
発売日: 2011年11月11日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、スペース・ロック、アートロック
宇宙と人間、そして愛の物語の完結——壮大な二部作の終章
Love: Part Twoは、2010年のLoveの続編として制作されたAngels & Airwaves(AVA)の4thアルバムであり、前作と同じく映画『Love』(2011年)と連動する形でリリースされた。
本作では、前作で提示された「宇宙と人類のつながり」「愛という普遍的なテーマ」がより掘り下げられ、AVAの音楽的な世界観もさらに広がりを見せている。サウンド面では、引き続きシネマティックなシンセとリバーブの効いたギターを軸にしつつ、よりキャッチーなメロディとダイナミックな楽曲展開が特徴的。
本作は、単体でも楽しめるが、Loveとセットで聴くことで、Tom DeLongeが描こうとした壮大なストーリーがより深く理解できる。
全曲レビュー
1. Saturday Love
シンセのループが印象的なオープニング・トラック。アルバムのテーマである「愛」と「希望」を象徴する楽曲で、宇宙的なサウンドスケープが広がる。
2. Surrender
本作のリードシングルであり、最もキャッチーな楽曲の一つ。ポジティブなメロディとエネルギッシュなリズムが特徴で、サビの「Just surrender, and everything will be just fine」というフレーズが耳に残る。
3. Anxiety
ダークなギターリフと疾走感のあるビートが特徴的な楽曲。サウンド的にはI-Empireの頃のAVAを彷彿とさせるが、より洗練されたアプローチが取られている。歌詞は「不安」と「希望」が共存する人間の心理を描いている。
4. My Heroine (It’s Not Over)
エモーショナルなメロディが際立つ楽曲。タイトルが示す通り、恋愛や救済をテーマにした歌詞が印象的で、AVAらしいドラマティックな展開が特徴。
5. Moon As My Witness
スペース・ロック的なアプローチが強く、シンセとギターの絡みが美しい楽曲。静寂と高揚感が交錯する構成で、アルバムの中でも特に映画的なサウンドが際立つ。
6. Dry Your Eyes
アコースティックな雰囲気を持ちつつ、シンセやエレクトロニックな要素も織り交ぜた楽曲。AVAの楽曲の中では比較的シンプルなアレンジだが、歌詞の感情表現が際立っている。
7. The Revelator
ミステリアスなイントロから始まり、徐々にダイナミックなサウンドへと展開する楽曲。歌詞には「啓示(Revelation)」を意味する言葉が織り込まれており、アルバムのコンセプトを象徴する。
8. One Last Thing
切ないメロディが印象的なバラード。Tom DeLongeのヴォーカルが際立ち、感情的な歌詞とともにアルバムの中でも特に心に響く一曲。
9. Inertia
スペース・ロックとエレクトロニカの融合が感じられる楽曲。浮遊感のあるサウンドスケープが広がり、アルバムのテーマである「宇宙と人間の関係性」を表現しているような仕上がりになっている。
10. Behold a Pale Horse
タイトルは聖書の「ヨハネの黙示録」からの引用で、ダークで神秘的な雰囲気を持つ楽曲。リズムの変化やギターのアプローチが印象的で、他の楽曲とは異なる緊張感を持っている。
11. All That We Are
アルバムのラストを飾る壮大なトラック。サウンド的にはU2やM83を彷彿とさせる広がりのある楽曲で、「愛」「人生」「宇宙」という本作のテーマを総括するような内容になっている。
総評
Love: Part Twoは、前作Loveのスピリットを引き継ぎながらも、よりポップでダイナミックな楽曲が増えたアルバムだ。壮大なサウンドスケープと、ポジティブなメッセージが共存する作品であり、スペース・ロックの要素を強く打ち出しつつも、エモーショナルなメロディが際立っている。
また、『Love』という映画との関連性も考慮すると、単なるロックアルバムではなく、一つの「体験」として楽しめる作品となっている。Tom DeLongeの音楽的なビジョンが色濃く反映されており、彼の「音楽と映画を融合させる」という夢が具現化されたアルバムでもある。
しかし、過去のポップパンク的なエネルギーを期待していたリスナーにとっては、より実験的でコンセプチュアルなアプローチがやや難解に感じるかもしれない。それでも、AVAの音楽性を理解し、宇宙的なサウンドや哲学的な歌詞に魅力を感じるリスナーにとっては、非常に奥深い作品となっている。
おすすめアルバム
- M83 – Junk (2016)
シネマティックで幻想的なエレクトロニカとスペース・ロックが共通。 - 30 Seconds to Mars – Love Lust Faith + Dreams (2013)
宇宙的なテーマと壮大なサウンドスケープがAVAと似た雰囲気を持つ。 - U2 – Zooropa (1993)
エレクトロニカとロックの融合、未来的なアプローチがLove: Part Twoと共通。 - The Killers – Day & Age (2008)
シンセポップとロックの融合が感じられ、サウンドのスケール感が似ている。 - Explosions in the Sky – The Wilderness (2016)
インストゥルメンタルながらも、映画的な広がりのある音楽性が共通。
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