Nobody by Mitski（2018）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 「Nobody」の影響と文化的インパクト

1. 歌詞の概要

「Nobody（ノーバディ）」は、Mitski（ミツキ） が2018年にリリースしたアルバム『Be the Cowboy』に収録された楽曲で、孤独と愛への渇望をテーマにした、キャッチーでメランコリックな楽曲 です。

この曲は、ディスコ風の軽快なメロディとポップなサウンドとは裏腹に、非常に切実で孤独感に満ちた歌詞 が特徴的です。Mitskiは、「Nobody」という単語を何度も繰り返し歌うことで、孤独の感覚が深まっていく様子 を強調しています。

一見すると、明るく踊れるような曲調ですが、歌詞を読み解くと、誰からも愛されず、誰からも必要とされていないという痛切な感情 が込められていることがわかります。Mitskiは、これまでの作品でもアイデンティティや疎外感 について歌ってきましたが、「Nobody」は彼女の楽曲の中でも特に普遍的な「孤独」というテーマを前面に押し出した作品となっています。

2. 歌詞のバックグラウンド

Mitskiは、日本とアメリカのハーフとして生まれ、幼少期にさまざまな国を転々としながら育ちました。その経験から、「どこにも完全には属せない」という感覚 を持ち続けており、それが彼女の音楽の重要なテーマの一つになっています。

「Nobody」は、Mitskiがマレーシアでひとりきりの誕生日を過ごしたときの体験 にインスパイアされて作られました。彼女はその時、誰にも会えず、話す相手もいない状況で「私の人生には本当に誰もいない」と強く感じ、その孤独を曲に昇華したと言われています。

この楽曲の特徴的な部分は、1970年代のディスコやソフトロックを彷彿とさせるサウンド にあります。意図的にキャッチーなメロディを取り入れることで、歌詞の持つ切実な感情とのコントラストを生み出し、より印象的な作品になっています。Mitski自身も、「Nobody」は**「泣きながら踊るための曲」** だと語っています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Nobody」の印象的な歌詞の一部を抜粋し、その和訳を紹介します。

And I know no one will save me
そして私は知ってる、誰も私を救ってくれないことを

I just need someone to kiss
ただ誰かにキスをしてほしいだけ

Give me one good honest kiss
たったひとつの誠実なキスをちょうだい

And I’ll be alright
それさえあれば、私は大丈夫

このフレーズでは、深い孤独感と、愛されたいという切実な願い が表現されています。Mitskiは、単なる恋愛の渇望ではなく、人としてのつながりや、誰かに認められたいという本能的な欲求 を歌っています。

Nobody, nobody, nobody
誰も、誰も、誰も

この「Nobody」のリフレインは、単調に繰り返されることで、孤独がどんどん増幅していくような感覚 をリスナーに与えます。明るいメロディの中に、このフレーズがひたすら繰り返されることで、「楽しげな雰囲気」と「孤独のリアルさ」が対比され、独特な切なさを生み出しています。

（歌詞全文は以下のリンクから参照できます）
Mitski – Nobody Lyrics | Genius

4. 歌詞の考察

「Nobody」は、「孤独」という普遍的な感情を極限までシンプルに表現した楽曲 です。Mitskiの歌詞は、詩的でありながらも非常にストレートで、多くのリスナーが共感できるものになっています。

「I just need someone to kiss（ただ誰かにキスをしてほしいだけ）」
- これは単に恋愛を求める歌ではなく、人間としての「愛されることへの根源的な欲求」 を表しています。
- 誰かに認められることで、ようやく「生きている実感」を得られるというテーマが感じられます。
「Nobody, nobody, nobody」
- このフレーズが繰り返されることで、「誰もいない」という事実が強調され、まるで空虚な空間に響き渡るような効果を生み出しています。
- 曲の後半では、バックの音楽がどんどん盛り上がっていくにもかかわらず、この言葉が繰り返されることで、「楽しげに聞こえるのに、どこか苦しく感じる」 という不思議な感覚をリスナーに与えます。
「I’ll be alright（それさえあれば、私は大丈夫）」
- ここでは、愛があれば孤独から救われると思いながらも、実際にはそれが得られない現実とのギャップが描かれています。
- 「本当にそれだけで大丈夫なのか？」という問いかけが含まれているようにも感じられます。

このように、「Nobody」は、「ひとりぼっちの痛み」と「誰かとつながることへの願望」 を対比させながら、シンプルな言葉で深い感情を伝える楽曲となっています。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

「Nobody」が好きな人には、以下のような楽曲もおすすめです。

Cry for Me by Camila Cabello
- ポップなメロディに悲しげな歌詞をのせた楽曲で、「Nobody」と同じく対照的な要素が際立つ。
Dancing On My Own by Robyn
- 切ない恋心をテーマにしたダンサブルな楽曲で、「Nobody」と同じ「悲しみを踊りながら表現する」スタイルが魅力的。
Liability by Lorde
- 孤独と自己価値の揺らぎをテーマにしたバラードで、Mitskiの世界観と共通する部分が多い。
Lost Cause by Billie Eilish
- 冷めた恋愛観と寂しさを描いた楽曲で、「Nobody」のように感情の揺れが伝わる作品。
Archie, Marry Me by Alvvays
- ノスタルジックなメロディと、愛への憧れを描いた歌詞が「Nobody」とリンクする。