
発売日: 1969年8月25日
ジャンル: ハードロック、ブルースロック
時代の波に乗る荒削りなロックンロールの胎動
1969年、ロックが黄金時代を迎える中、アメリカ・ミシガン州出身の**Grand Funk Railroad(GFR)**がデビューアルバムOn Timeを引っ提げてシーンに登場した。このアルバムは、バンドの原点ともいえるダイナミックな演奏とパワフルなブルースロックを詰め込んだ作品であり、後にアリーナロックの先駆けとなる彼らのスタイルの礎を築いた。
GFRは、ヴォーカルとギターを担当するマーク・ファーナー(Mark Farner)、ベーシストのメル・サッチャー(Mel Schacher)、そしてドラマーの**ドン・ブリューワー(Don Brewer)**というトリオ編成。ブルースの影響を色濃く受けたギターリフ、エネルギッシュなリズム隊、そしてシャウトするようなヴォーカルが特徴的で、後に70年代のアメリカン・ハードロックの基盤を築くことになる。
プロデュースを手掛けたのはテリー・ナイト(Terry Knight)。彼の手腕により、スタジオ作品でありながらライブのような荒々しいグルーヴ感を持つサウンドが生み出された。本作はタイトルのOn Timeが示すように、リズムと勢いに満ちた楽曲が並ぶ。時代の空気を反映しつつも、独自のスタイルを確立しようとする熱意がひしひしと伝わってくる作品だ。
全曲レビュー
1. Are You Ready
オープニングを飾るのは、まさにGFRのエネルギーを象徴するナンバー。ジャングルのように荒々しいドラム、うねるようなベースライン、そしてファーナーのソウルフルなヴォーカルが炸裂する。観客を煽るような「Are you ready?」というリフレインは、ライブバンドとしての彼らの魅力を最初から存分に発揮している。
2. Anybody’s Answer
ブルージーなギターリフと、ミドルテンポのグルーヴが心地よい一曲。サイケデリックな要素を持ちつつ、骨太な演奏が貫かれている。ファーナーのヴォーカルが、内面的な問いかけをするような歌詞に絶妙にマッチしており、シンプルながらも味わい深い。
3. Time Machine
GFRの代表曲のひとつ。ファジーなギターが特徴的で、疾走感のあるリズムとファーナーのエモーショナルな歌唱が絡み合う。歌詞は「タイムマシンで過去や未来を旅する」というシンプルなテーマだが、まるで時代の変遷を見つめるようなノスタルジックな響きがある。
4. High On A Horse
タイトル通り、どこかトリップ感のあるブルースロック。リズミカルなギターの刻みと、サッチャーのベースが生み出す重厚なグルーヴが印象的だ。歌詞は社会批判的な要素を含み、ベトナム戦争やドラッグ文化といった当時のアメリカの空気を反映している。
5. T.N.U.C.
インストゥルメンタル中心の楽曲で、ドン・ブリューワーのドラムソロが炸裂する。プログレッシブな展開を見せるが、あくまでGFRらしい荒削りなエネルギーが貫かれている。ライブではさらに長尺のアドリブを加え、観客を圧倒する楽曲だ。
6. Into The Sun
アルバム前半の勢いを受け継ぎつつ、少しドラマチックな構成を持つナンバー。ゆったりとしたイントロから徐々にテンションを高めていき、クライマックスでは爆発するようなギターとヴォーカルが響く。GFRのダイナミックな楽曲構成の巧みさが光る一曲。
7. Heartbreaker
シンプルなリフとブルースの影響を色濃く受けたバラード。ファーナーの感情をむき出しにしたヴォーカルが胸に迫る。愛や別れをテーマにした歌詞は普遍的で、後の彼らの代表曲「I’m Your Captain(Closer to Home)」にも通じるエモーショナルな作風の原点が見える。
8. Call Yourself A Man
泥臭いブルースロックの真骨頂。骨太なギターリフと、シャウトするようなヴォーカルが特徴的で、まるでストーンズのようなガレージ感もある。グランジやハードロックにも影響を与えたであろう無骨なサウンドが魅力的だ。
9. Can’t Be Too Long
プログレッシブな要素を感じさせる長尺の楽曲。ミドルテンポでじっくりと展開し、ファーナーの情熱的な歌唱とギターが交互にリードを取る構成になっている。70年代のGFRの音楽性へと繋がる実験的な一面が垣間見える。
10. Ups And Downs
アルバムのラストを締めくくる、陽気でノリの良いロックンロール。これまでのハードな展開から一転し、軽快なリズムとキャッチーなメロディが心地よい。エンディングにふさわしい楽観的なムードを醸し出している。
総評
On Timeは、GFRの持つ生々しいエネルギーをパッケージングした作品であり、後のハードロックの原点とも言えるサウンドを確立している。荒削りな部分はあるものの、それが逆にバンドのパワーをダイレクトに伝える要素となっており、ライブバンドとしての魅力をそのまま凝縮したようなアルバムだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Deep Purple – In Rock
GFRと同じく、ブルースロックを基盤としながらもハードなサウンドへと進化を遂げたバンドの代表作。 - Led Zeppelin – II
1969年にリリースされたZepの2ndアルバム。GFRの影響を感じさせる泥臭いブルースロックと、ヘヴィなリフが共通点。 - Cream – Disraeli Gears
エリック・クラプトン率いる伝説的トリオバンド。ブルースをルーツにしたサイケデリックなサウンドが魅力。 - The James Gang – Rides Again
ジョー・ウォルシュのギターが炸裂する、アメリカン・ハードロックの隠れた名盤。GFRファンにはたまらない一枚。 - Mountain – Climbing!
ラウドで重量感のあるギターリフと、シンプルなロックンロールが魅力の名作。
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