発売日: 1966年10月24日
ジャンル: フォークロック、バロックポップ
Simon & Garfunkelの3枚目のアルバム『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』は、フォークロックの枠を超え、詩的で音楽的な革新を追求した作品だ。このアルバムでは、伝統的なフォークソングや当時の社会問題をテーマにしつつも、洗練されたハーモニーとクラシカルなアレンジが組み合わさり、フォークロックを新たな次元に押し上げている。
タイトルは、16世紀のイギリス民謡「Scarborough Fair」に由来し、その楽曲もアルバムの中心的なトラックとして収録されている。アルバム全体を通じて、ポール・サイモンの緻密なソングライティングとアート・ガーファンクルの美しいハーモニーが際立っており、リリース当時から高い評価を受けた。
社会的メッセージ、感情的な叙事詩、そして時代を超越した音楽性を持つ『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』は、今なおフォークロックの金字塔として語り継がれている。
- アルバムの背景
- 各曲解説
- 1. Scarborough Fair/Canticle
- 2. Patterns
- 3. Cloudy
- 4. Homeward Bound
- 5. The Big Bright Green Pleasure Machine
- 6. The 59th Street Bridge Song (Feelin’ Groovy)
- 7. The Dangling Conversation
- 8. Flowers Never Bend with the Rainfall
- 9. A Simple Desultory Philippic (or How I Was Robert McNamara’d into Submission)
- 10. For Emily, Whenever I May Find Her
- 11. A Poem on the Underground Wall
- 12. 7 O’Clock News/Silent Night
- アルバム総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
アルバムの背景
Simon & Garfunkelは、1960年代初頭にアメリカのフォークシーンで名を上げ、特に「The Sound of Silence」のヒットで国際的な成功を収めた。その後、フォークロックが急速に進化する中で、2人は単なるフォークデュオの枠を超え、より複雑で多様な音楽を探求するようになった。
『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』の制作は、彼らの音楽的成長を示す重要なマイルストーンだ。プロデューサーのボブ・ジョンストンとのコラボレーションにより、アコースティックギターを基調としたサウンドに、オーケストラやバロック的な要素を加え、リッチで壮大なサウンドスケープを生み出した。
また、アルバムのリリース時はベトナム戦争や公民権運動などの社会的混乱が続く時代であり、その影響は楽曲のテーマや歌詞に色濃く反映されている。
各曲解説
1. Scarborough Fair/Canticle
アルバムの冒頭を飾る代表曲。16世紀のイギリス民謡「Scarborough Fair」を基にしたアレンジに、ポール・サイモンが反戦をテーマにした「Canticle」を重ねた二重構造の楽曲だ。アート・ガーファンクルの透き通るようなボーカルと、曲全体を包み込む幻想的なアレンジが、楽曲を超越的な美しさへと昇華している。
2. Patterns
リズミカルなパーカッションとギターが特徴的な楽曲。人生の不条理やパターン化された社会をテーマにした歌詞が、緊張感のあるメロディと絶妙に調和している。
3. Cloudy
軽快なメロディが印象的な一曲。歌詞は曇り空をテーマにしながらも、自由や変化を求める心情を感じさせる。サイモンとガーファンクルのハーモニーが心地よい。
4. Homeward Bound
シングルとしてリリースされていた楽曲で、ツアー中の孤独感と故郷への思いが描かれたフォークソング。親しみやすいメロディと詩的な歌詞がリスナーの心を掴む。
5. The Big Bright Green Pleasure Machine
消費主義とメディア批判を皮肉たっぷりに描いた楽曲。アップテンポなリズムとウィットに富んだ歌詞が、アルバムの中でも異彩を放っている。
6. The 59th Street Bridge Song (Feelin’ Groovy)
明るく軽快な一曲で、「ゆっくり行こう」というリフレインが印象的。ストレスの多い現代生活へのささやかな抗議とも取れる楽曲で、ポジティブなメッセージを届けている。
7. The Dangling Conversation
洗練されたアレンジと深い歌詞が特徴のバラード。知識人の夫婦の疎遠な関係を描いた内容で、ポール・サイモンの文学的なソングライティングが際立つ。
8. Flowers Never Bend with the Rainfall
人生の不確実性や変化を受け入れることをテーマにした楽曲。メロディの美しさと歌詞の哲学的な内容が、アルバムの中でも特に印象的だ。
9. A Simple Desultory Philippic (or How I Was Robert McNamara’d into Submission)
ディラン風の楽曲で、60年代のカウンターカルチャーを皮肉った内容。アップテンポな演奏と遊び心のある歌詞が特徴的だ。
10. For Emily, Whenever I May Find Her
ガーファンクルのソロボーカルが光る美しいラブソング。繊細なメロディと詩的な歌詞が、聴く者の心を揺さぶる。
11. A Poem on the Underground Wall
ニューヨークの地下鉄の壁に落書きをする人物を描いた楽曲。緊張感のあるアコースティックギターと詩的な歌詞が印象的。
12. 7 O’Clock News/Silent Night
アルバムの締めくくりを飾る異色のトラック。「Silent Night」のコーラスに乗せて、当時のニュースキャスターによるベトナム戦争や社会問題に関する報道が流れる構成。平和への願いと現実の残酷さが対比され、アルバム全体を象徴する深いメッセージを伝えている。
アルバム総評
『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』は、フォークロックの可能性を押し広げた革新的な作品であり、Simon & Garfunkelの音楽的な成熟を感じさせるアルバムだ。詩的な歌詞、洗練されたアレンジ、そして美しいハーモニーは、時代を超えて愛され続けている。特に「Scarborough Fair/Canticle」や「For Emily, Whenever I May Find Her」は、フォークロックの歴史において不朽の名作として知られる。
また、当時の社会問題を織り交ぜた楽曲構成は、単なるフォークアルバムにとどまらず、時代を映し出す文化的な作品としての価値も持っている。60年代フォークシーンの金字塔として、このアルバムは現代のリスナーにも新たな発見と感動を与えるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bridge Over Troubled Water by Simon & Garfunkel
彼らのラストアルバムで、壮大なアレンジと感動的なメロディが魅力的。
Pet Sounds by The Beach Boys
『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』と同じく洗練されたアレンジが特徴のポップアルバム。
Blonde on Blonde by Bob Dylan
フォークロックの名盤で、詩的な歌詞と実験的なサウンドが共通点を持つ。
Sweet Baby James by James Taylor
シンプルで美しいフォークソングが詰まったアルバムで、Simon & Garfunkelのファンにおすすめ。
Bookends by Simon & Garfunkel
哲学的なテーマと美しいメロディが光る、Simon & Garfunkelのもう一つの傑作。
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