収録されている「Here」も、彼らの代表曲の一つです。この曲は、ミニマルで陰鬱なサウンドに、静かに語りかけるようなマルクマスのボーカルが印象的で、リスナーにどこか懐かしさと寂しさを感じさせます。
アルバムごとの進化
Slanted and Enchanted
Pavementのデビューアルバム『Slanted and Enchanted』は、ローファイサウンドの名盤として名高い作品です。荒削りで無骨なサウンドが特徴的で、インディーシーンで大きな話題となりました。このアルバムは、商業的な成功を追求しない彼らのスタイルを確立し、リスナーに新しいロックの形を提案しました。
Crooked Rain, Crooked Rain
続くアルバム『Crooked Rain, Crooked Rain』(1994年)は、Pavementにとって一種の転機でした。音楽性がより洗練され、「Cut Your Hair」などのヒットシングルを生み出しました。前作に比べてメロディアスでありながらも、皮肉的で風刺的なスタイルはそのままで、Pavementのスタイルを進化させたアルバムです。
Wowee Zowee
1995年にリリースされた『Wowee Zowee』は、商業的成功を一旦手にした彼らがあえて挑戦した、より実験的なアルバムです。ジャンルや構成を一切無視するかのようなこの作品は、一部のファンには「難解」とも評価されましたが、彼らのクリエイティビティが詰まった作品です。
影響を受けたアーティストと音楽
PavementはThe FallやCan、Sonic Youthなどの影響を強く受けています。特にThe Fallのようなノイジーで反復的なサウンドや、Velvet Undergroundの持つアンダーグラウンド的な要素がPavementのスタイルに反映されています。
影響を与えたアーティストと音楽
Pavementは、後続のインディーロックバンドやオルタナティブシーンに多大な影響を与えました。例えば、WeezerやBlurといったバンドが彼らのスタイルを取り入れ、またThe StrokesやModest MouseといったバンドにもPavementの影響が見られます。彼らの「自分たちのスタイルを貫く」という姿勢は、多くのアーティストにとって目標となりました。
まとめ
Pavementは、シンプルでありながらも奥深く、リスナーに多くの考えや感情を引き起こすバンドです。そのDIY精神と独特な音楽性は、インディーロックシーンにおいて今もなおリスペクトされ続けています。彼らの音楽に触れると、ロックの持つ多様性と自由さを再確認できることでしょう。ぜひ、Pavementのアルバムを聴きながら、90年代のインディーロックのエッセンスを感じ取ってみてください。
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