発売日: 1987年5月25日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ゴシックロック、ポップ・ロック
『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』は、The Cureの多面的な音楽性を存分に発揮したダブルアルバムであり、バンドのキャリアの中でも特に幅広いサウンドを特徴としている。ゴシックロックからポップ、ファンクやサイケデリックな要素までが織り交ぜられ、実験的なアプローチが目立つ。この作品は、ロバート・スミスがバンドとして成熟し、多様なジャンルに挑戦した結果として、The Cureの音楽的な幅の広さを証明している。また、シングル曲「Just Like Heaven」が商業的にも成功し、バンドを世界的なスターに押し上げる一因となった。
各曲ごとの解説:
- The Kiss
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、鋭いギターリフと激しい感情がぶつかり合う強烈なロックナンバー。スミスのヴォーカルは怒りと激情に満ちており、サウンド全体が不安定な緊張感で溢れている。 - Catch
対照的に、柔らかでメランコリックなこの曲は、ロマンチックで甘美なメロディが印象的。シンプルなアコースティックギターとストリングスが、優雅で美しい雰囲気を作り出している。 - Torture
ダークで重いベースラインが印象的な曲で、スミスの不安げなヴォーカルがサイケデリックな雰囲気を醸し出す。リズムセクションが力強く、曲全体に緊張感が漂っている。 - If Only Tonight We Could Sleep
オリエンタルなサウンドスケープとエキゾチックなメロディが特徴の一曲。夢幻的な雰囲気が漂い、スミスのヴォーカルが静かに響く。内省的で、幻想的なトリップを誘うようなサウンドだ。 - Why Can’t I Be You?
軽快でアップテンポなポップ・ロックナンバー。ファンク要素を取り入れたこの曲は、アルバムの中でも最もキャッチーな曲の一つで、ダンスナンバーとしても親しまれている。スミスのユーモラスで浮遊感のあるヴォーカルが楽しい。 - How Beautiful You Are
叙情的で感情的なバラード。フランス文学からインスパイアされた歌詞が美しく、ギターとピアノの調和が際立つ楽曲。ロマンチックな雰囲気と哀愁が見事に融合している。 - Snakepit
長尺のサイケデリックなトラックで、暗くスローなリズムが特徴。ミステリアスな雰囲気が支配し、シンセサイザーとギターが織りなす音のレイヤーが厚みを持たせている。 - Just Like Heaven
The Cureの代表的なヒット曲で、甘くキャッチーなメロディと軽快なリズムが特徴的。愛の歓びを歌った歌詞と、感情豊かなギターリフが見事に融合し、バンドのポップセンスが光る。 - All I Want
力強いギターと激しいリズムが支配するロック色の強い楽曲。スミスのヴォーカルは強烈で、欲望と執着をテーマにした歌詞が曲の激しさを増幅させている。 - Hot Hot Hot!!!
ファンキーでダンサブルなナンバーで、リズムセクションが際立つ曲。軽快でエネルギッシュなサウンドが特徴で、The Cureの実験的で遊び心ある一面が垣間見える。 - One More Time
ゆったりとしたテンポのバラードで、切なく美しいメロディが印象的。スミスの感情豊かなヴォーカルが曲に深みを与えており、甘美な感傷を漂わせている。 - Like Cockatoos
不協和音とサイケデリックな雰囲気が漂う実験的な楽曲。奇妙なリズムと浮遊感のあるメロディが特徴で、夢の中にいるような幻想的な感覚を与える。 - Icing Sugar
ジャズ風のブラスセクションが印象的な曲。異質なサウンドが融合し、実験的ながらもキャッチーなメロディラインがリスナーを引き込む。 - The Perfect Girl
ポップでキャッチーな一曲で、軽快なリズムとシンプルなギターワークが際立つ。スミスのヴォーカルは明るく、歌詞は恋愛に対する軽快な気持ちが込められている。 - A Thousand Hours
静かなピアノとスミスの優しいヴォーカルが印象的なバラード。哀愁漂うメロディが、感情的な歌詞と相まって心に響く。 - Shiver and Shake
力強いギターと激しいビートが特徴のエネルギッシュなトラック。怒りや不安がスミスの激しい歌唱とともに爆発し、アルバムの中でも特に荒々しい一曲だ。 - Fight
アルバムを締めくくるこの曲は、力強いメッセージ性を持つ。闘い続けることの重要性を歌い、スミスのヴォーカルが激情を持って訴えかける。重厚なサウンドと共にアルバムのフィナーレにふさわしい。
アルバム総評:
『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』は、The Cureの多様性と音楽的な冒険心が存分に詰め込まれた作品であり、バンドの音楽的成長を示すマイルストーンとなった。ポップな楽曲から、暗くエキゾチックなサウンドスケープまで幅広く展開されており、聴く者を飽きさせない。特に「Just Like Heaven」や「Why Can’t I Be You?」のようなキャッチーなポップソングは商業的な成功を収める一方で、「The Kiss」や「Snakepit」といった暗くエッジの効いた楽曲がバンドの実験精神を示している。The Cureのファンにとっても、新たに彼らを知るリスナーにとっても、多彩なサウンドが楽しめる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Disintegration by The Cure
『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』の後にリリースされた名作で、よりダークで感情的なサウンドが特徴。The Cureのゴシックな側面が強調された一枚。 - Hounds of Love by Kate Bush
ポップと実験性が融合したアルバムで、エモーショナルなサウンドスケープが広がる。『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』の多様性と感情の深さを好むリスナーにおすすめ。 - Tinderbox by Siouxsie and the Banshees
ポストパンクとゴシックロックを融合させたアルバムで、ダークで力強いサウンドが特徴。The Cureのゴシックな側面を気に入ったリスナーに響く作品。 - The Queen is Dead by The Smiths
ジャンルを超えた感情的な表現と、ポップでありながら内省的な歌詞が特徴。『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』の感情的な幅広さを気に入ったリスナーにぴったり。 - Ocean Rain by Echo & the Bunnymen
美しいオーケストラアレンジとポストパンクの融合が印象的なアルバム。ドラマチックで感情的なサウンドが、The Cureのロマンチックな一面を好む人におすすめ。
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