Nightingale by Carole King（1974）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.04.29

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 静寂の中の“声”に耳を澄ます
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1. 歌詞の概要

「Nightingale」は、キャロル・キングが1974年に発表したアルバム『Wrap Around Joy』に収録された楽曲で、癒しと希望を象徴する“ナイチンゲール（夜鶯）”をモチーフに、人間の孤独や不安に寄り添うような深い情感が込められた作品である。

ナイチンゲールとは、夜に美しい声で鳴くことで知られる鳥であり、古くから詩や文学の中で「慰め」や「救い」の象徴とされてきた存在である。この楽曲でも、語り手が眠れぬ夜に耳を澄ませ、ナイチンゲールの声に心を預けようとする姿が描かれる。騒がしい現実の中で、唯一静かに語りかけてくれる存在──それがこの“鳥の歌”であり、同時に「音楽」そのものでもあるのだ。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Nightingale」は、キャロル・キングとリック・エルリック（Rick Evers）による共作であり、1970年代のキングが個人的な感情や日常の機微を音楽に昇華するスタイルをさらに深めた時期の楽曲である。

この曲が発表された当時、キングは『Tapestry』で得た圧倒的な成功のあと、より幅広い音楽的アプローチを模索していた。『Wrap Around Joy』はその成果のひとつであり、ソウル、ジャズ、ゴスペルなど様々な要素を内包した豊かな音楽性を示すアルバムである。その中で「Nightingale」は、優しさと繊細さを持ちながらも、深い精神的な救済を歌い上げる楽曲として際立っている。

また、バックコーラスには娘ルイーズ・ゴフィンも参加しており、母と娘の絆が音楽の中に溶け込むような、世代を超えた温もりも感じられる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下は、「Nightingale」の印象的な一節である。

I’m tired and I need some rest
I’ve got to put my head on your breast

もう疲れたよ　少し休ませて
あなたの胸に頭をあずけたい

Oh, nightingale
Sing us a song of love

ああ、夜鶯よ
私たちに愛の歌を歌っておくれ

Please don’t be long
It won’t take too much of your time

どうか長くはかからないで
ほんの少しの時間でいいの

引用元：Genius Lyrics – Carole King “Nightingale”

4. 歌詞の考察

「Nightingale」の歌詞には、眠れない夜の静けさの中で、自分自身を見つめる語り手の心がにじんでいる。ここでナイチンゲールの歌は、単なる自然の音ではなく、心の奥底に届く“癒しの声”として機能している。誰にも届かないような孤独の中で、音楽だけがそっと寄り添ってくれる──その存在に、語り手は救いを見出しているのだ。

注目すべきは、この“歌”が誰かを変えるものではなく、ただそこにあることで十分な存在である点である。歌は命令せず、教訓も説かない。ただそこにいて、耳を傾ける者に静かな光を与える。キャロル・キングが一貫して描いてきた「音楽の力」とは、まさにこのようなものであり、共感を押し付けるのではなく、聴く者の内面に染み込むような優しさをもっている。

また、“I’ve got to put my head on your breast（あなたの胸に頭を預けたい）”という表現には、母性や庇護への渇望、精神的な安定への願いが込められている。恋人でも、親でも、友人でも、そうした「抱擁してくれる存在」への希求がこの楽曲の核であり、それがナイチンゲールという象徴に集約されているのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

Songbird by Fleetwood Mac（Christine McVie）
夜にそっと語りかけるようなやさしさが共通する名バラード。鳥のイメージも重なる。
Vincent by Don McLean
芸術家への鎮魂歌。静かな夜に響くメロディと詩的な歌詞が「Nightingale」と通じ合う。
At Seventeen by Janis Ian
孤独と共鳴する歌。個人的な感情を普遍的に昇華したという点で共通している。
Killing Me Softly with His Song by Roberta Flack
音楽が心を貫く瞬間を描いた代表的なソウル・バラード。音楽の力への賛歌。