発売日: 2017年9月1日
ジャンル: アンビエント, インストゥルメンタル, ポストロック
Daughterの『Music from Before the Storm』は、ビデオゲーム『Life is Strange: Before the Storm』のために制作されたサウンドトラックであり、バンドの音楽的な幅をさらに広げた作品である。これまでの感情的なインディーロックやドリームポップの要素は保ちながら、アンビエントやインストゥルメンタルの要素が強く、ゲームの物語に寄り添ったサウンドスケープが展開されている。エレナ・トンラのヴォーカルは数曲に限られ、多くのトラックはインストゥルメンタルで構成されており、静かな感情や緊張感、ストーリーテリングが音楽を通して描かれている。Daughterがこれまでに培った感情豊かなサウンドを、映画音楽的なアプローチで表現した作品だ。
各曲ごとの解説:
- Glass
アルバムのオープニングを飾る曲で、静かに流れるようなアンビエントサウンドが印象的。ミニマルなシンセと淡いギターが、内省的なムードを作り出している。ゲームの導入部分にぴったりの落ち着いたトラック。 - Burn It Down
数少ないヴォーカル入りの曲で、トンラの感情的な歌声が際立つ。重厚なギターとドラムが曲の緊張感を高め、感情が高ぶるクライマックスに向かって展開する。Daughterのエネルギッシュな一面が感じられるトラックだ。 - Flaws
儚くも美しいインストゥルメンタルで、シンセとギターが重なり合う。タイトルが示すように、不完全さや壊れやすさをテーマにした静かなサウンドスケープが広がる。アンビエントな雰囲気が印象的。 - Hope
この曲もヴォーカルが入っており、トンラの声が淡いシンセサウンドと融合している。希望と不安が交錯するようなメロディで、物語の中でも重要な感情の高まりを表現している。 - The Right Way Around
シンプルなギターとシンセサウンドが交差し、リズムが徐々にビルドアップしていくトラック。落ち着いた雰囲気ながらも、緊張感が漂い、物語の進行に合わせた感情の変化が感じられる。 - Witches
ミステリアスで重たいサウンドが特徴的なトラック。ゆっくりとしたテンポで進行し、不安感や暗いムードが漂う。ギターとシンセが絡み合い、内面的な緊張感を表現している。 - Departure
軽やかなギターリフが印象的な曲で、アルバムの中でも比較的明るい雰囲気が漂う。物語の中での移動や別れを象徴するような軽快さとメランコリックさが共存する。 - All I Wanted
ヴォーカルが入るトラックで、トンラの声が切実に響く。シンプルなギターの伴奏に乗せて、トンラのヴォーカルが心に刺さる感情を表現しており、ゲームの感動的な場面にふさわしい楽曲だ。 - I Can’t Live Here Anymore
シンセサウンドと静かなギターリフが、切なさと孤独感を表現している曲。音の層が重なり合い、感情がじわじわと高まっていく様子が描かれている。タイトルが示すように、別れや絶望感が漂う。 - A Hole in the Earth
アルバムを締めくくる壮大なトラック。エレナ・トンラのヴォーカルが再び登場し、アルバム全体を感情的に締めくくる。壮麗なギターとシンセサウンドが重なり、ゲームの物語のクライマックスを盛り上げる。
アルバム総評:
『Music from Before the Storm』は、Daughterがゲームサウンドトラックとして制作した作品でありながら、彼らの音楽的アイデンティティを強く感じさせるアルバムである。アンビエントやインストゥルメンタルを中心とした楽曲が、静けさや内面の緊張感を巧みに表現し、ゲームの世界観を音楽的にサポートしている。エレナ・トンラのヴォーカルが入るトラックでは、感情が高まる瞬間が鮮やかに描かれ、バンドとしての力強さも感じられる。Daughterの繊細で感情的なサウンドを、サウンドトラックという形で新しい方向に進化させた作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Dead Cities, Red Seas & Lost Ghosts by M83
アンビエントでシネマティックなサウンドが特徴のアルバム。『Music from Before the Storm』のインストゥルメンタルな美しさを楽しんだリスナーにぴったり。 - Blue Foundation by Blue Foundation
アンビエントとトリップホップが融合した作品。映画的なサウンドスケープと感情的なヴォーカルが、Daughterのサウンドに通じる。 - In a Safe Place by The Album Leaf
ミニマルなエレクトロニカとアンビエントが融合した作品。Daughterのインストゥルメンタルな側面を楽しめるリスナーに最適。 - Hurry Up, We’re Dreaming by M83
映画的で広がりのあるサウンドが特徴のアルバム。Daughterの壮大なサウンドスケープに共感するリスナーにおすすめ。 - Ghosts of Then and Now by Illum Sphere
エレクトロニカとダウンテンポを融合させた作品で、Daughterの静けさと緊張感が好きなリスナーにおすすめのアルバム。
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