発売日: 1975年10月25日
ジャンル: プログレッシブ・ロック、ワールド・ミュージック
マイク・オールドフィールドの3作目となるアルバム『Ommadawn』は、彼の音楽的探求が新たな領域に踏み出した重要な作品だ。前作『Tubular Bells』や『Hergest Ridge』の影響を受けつつも、民族音楽やワールド・ミュージックの要素を大胆に取り入れ、より感情的で内面的な表現を追求している。
アルバムの制作は、オールドフィールド自身の内的な葛藤と、母親の死という個人的な悲しみの中で進められた。その結果、アルバム全体には癒しと痛みが交錯する深い感情が込められている。ほぼすべての楽器を彼自身が演奏し、特にギターの多層的なサウンドは本作の中心的な特徴である。また、アフリカのパーカッションやケルト音楽の影響を受けたメロディが、作品全体に異文化の香りを添えている。
トラック解説
Part One (19:23)
アルバムの第一部は、静かなアコースティックギターの旋律で幕を開ける。次第に楽器が重ねられ、ギター、マンドリン、ティンホイッスルが複雑で美しいハーモニーを作り上げていく。この段階では、ケルト音楽の影響が特に顕著であり、瞑想的で心を落ち着かせる雰囲気が支配的だ。
中盤では、アフリカのパーカッションが力強いリズムを生み出し、音楽のエネルギーが高まる。これに伴い、ギターのソロがよりドラマチックになり、楽曲全体がクライマックスへと向かう。特筆すべきは、セレステやストリングスの響きがもたらす神秘的な雰囲気だ。楽曲の最後では、心を打つようなコーラスが挿入され、荘厳な終わりを迎える。
Part Two (17:17)
第二部は、柔らかなギターと控えめなストリングスで始まり、第一部のテーマを引き継ぎつつ、さらに深い感情の領域に踏み込む。メロディはどこか憂いを帯びており、オールドフィールドの感情が音楽を通じて直接的に表現されているようだ。
中盤では、エレキギターが感情的なソロを奏で、クライマックスを形成する。アフリカのパーカッションが再び加わり、リズムの力強さが楽曲に生命を吹き込む。終盤では、癒しを感じさせる静かなコーダが続き、「On Horseback」という隠しトラックで幕を閉じる。この部分は、子どもたちのコーラスと穏やかな歌声が融合し、アルバム全体に希望と喜びをもたらすフィナーレとなっている。
アルバム総評
『Ommadawn』は、マイク・オールドフィールドの個人的な感情と音楽的探求が見事に結実した作品だ。内省的でありながら、力強い生命力を感じさせるサウンドスケープは、リスナーを深い瞑想的な旅へと誘う。ケルト音楽やアフリカンビートといった異文化要素を融合しつつも、オールドフィールド独自の音楽的アイデンティティが確立されており、プログレッシブ・ロックの枠を超えた芸術的な傑作に仕上がっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Hergest Ridge by Mike Oldfield
『Ommadawn』の前作で、自然をテーマにした広がりのあるサウンドと内省的な雰囲気が楽しめる。
The Songs of Distant Earth by Mike Oldfield
スペース・テーマとワールドミュージックが融合した作品で、オールドフィールドのサウンドスケープがさらに進化した一枚。
The Celtic Circle (Various Artists)
ケルト音楽のコンピレーションアルバムで、『Ommadawn』のケルト的な要素を深く探求したい人におすすめ。
Third by Soft Machine
実験的で多層的な構成のプログレッシブ・ロック作品で、『Ommadawn』のファンに響く深みがある。
Spirit of Eden by Talk Talk
ミニマリズムと深い感情表現が共通しており、瞑想的な音楽を愛するリスナーに最適。
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