発売日: 2017年4月21日
ジャンル: サイケデリック・フォーク、インディーロック、ドリーム・ポップ、アメリカーナ
概要
『Love Is Love』は、ブルックリンを拠点とするインディーフォーク・バンド、Woodsが2017年にリリースした9作目のスタジオ・アルバムである。
前作『City Sun Eater in the River of Light』で示されたジャズやエチオピアン・ファンクへの接近を経て、本作では再びよりシンプルで穏やかな美しさへと立ち返りつつも、世界の混乱と対話しようとする意志が静かに流れている。
アルバムは、2016年のアメリカ大統領選直後という激動の社会的背景の中で制作されたが、Woodsは直接的な政治的メッセージよりも、“愛は愛である”という普遍的なメッセージを繰り返し提示する。
その言葉は、混沌と分断のなかで“肯定の力”を静かに発するマントラとして機能し、音楽的にも暖かく、開かれたサウンドが全体を包んでいる。
全6曲というコンパクトな構成ながら、持続する愛、社会的な不安、祈りのような旋律が、静かに、しかし深くリスナーの内面へと染み渡ってくる。
Woodsの音楽が持つ“音響による浄化作用”が、最も明快に、そして優しく現れた作品と言える。
全曲レビュー
1. Love Is Love
オープニングにしてタイトル曲。
繰り返される“Love is love”というフレーズが、まるでマントラのように心に響く。
ミニマルなコード進行の上に、ホーンがゆっくりと舞い、世界を包み込むような広がりを感じさせる。
2. Bleeding Blue
アルバム中もっとも躍動的な楽曲。
アップテンポなビートにのせて、希望と焦燥が交錯する。
ホーンとギターの掛け合いが、サイケデリックとアフロ・ビートの架け橋となっている。
3. Lost in a Crowd
静けさをたたえたバラードで、都会の孤独と内面の迷いを描く。
Jeremy Earlの繊細なボーカルが、サウンドと共にゆっくりと心に沈んでいく。
4. Spring Is in the Air
9分に及ぶ長尺のインストゥルメンタル。
ゆるやかなギターのレイヤーとホーン、シンセが重なり合い、まるで春の森を歩くような心地よさが広がる。
時間の流れが溶けていくような、アンビエントに近い瞑想的トラック。
5. Hit That Drum
ミディアムテンポのフォーク・ポップ。
“鼓動”をテーマに、生命のリズムや人とのつながりを描き出す。
素朴な中に込められた、力強いポジティヴィティが印象的。
6. Love Is Love (End)
冒頭のタイトル曲のリフレイン的役割を果たすクロージング・トラック。
よりインストゥルメンタル寄りで、余韻とともにゆっくりと幕を下ろす構成。
まるで深呼吸をするかのような穏やかさが、アルバムのテーマを優しく回収する。
総評
『Love Is Love』は、混沌の時代において“肯定”を選び取るという、静かで強い意志に満ちたアルバムである。
政治や社会に対する直接的な批判ではなく、それらを包み込みうる普遍的な言葉とサウンドによって、Woodsはリスナーの心を穏やかに、そして深く照らし出す。
アナログ感のある録音、オーガニックな編成、そしてミニマルな反復によって生まれるトランス状態。
このアルバムはまさに、現代における“音楽による祈り”であり、聴くたびに異なる心象風景を映し出すミラーのようでもある。
インディーロックとしては異例なほど、怒りや皮肉から遠ざかった優しさに満ちた作品。
それは決して甘さではなく、意志としての“愛”なのだ。
おすすめアルバム（5枚）
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City Sun Eater in the River of Light / Woods
前作にして、よりリズミックで外向きだったエネルギーが本作にどう移行したかがよくわかる。 -
Carrie & Lowell / Sufjan Stevens
静謐で喪失と愛を扱うアルバムとして、同じスピリチュアルな質感を持つ。 -
The Harrow & the Harvest / Gillian Welch
フォークと祈りのようなメロディが響く。シンプルな編成と深い感情の浸透が共通。 -
Visions of Us on the Land / Damien Jurado
ドリーミーでフォーク的な語りと、幻想的音響処理がWoodsのサウンドと重なる。 -
Goodness / The Hotelier
よりエモーショナルなロック文脈からの“肯定の美学”。『Love Is Love』のテーマと共鳴する現代的表現。
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