1. 歌詞の概要
「La La」は、Ashlee Simpsonが2004年にリリースしたデビュー・アルバム『Autobiography』からのサード・シングルであり、彼女のキャリアにおける最も挑発的で自由奔放な一曲である。恋愛や性的表現を正面から捉えたこの楽曲は、タイトルの「La La」という無意味語を軸にしながら、“言葉にできない欲望”や“反抗的な態度”をエネルギッシュに放出している。
歌詞全体は、恋人との身体的な関係をユーモラスかつ攻撃的に描きながら、同時に「女の子が自分の欲望や主張を隠さずに歌うこと」の解放感に満ちている。Ashleeはここで、「従順なガールフレンド」像から離れ、自分から愛し、自分から仕掛ける“能動的な女性像”を提示しているのである。
そしてそれは、単なるセックス・ソングにとどまらず、**「女の子がセクシュアリティを表現してもいい」「自分の欲望を言葉にしてもいい」**という、2000年代ポップロックにおけるひとつのフェミニズム的提案でもあった。
2. 歌詞のバックグラウンド
「La La」は、Ashlee Simpsonのデビュー作『Autobiography』において、よりロック寄りで“危険な香り”をまとった一曲として位置づけられている。前作「Pieces of Me」で“繊細で誠実なガールネクストドア”を打ち出した彼女は、この「La La」で一転、挑発的でセクシーなイメージを前面に押し出した。
プロデュースはJohn Shanks。サウンド的には2000年代のガールズ・ポップパンク（Avril LavigneやP!nkの初期作品）に強く影響を受けており、ギターリフ中心のラウドでキャッチーなロックサウンドと、Ashleeの鼻にかかった挑発的なボーカルが絶妙に噛み合っている。
当時はMTVやラジオで大きな注目を集める一方、その“セクシーすぎる”歌詞やパフォーマンスが議論を呼び、批判と称賛の両極端な反応を巻き起こした。2005年のSuper Bowlハーフタイムショーの直後、Ashleeが出演した「La La」のライブはブーイングに包まれたことも記憶されているが、それも含めてこの曲はAshlee Simpsonというアーティストの“反骨と挑発”の象徴的存在となった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
「La La」の歌詞は、ストレートかつ直接的で、性的なニュアンスをあえて曖昧にせず、聴き手を挑発するように構成されている。以下に印象的なラインを抜粋する。
You make me wanna la la in the kitchen on the floor
あなたとキッチンの床でララしたくなるの
“la la”という曖昧な表現に込められているのは明らかに性的なニュアンスだが、それをぼかしつつキャッチーにしている点が秀逸。
I’ll be your French maid / When I meet you at the door
あなたがドアを開けたとき、私はフレンチメイドになってるわ
恋人のために“役を演じる”ことを楽しむ姿勢が描かれており、性愛を演劇的に表現する点で、フェティッシュなイメージをポップに昇華している。
I’m into you and out of you / You’re not even in the mood
あなたに夢中になったかと思えば、もう冷めてたり / それなのにあなたは乗り気じゃないのね
不安定な関係性と、情熱と冷却の波が絶えず交錯する恋愛のリアルなダイナミクスを一文に封じ込めている。
歌詞の全文はこちら：
Ashlee Simpson – La La Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「La La」は、ティーンポップ世代が“性”をどう語るかという問題に対して、極めて挑戦的なアプローチをとった楽曲である。Ashlee Simpsonはこの曲で、「女性が受け身であるべきだ」という固定観念にノーを突きつけるように、自分から誘い、欲しがり、支配する側にもまわる女性像を提示した。
興味深いのは、それが“わざとらしい女の武器”としてではなく、**「自己の欲望に素直でいることの肯定」**として描かれている点である。この曲の語り手は、相手に認められるために自分をセクシーに演出しているのではない。むしろ、自分が楽しむために“演じている”。ここには、性愛を受動的に描いてきたポップの文法を覆す意図がはっきりと感じられる。
また、タイトルの“la la”という無意味語には、“言葉にできない欲望”や“社会的に表現しにくい感情”をポップに包み込む機能がある。明言しないことで聴き手に自由な解釈を許しながら、確実に“それ”を伝えるという、ポップミュージックの技巧が凝縮されている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- U + Ur Hand by P!nk
性的な主導権を女性が握ることで、男性の期待を裏切るパンキッシュなアンセム。 - Girlfriend by Avril Lavigne
他人の彼氏に狙いを定め、奪うと宣言する、ポップパンクの女王による挑戦状。 - Dirty by Christina Aguilera
自己のセクシュアリティを大胆に解放する、2000年代の挑発系ポップの象徴。 - Just a Girl by No Doubt
女性の社会的位置づけへの風刺をポップに展開する、ガールズパワーの代表曲。 - Boom by Anjulie
セクシーで挑発的な歌詞とベースラインが、恋愛の攻防をスリリングに演出する楽曲。
6. “可愛くて危険、それが『La La』の魔法”
「La La」は、Ashlee Simpsonが「私もただの妹キャラじゃない」と音楽で証明した、アイデンティティの独立宣言のような一曲である。
それはセクシーで挑発的で、どこか幼さもあり、しかし何よりも自信に満ちている。
この曲が残した最も重要なメッセージは、「女の子が自分の欲望や態度を堂々と歌うことに、何の遠慮もいらない」ということだ。
“La La”とは、自由に自分を演じること。言葉にしなくても、全部伝わっていること。
それが恥ずかしくないと初めて教えてくれたのが、この楽曲だった。
Ashlee Simpsonは、ここで小さなスキャンダルを起こしたのではない。
彼女は、ポップのルールを、少しだけ書き換えたのである。
La la——その言葉には、そんな強さが宿っていたのだ。
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