発売日: 1985年6月1日
ジャンル: シンセポップ、ニューウェーブ
アルバム全体のレビュー
a-haのデビューアルバムHunting High and Lowは、1980年代のシンセポップを代表する名作であり、バンドを一夜にしてスターダムに押し上げた記念碑的な作品だ。ノルウェー出身のトリオであるa-haは、キャッチーなメロディ、感情的な歌詞、そして洗練されたプロダクションで、ヨーロッパだけでなくアメリカでも大成功を収めた。
特に注目すべきは、このアルバムが収録する大ヒット曲「Take On Me」。独特なシンセリフとMorten Harketの広がりのあるヴォーカルが融合し、ポップミュージックの歴史に残る名曲となった。また、この曲のミュージックビデオも当時としては革新的で、手描きアニメと実写を組み合わせた映像はMTVで頻繁に放映され、a-haを世界的なポップアイコンへと押し上げた。
アルバム全体を通じて、エレクトロニックサウンドがメインでありながら、ストリングスやアコースティックギターも効果的に使われ、シンセポップに深みを与えている。感情豊かなヴォーカルと詩的な歌詞も、アルバムの特筆すべきポイントだ。デビュー作にしてこの完成度は驚異的であり、リリースから40年近く経った今でも色褪せることのない輝きを放っている。
各トラックレビュー
1. Take On Me
a-ha最大のヒット曲で、アルバムの顔とも言える一曲。明るいシンセリフが特徴的で、冒頭からリスナーを引き込む。Morten Harketの力強くも繊細な高音ヴォーカルが、この曲を唯一無二の存在にしている。ミュージックビデオも合わせて、80年代ポップカルチャーの象徴的な作品だ。
2. Train of Thought
ダークな雰囲気と知的な歌詞が特徴の楽曲。メロディはミステリアスだが、中毒性が高い。ストーリーテリング的なリリックが、この曲をアルバムの中でも異彩を放つ存在にしている。
3. Hunting High and Low
アルバムのタイトル曲であり、感情的なバラード。ピアノとストリングスが美しく絡み合い、Harketの切ないヴォーカルが楽曲をドラマチックに彩る。失われた愛への思いを歌ったこの曲は、多くのリスナーの心に響く。
4. The Blue Sky
明るいテンポと希望に満ちた雰囲気が特徴的な一曲。ポップで軽快なサウンドが、アルバムのバランスを取る役割を果たしている。
5. Living a Boy’s Adventure Tale
幻想的なイントロから始まるこの曲は、夢見るような雰囲気が漂う。Harketの感情的なヴォーカルが特に映える一曲で、冒険心とノスタルジーが交錯する。
6. The Sun Always Shines on T.V.
「Take On Me」と並ぶヒット曲で、ドラマチックな構成とエネルギッシュなサウンドが印象的。イントロの荘厳なシンセと、力強いコーラスが耳に残る。歌詞は悲哀を帯びており、曲全体の情熱的なトーンと絶妙にマッチしている。
7. And You Tell Me
短く可愛らしいインタールードのような楽曲。シンプルなメロディと控えめなアレンジが、アルバムに軽やかさを加える。
8. Love Is Reason
軽快なシンセポップナンバーで、キャッチーなメロディが魅力的。恋愛をテーマにした明るい歌詞が、全体的に楽観的なムードを醸し出している。
9. I Dream Myself Alive
アグレッシブなシンセとリズムが特徴の一曲で、エネルギーに満ちている。リフレイン部分のメロディが特に印象的で、聴くたびに新しい発見がある。
10. Here I Stand and Face the Rain
アルバムの締めくくりにふさわしい、感動的で深みのあるバラード。雨の中に立ち尽くすような心情を描いた歌詞が、しっとりとしたサウンドと相まってリスナーの心に染み渡る。
アルバム総評
Hunting High and Lowは、a-haのポテンシャルを存分に発揮したアルバムであり、彼らが80年代ポップミュージックにおいて重要な存在であることを証明している。アルバム全体がキャッチーでありながらも、感情の深みや音楽的な豊かさを兼ね備えている。シンセポップの枠を超えた多様性が、この作品を永遠に色褪せないものにしている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Songs from the Big Chair by Tears for Fears
同じく80年代のシンセポップの名盤。ドラマチックな構成と詩的な歌詞が共通点。
Dare by The Human League
シンセポップの先駆者によるアルバムで、キャッチーなメロディと革新的なサウンドが楽しめる。
Rio by Duran Duran
華やかなサウンドと洗練されたポップセンスが特徴の一枚。a-haと同じくビジュアル面でも注目を集めた。
Speak & Spell by Depeche Mode
シンセポップの初期の名作で、エレクトロニックサウンドの可能性を広げた一枚。
Behaviour by Pet Shop Boys
感情的な歌詞と洗練されたプロダクションが共通しており、シンセポップ好きにおすすめ。
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