Not in Love by Crystal Castles feat. Robert Smith(2010)楽曲解説

1. 歌詞の概要

“Not in Love” は、2010年にリリースされたCrystal Castlesのセカンドアルバム Crystal Castles (II) に収録された楽曲 で、もともとは カナダのニューウェーブ・バンド Platinum Blonde が1983年に発表した楽曲のカバー です。

このカバー版では、The Cure のフロントマンであるロバート・スミス(Robert Smith)をゲストボーカルに迎えたバージョン がシングルとしてリリースされ、大きな話題となりました。
原曲のポストパンク/ニューウェーブ的なサウンドに比べ、Crystal Castlesのバージョンはよりダークでエレクトロニックなアレンジ となり、感情の抑制と爆発が同時に存在するような冷たい美しさ を持つ楽曲に仕上がっています。

歌詞の内容は、一見するとラブソングのようでありながら、実際には冷淡で疎遠な関係を描いている のが特徴です。タイトル通り、主人公は「恋に落ちていない(Not in Love)」と繰り返し歌う ものの、その感情にはどこか未練や苦しみがにじみ出ています。

2. 歌詞のバックグラウンド

この曲の原曲は、カナダのバンド Platinum Blonde の1983年の楽曲 で、当時のニューウェーブの影響を色濃く受けたポストパンクスタイルの楽曲でした。
Crystal Castlesは、オリジナルのメロディと歌詞を尊重しつつ、彼ら独自のエレクトロニックなサウンドを加え、より冷たくダークな雰囲気 に仕上げました。

特に、シングルバージョンでThe Cure のロバート・スミスがボーカルを担当したことにより、この曲はさらにメランコリックでゴシックな魅力 を増し、より幅広いリスナーに届く作品となりました。
ロバート・スミスの儚げで感傷的なボーカル は、曲の持つ感情の抑圧と喪失感を際立たせ、単なる恋愛ソングではなく、より深い心理的な要素を含んだ楽曲へと昇華されています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、“Not in Love” の印象的な歌詞を一部抜粋し、日本語訳とともに紹介します。

[Verse 1]
“I saw your picture hangin’ on the back of my door”
(君の写真がドアの裏に掛かっているのを見た)

“Won’t give you my heart, no one lives there anymore”
(君に僕の心をあげることはできない、そこにはもう誰も住んでいないんだ)

[Chorus]
“I’m not in love”
(僕は恋に落ちていない)

“I’m not in love”
(僕は恋に落ちていない)

[Verse 2]
“We were lovers, now we can’t be friends”
(僕たちは恋人だった、でももう友達には戻れない)

“Fascination ends, here we go again”
(魅力は終わった、またこの繰り返しだ)

※ 歌詞の引用元: Genius.com

4. 歌詞の考察

“Not in Love” の歌詞は、恋愛が終わりかけている、もしくはすでに終わってしまった関係の冷たさと虚しさ を描いています。

冒頭の「君の写真がドアの裏に掛かっているのを見た(I saw your picture hangin’ on the back of my door)」というラインは、過去の思い出にまだ縛られている様子 を表現しているように感じられます。しかし、続く「そこにはもう誰も住んでいない(No one lives there anymore)」というフレーズは、自分の心の中からその人が消え去ってしまった という感情を強調しています。

さらに、「僕たちは恋人だった、でももう友達には戻れない(We were lovers, now we can’t be friends)」というラインは、恋愛関係が終わった後の距離感や、感情が整理できない状態を示しており、単なる「未練」ではなく、関係性そのものの崩壊 を描いているとも解釈できます。

サビの「I’m not in love(僕は恋に落ちていない)」というフレーズが繰り返されることで、主人公が本当にそう思っているのか、それとも自分に言い聞かせているのか という疑問が浮かびます。この繰り返しは、感情を押し殺そうとする試みでありながらも、それがむしろ逆効果となり、切なさを際立たせている のが特徴です。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

“Not in Love” のような ダークでエモーショナルなエレクトロ・ポップ が好きな人には、以下の楽曲もおすすめです。

  • “Alice Practice” by Crystal Castles – ノイズとエレクトロを融合させた初期の代表曲。

  • Celestica” by Crystal Castles – 浮遊感のあるシンセとメランコリックな雰囲気が魅力の楽曲。

  • “Lovesong” by The Cure – ロバート・スミスが書いた、メランコリックで美しいラブソング。

  • “Somebody Else” by The 1975 – 失恋の喪失感を描いたエモーショナルな楽曲。

  • “Youth” by Daughter – 淡々としたボーカルと幻想的なサウンドが共通するドリームポップの名曲。

  • “Oblivion” by Grimes – ダークで不穏なエレクトロポップ。

6. “Not in Love” の影響と評価

“Not in Love” は、Crystal Castlesの楽曲の中でも特に広く知られた曲のひとつ であり、The Cureのロバート・スミスをフィーチャーしたことで、さらに多くのリスナーに届く楽曲となりました。

特に、ロバート・スミスのボーカルは、感情を抑えながらも、どこかに切なさや苦悩を滲ませる独特の歌い方 をしており、オリジナルのニューウェーブ的なサウンドとは異なる、新しい魅力を生み出しています。

また、この楽曲はエレクトロクラッシュやシンセポップ、ダークウェーブの文脈でも重要な楽曲となり、クラブやフェスティバルで頻繁にプレイされる定番のナンバーとなりました。

原曲の持つ80年代のノスタルジックな雰囲気と、Crystal Castlesの冷たく機械的なサウンドが融合 することで、“Not in Love”「失われた感情」を描くアンセム のような存在となりました。


“Not in Love” は、単なる失恋ソングではなく、感情を抑えようとすることで、逆にその感情が強調される楽曲 です。その冷たくも美しいサウンドとロバート・スミスのボーカルは、今もなお多くのリスナーに深い印象を残し続けています。

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