
発売日: 1999年5月4日
ジャンル: メロディック・ハードコア、パンクロック
- 荒々しさと知性の融合——Good Riddanceが到達したハードコアの極地
- 全曲レビュー
- 1. Shadows of Defeat
- 2. Blueliner
- 3. The Hardest Part
- 4. Eighteen Seconds
- 5. Heresy, Hypocrisy, and Revenge
- 6. Self-Fulfilling Catastrophe
- 7. Article IV
- 8. Indoctrination
- 9. Shit-Talking Capitalists
- 10. Letters Home
- 11. 30 Day Wonder
- 12. Dear Cammi
- 13. Yesterday’s Headlines
- 14. Winning the Hearts and Minds
- 15. A Time and a Place
- 16. Second Coming
- 総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
荒々しさと知性の融合——Good Riddanceが到達したハードコアの極地
1999年、カリフォルニアのメロディック・ハードコアバンドGood Riddanceがリリースした4thアルバムOperation Phoenixは、彼らのディスコグラフィの中でも最も激しく、攻撃的な作品のひとつである。
このアルバムは、前作Ballads from the Revolution(1998年)よりもさらにハードな方向へとシフトし、社会批判的なメッセージを前面に押し出した、よりストレートなハードコア・パンクサウンドを展開している。メロディック・パンクのキャッチーさよりも、純粋なハードコアのスピードとアグレッションを強調した内容で、バンドの持つ政治的な怒りがこれまで以上にストレートに表現されている。
アルバムタイトルのOperation Phoenixは、ベトナム戦争中にCIAが主導した秘密作戦の名称から取られており、これはアルバム全体のテーマである政府の欺瞞、戦争、メディアの洗脳、人権侵害といった内容と深く結びついている。Good Riddanceは、単なるパンクバンドではなく、明確なメッセージを持ったバンドであることを本作で強く示した。
また、プロダクション面では**Fat Wreck Chordsの看板エンジニアであるライアン・グリーン(Ryan Greene)**がプロデュースを担当し、従来の作品よりもタイトで鋭いサウンドになっている。
全曲レビュー
1. Shadows of Defeat
アルバムの幕開けを飾る短いイントロトラック。テレビのニュース音声のサンプリングが挿入され、これから始まる戦いの予感を感じさせる。
2. Blueliner
超高速のビートと鋭いギターリフが炸裂する、Good Riddanceらしいハードコア・パンクの典型的なナンバー。歌詞はアメリカの政治的腐敗と、嘘にまみれたメディアを痛烈に批判している。
3. The Hardest Part
ミドルテンポでヘヴィなリフが特徴の楽曲。個人の倫理観と社会の矛盾をテーマにした歌詞が印象的で、シリアスなメッセージが込められている。
4. Eighteen Seconds
1分未満の短いハードコアトラック。Good Riddanceの怒りが凝縮された、まさに「瞬間爆発」的な楽曲。
5. Heresy, Hypocrisy, and Revenge
タイトルからして挑発的な楽曲。カソリック教会の腐敗や宗教の偽善を糾弾する内容で、歌詞の強烈さと演奏のスピード感が相まって、圧倒的なインパクトを残す。
6. Self-Fulfilling Catastrophe
エモーショナルなギターイントロから、疾走感のあるメロディック・ハードコアへと展開する楽曲。社会の中で孤立する個人の苦悩を描いた歌詞が印象的。
7. Article IV
パワフルなドラムとタイトなギターが絡み合う、ストレートなハードコアナンバー。アメリカ政府が人権を無視しながらも「自由」を標榜する矛盾を歌っている。
8. Indoctrination
スローなテンポで始まり、徐々に盛り上がる構成の楽曲。歌詞は、教育制度を通じた洗脳やプロパガンダについての批判。Good Riddanceの政治的メッセージが際立つ一曲。
9. Shit-Talking Capitalists
タイトルの通り、資本主義社会への痛烈な批判が込められた楽曲。テンポの速さとシャウト気味のボーカルが、曲全体の怒りを増幅させている。
10. Letters Home
戦争に関する楽曲。兵士が戦場から家族に送る手紙の内容をモチーフにしており、Good Riddanceの持つ反戦メッセージが色濃く出ている。
11. 30 Day Wonder
ミドルテンポのヘヴィな楽曲で、アメリカの軍国主義をテーマにしている。サウンドはハードコア寄りだが、キャッチーなメロディも感じられる。
12. Dear Cammi
エモーショナルなギターリフが印象的な楽曲。社会的なメッセージというよりも、個人的な苦悩や喪失感をテーマにした歌詞が特徴的で、アルバムの中でも異色の存在。
13. Yesterday’s Headlines
アルバムの中でも特にスピーディーでアグレッシブな楽曲。メディアの報道姿勢と、人々の関心の移り変わりについて鋭く批判している。
14. Winning the Hearts and Minds
攻撃的なリフとパワフルなボーカルが炸裂するナンバー。曲のタイトルはアメリカの軍事作戦に由来し、戦争を通じたプロパガンダについての歌詞が展開される。
15. A Time and a Place
ミドルテンポのエモーショナルな楽曲。ハードなサウンドの中に繊細なメロディを織り交ぜた、Good Riddanceの持つダイナミクスが活かされた一曲。
16. Second Coming
アルバムの締めくくりとなる楽曲。静かに始まり、徐々に盛り上がる構成が印象的。アルバム全体を通じて提示されたテーマをまとめるような歌詞となっている。
総評
Operation Phoenixは、Good Riddanceのキャリアの中でも最も攻撃的でハードコア色の強いアルバムであり、彼らの持つ政治的メッセージが最大限に発揮された作品である。
楽曲は全体的に短く、スピーディーで、無駄な装飾が一切ない純粋なハードコアパンクのエネルギーに満ちており、Good Riddanceの真の姿を体現したアルバムといえる。
一方で、随所にメロディックな要素も見られ、単なる怒りの発露に終わらず、リスナーに考えさせる力を持つ作品となっている。Fat Wreck Chordsのカタログの中でも、最も社会的メッセージが強く、ハードコアの攻撃性を前面に押し出した作品のひとつだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Propagandhi – Today’s Empires, Tomorrow’s Ashes(2001年)
政治的なメッセージを前面に押し出した、ハードコア・パンクの傑作。 - Strike Anywhere – Exit English(2003年)
社会的メッセージとメロディック・ハードコアの融合。 - Anti-Flag – Underground Network(2001年)
政治的パンクの代表作。 - Bad Religion – The Process of Belief(2002年)
知的な歌詞とハードなサウンドが共通。 - Rise Against – Siren Song of the Counter Culture(2004年)
Good Riddanceの影響を受けたバンドの代表作。
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