Locket by Crumb(2017)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

“Locket” は、2017年にアメリカのインディーロックバンド Crumb(クラム) がリリースしたEP Locket のタイトルトラックであり、彼らの特徴的なドリーミーかつサイケデリックなサウンドを象徴する楽曲です。
歌詞は、記憶と感情の断片が交錯するような幻想的な世界観 を持っており、夢と現実の境界が曖昧になっていくような雰囲気を漂わせています。曲全体を通じて、ノスタルジックでメランコリックな感覚が漂いながらも、聴き手を独特の浮遊感のある世界へと引き込む魅力があります。

歌詞の中では、「Locket(ロケット)」というペンダントのような形で、過去の思い出や感情を閉じ込め、それを取り出しては再び封じ込める という心理的なプロセスが描かれています。この曲は、過去にとらわれながらも、それを完全には手放せないという心理状態を象徴していると考えられます。

2. 歌詞のバックグラウンド

Crumbは、2016年にアメリカ・ボストンで結成されたバンドで、ジャズやサイケデリック、インディーロックの要素をミックスした独特の音楽性を持っています。リードシンガーであり、作詞・作曲を手掛ける ライラ・ラミニ(Lila Ramani) の繊細で囁くようなボーカルと、エフェクトが効いた楽器の音作りが特徴です。

“Locket” は、彼らが一躍注目を集めるきっかけとなった楽曲 であり、バンドの持つ ドリーミーで実験的な音楽性 を決定づけました。特に、曲の後半で展開するサイケデリックなインストゥルメンタルパートは、Crumbの特徴的な音楽スタイルを象徴するものとなっています。

この曲の歌詞は、Crumbが得意とする「具体的な物語ではなく、抽象的なイメージの連なりによって感情を伝える」スタイルを反映しており、リスナーにさまざまな解釈を促すものとなっています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、“Locket” の印象的な歌詞を一部抜粋し、日本語訳とともに紹介します。

[Verse 1]
“Took a walk and passed your house late last night”
(昨晩、あなたの家の前を歩いて通り過ぎたの)

“All the shades were pulled and drawn way down tight”
(カーテンはすべて閉じられ、ぴったりと引かれていた)

“From within, the dim light cast two silhouettes on the shade”
(薄暗い光が、カーテンに二つの影を映し出していた)

“Oh, what a lovely couple they made”
(ああ、なんて素敵な二人なの)

[Chorus]
“Put it in my locket, locket, locket”
(それを私のロケットに入れるの)

“Put the chalk down and walk away”
(チョークを置いて、歩き去るの)

“Pick it up, up, up and dust it off”
(それを拾い上げて、ホコリを払う)

“Tell me that you want me, want me, want me”
(私が必要だと言って、言って、言って)

※ 歌詞の引用元: Genius.com

4. 歌詞の考察

“Locket” の歌詞は、断片的なイメージが積み重ねられており、具体的なストーリーを語るというよりは、感情の揺れや記憶の曖昧さを表現している のが特徴です。

冒頭の歌詞では、主人公がかつての恋人の家の前を通りかかり、そこに「新しいカップルの影」を見つけるシーンが描かれています。この情景は、失われた関係への未練や、過去へのノスタルジーを示しているようにも読めます。しかし、それを 「ロケット(ペンダント)」に閉じ込める という表現によって、過去の思い出を封じ込め、あるいは保存しながらも、それをどうするべきか迷っている心理状態 が暗示されています。

また、「Put the chalk down and walk away(チョークを置いて、歩き去る)」というラインは、学校の黒板や子供の落書きを連想させる表現であり、過去に執着しないようにしながらも、それを完全に手放せないという葛藤を示唆しているように感じられます。

さらに、サビの「Tell me that you want me(私が必要だと言って)」という繰り返しは、過去の関係への未練や、戻れないものへの切望を象徴しているとも解釈できます。全体的に、時間の経過とともに薄れていく記憶や感情、そしてそれに対する執着と解放の間で揺れる心理 を描いた楽曲と言えるでしょう。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

“Locket” のような ドリーミーでサイケデリックなインディーロック が好きな人には、以下の楽曲もおすすめです。

  • “Jinx” by Crumb – Crumbのアルバム Jinx に収録されており、同じく幻想的でメランコリックなサウンド。

  • “Space Song” by Beach House – ドリーミーなメロディと浮遊感のあるサウンドが特徴的な楽曲。

  • Chamber of Reflection” by Mac DeMarco – サイケデリックなシンセとノスタルジックな雰囲気が共通する楽曲。

  • Two Weeks” by Grizzly Bear – 美しいハーモニーとサイケデリックな要素を取り入れたインディーロック。

  • “Dark Red” by Steve Lacy – ローファイでメロウなギターサウンドが印象的な楽曲。

6. “Locket” の影響と評価

“Locket” は、Crumbの代表曲の一つとして広く知られるようになり、バンドの人気を決定づける楽曲となりました。特に、SpotifyやYouTubeを通じて口コミで人気が広がり、インディーミュージック・シーンで一気に注目を集めるきっかけ となりました。

また、この曲のミュージックビデオは、Crumbの楽曲が持つ シュールでサイケデリックな雰囲気 を強調した映像作品となっており、視覚的にも彼らの音楽の世界観を表現しています。特に、スローモーションや歪んだカメラワークを駆使した映像 は、夢と現実の境界が曖昧になるような感覚を引き出しており、楽曲の持つ独特のムードをより強調しています。


“Locket” は、ノスタルジックな記憶と、それに対する執着や解放を描いた楽曲 であり、Crumbの音楽性を象徴する一曲です。その浮遊感のあるサウンドと、夢のように曖昧な歌詞は、リスナーにさまざまな解釈を促しながら、深い感情を呼び起こす作品となっています。

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