発売日: 1973年7月
ジャンル: ハードロック、プログレッシブ・ロック
オランダ発、世界を席巻したロック・アンセムの誕生
1973年、オランダのロックバンドGolden EarringがリリースしたMoontanは、バンドのキャリアを決定づける作品となった。それまでの彼らは地元オランダを中心に活動していたが、本作に収録された「Radar Love」の大ヒットにより、一気に国際的な知名度を獲得。アメリカやイギリスのロックシーンにも食い込むことに成功した。
Golden Earringは、ジョージ・コーレマンス（ギター）、バリー・ヘイ（ボーカル、フルート）、ロルフ・デ・ファイ（ベース）、**セーザル・ツォイデルヴィク（ドラム）**という編成の4人組。サウンドはハードロックを基盤にしながらも、プログレッシブな展開やファンク的なグルーヴも取り入れており、一筋縄ではいかない独自のスタイルを築いている。
アルバム全体としては、壮大な構成の楽曲が多く、シングルヒット狙いの商業的な作風ではない。しかし、その中で「Radar Love」は異彩を放つ、シンプルながらも圧倒的なエネルギーを持つ楽曲として輝いている。アルバム全体の流れもダイナミックで、リスナーを旅へと誘うような雰囲気がある。
全曲レビュー
1. Radar Love
言わずと知れた名曲にして、本作のハイライト。イントロのベースラインが鳴った瞬間、ドライヴ感あふれるリズムとともに疾走する。まるで無限のハイウェイを突き進むかのようなサウンドは、当時のロックシーンにおいても異質な存在感を放った。
歌詞は、ラジオの電波（＝Radar Love）を通じて、恋人と精神的なつながりを保とうとするストーリー。シンプルなテーマながら、曲全体のムードがこれを絶妙に表現している。特にドラムの強烈なフィルとギターのリフが、楽曲の持つスリリングな魅力を際立たせている。
この曲はリリース後、アメリカのラジオ局でヘビーローテーションされ、結果的に全米13位のヒットを記録。今でもドライビング・ソングの代表格として愛され続けている。
2. Candy’s Going Bad
8分を超える大作で、アルバムの持つプログレッシブな側面を示す楽曲。静かに始まりながらも、徐々にヘヴィなギターリフが加わり、ダークでドラマチックな展開を見せる。歌詞は、一人の女性の堕落を描いたもので、バリー・ヘイのボーカルが物語を語るように進行していく。
3. Vanilla Queen
シンセサイザーを大胆に取り入れた、ミステリアスな雰囲気の楽曲。ハードロックとプログレッシブ・ロックの要素が融合しており、サウンドスケープが豊か。特に後半のギターソロとシンセの絡み合いが美しく、幻想的なムードを醸し出している。
4. Big Tree, Blue Sea
アグレッシブなギターリフと、タイトなリズムセクションが印象的なナンバー。ジャムセッション的な要素が強く、ライブ向きの楽曲と言える。途中、ジャズ的なインストパートが挟まれるのも面白い。
5. Are You Receiving Me
アルバムのラストを飾るにふさわしいエネルギッシュな楽曲。ギターリフのリフレインが中毒性を持ち、バリー・ヘイのヴォーカルが炸裂する。アルバムのテーマである「コミュニケーションとつながり」を締めくくるような歌詞も興味深い。
総評
Moontanは、「Radar Love」のヒットによって語られがちだが、それだけではない。アルバム全体が統一感のあるコンセプトを持ち、単なるハードロックではなく、プログレッシブな側面も併せ持つ独自の作品に仕上がっている。
「Radar Love」はシンプルなロックンロールの傑作だが、アルバムの他の楽曲はより複雑で、バンドの音楽性の広がりを示している。Golden Earringは単なる「一発屋」ではなく、この作品を通じてオランダのロックバンドが世界で戦えることを証明した。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Deep Purple – Machine Head
ハードロックの名盤であり、「Highway Star」などのドライヴィング・ソングが魅力。GFRと同じく疾走感とパワーに満ちた作品。 - Thin Lizzy – Jailbreak
ツインギターを活かしたエネルギッシュなロック。特に「The Boys Are Back in Town」のようなアンセミックな楽曲が、Radar Loveと共鳴する。 - Boston – Boston
クリアなギターサウンドとキャッチーなメロディが特徴。アメリカのアリーナロックの原点として、Golden Earring好きにも刺さるはず。 - Blue Öyster Cult – Agents of Fortune
「(Don’t Fear) The Reaper」に代表される、ミステリアスで洗練されたハードロックが特徴的。Golden Earringの持つ幻想的な要素と共鳴する部分が多い。 - UFO – Strangers in the Night
ライブアルバムだが、ダイナミックなギターサウンドとキャッチーなメロディが炸裂している。Golden Earringのライブ感を求める人におすすめ。
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