アルバムレビュー:Hungry for Stink by L7

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1994年7月12日
ジャンル: グランジオルタナティヴ・ロックハードロック


概要

『Hungry for Stink』は、L7が1994年に発表した4作目のスタジオ・アルバムであり、前作『Bricks Are Heavy』(1992)で得たメジャーでの成功を経て、よりヘヴィで粗野な音像へと振り切った“原点回帰と深化”のアルバムである。

当時のバンドはLollapalooza ’94の主要アクトとして全米を回るなど、グランジ黄金期の真っただ中で精力的な活動を展開しており、そのテンションが本作全体にみなぎっている。
プロデューサーはGarth Richardson(Rage Against the Machineなどを手がけた)で、音はより厚みを増し、L7史上もっともドライヴ感と重低音に満ちたサウンドが展開されている。

タイトルに含まれる“Stink(悪臭)”とは、抑圧や偽善を振り払う“ロックの臭気”そのものであり、L7が“女だから”“フェミニストだから”とカテゴライズされることに対する苛立ちと、それでも前へ進む意志のメタファーとして機能している。


全曲レビュー

1. Andres

シングルとしてもヒットしたオープニング・トラック。
ミドルテンポのヘヴィなグルーヴに乗せ、「アンドレス、ごめんね」と繰り返す歌詞は、痛みと怒りとジョークがないまぜになったL7らしい一曲。

2. Baggage

精神的・物理的に“重たい荷物”を抱えながらも前に進む姿勢を描いた、スローだがパワフルな楽曲。
リフの反復が中毒性を持つ。

3. Can I Run

“逃げてもいいの?”という問いかけに込められた不安と決意。
フェミニズム的視座で語られる“逃避”が、新たな戦いのはじまりとして提示される。

4. The Bomb

爆発的なギターリフと、暴走するビート。
まさに“爆弾”のような緊張感に満ちたトラックで、ライヴでは定番。

5. Questioning My Sanity

スラッジ〜ドゥーム寄りの重い構成で、精神的な追い詰められ感をそのまま音に変換。
“狂ってるのは私か、それとも世界か”というテーマがリリックに込められている。

6. Riding with a Movie Star

サーフロックの影を感じさせる軽やかな曲調。
だが“セレブと並走する私”という設定の中に、不安定さと諧謔がちらつく。

7. Stuck Here Again

アルバム中もっともキャッチーなメロディを持つシングル曲。
日常に閉じ込められた息苦しさと、それでも叫びたい衝動をエネルギッシュに鳴らす。

8. Fuel My Fire

のちにThe Prodigyがカバーすることでも知られる一曲。
L7版は原始的な怒りとノイズにまみれた、荒くれたガレージ・パンクとして機能している。

9. Freak Magnet

“変人ばかり引き寄せる”というタイトルからしてアイロニカルな視点がにじむ。
しかし、その変人たちへの共感も込められているように感じられる。

10. She Has Eyes

“彼女の目”に見つめられることの恐怖と魅惑。
ミディアムテンポの曲ながら、妙に緊張感を保ったまま展開する。

11. Shirley

短くノイジーで、歌詞もミニマルな実験曲。
突き放すようでいて、不思議と耳に残る。

12. Talk Box

L7の中ではやや異色のギミック的楽曲。
エフェクト処理された声と硬質なギターがぶつかり合う。

13. Whispering Sand

アルバムを静かに閉じるインストゥルメンタル的トラック。
“ささやく砂”という詩的なタイトルとは裏腹に、ざらついた質感が残る。


総評

『Hungry for Stink』は、L7がメジャーでの評価とグランジの飽和を経たうえで、自らのコアを再確認するように放った“第二のデビュー作”のような作品である。

サウンドは極めてヘヴィかつ直線的。
リフは反復し、リズムは鈍重に殴りつけるように刻まれ、ボーカルは叫びというより呪詛に近い。
しかし、そのすべてが痛快で、解放的で、どこか笑えるのはL7ならではだ。

このアルバムは、90年代中期の混乱と矛盾、商業性と政治性の葛藤を、音と汗と叫びでまるごと飲み込んで吐き出したような塊である。
そしてその“臭気”こそが、ロックの生命線でもあるのだ。


おすすめアルバム

  • Melvins / Houdini
     L7のスラッジ的側面をさらに深めた音像を体験できる重量級作品。

  • The Gits / Enter: The Conquering Chicken
     怒りと情熱をリアルに詰め込んだ、女性ヴォーカルのもうひとつのグランジ系統。

  • Bikini Kill / Reject All American
     L7のハードさとは異なる、ラディカルで直接的なフェミニズム・パンク。

  • Hole / Celebrity Skin
     よりポップで光沢のある表現に向かった90年代末の女性ロック代表作。

  • Soundgarden / Superunknown
     同時代のグランジ男性バンドとの対比においても、本作と響き合う深みを持つ。

ファンや評論家の反応

『Hungry for Stink』は前作ほどのセールスこそ記録しなかったが、批評家からは“最もヘヴィで筋肉質なL7”として高く評価された。

特に「Andres」や「Stuck Here Again」はライブでも定番化し、現在に至るまでファンの間で根強い人気を誇る。

MTV的な脚光が後退する中で、L7はこのアルバムで“売れること”ではなく“鳴らすこと”を選んだ
その選択は、ロックが本来持つべき信念の在り方を、あらためてリスナーに突きつけた。


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