発売日: 2017年3月17日
ジャンル: インディーロック、アートロック、ダンスロック
『Hot Thoughts』は、Spoonの9枚目のスタジオアルバムであり、バンドの音楽性がさらなる進化を遂げた作品だ。このアルバムでは、エレクトロニックな要素やファンク、ダンスロックの要素を大胆に取り入れ、これまでのギターベースのサウンドから、より広がりを持ったサウンドスケープが展開されている。デヴィッド・ボウイやプリンスの影響を感じさせるポップでエクスペリメンタルな楽曲が多く、ブリット・ダニエルのヴォーカルはさらに洗練され、Spoonのサウンドが進化を続ける様子を見せている。アルバム全体に漂うダークでセクシーな雰囲気が、タイトル通り「熱い思考」を体現している。
各曲ごとの解説:
- Hot Thoughts
アルバムのタイトル曲で、ファンキーなリズムとダンサブルなビートが特徴。シンセサウンドとギターリフが融合し、Spoonらしいミニマルさを保ちながらも、エネルギッシュで高揚感のある曲に仕上がっている。ダニエルのヴォーカルもセクシーで、アルバム全体のトーンをセットする。 - WhisperI’lllistentohearit
幻想的なシンセサウンドが印象的な楽曲で、ゆったりとしたリズムの中に緊張感が漂う。ダニエルのヴォーカルは控えめながらも、曲の雰囲気をしっかりと支えており、ドラマチックな展開が聴きどころとなっている。 - Do I Have to Talk You Into It
ピアノリフが中心となり、ダンサブルなビートが展開されるファンキーな一曲。ダニエルのヴォーカルは力強く、リズムの反復が中毒性を生み出している。シンプルな構成ながらも、楽曲が持つエネルギーが強いインパクトを与える。 - First Caress
アップテンポなナンバーで、軽快なリズムとキャッチーなメロディが耳に残る。ファンキーなベースラインが曲全体を引き締め、ポップな要素がSpoonの音楽性に新鮮さをもたらしている。 - Pink Up
実験的なサウンドスケープが広がる、ミッドテンポの楽曲。シンセサイザーとパーカッションがメインで展開され、ジャズ的な要素が色濃く反映されている。繊細でリズムが複雑な構成が、アルバム全体の中でも異彩を放つ一曲だ。 - Can I Sit Next to You
ダンサブルでファンキーなサウンドが前面に出た曲。シンセとベースラインがリズムを支え、ダニエルのクールなヴォーカルが楽曲を盛り上げる。クラブ的な雰囲気も感じられる一曲で、アルバムの中でも特にノリの良いトラック。 - I Ain’t the One
メランコリックなメロディとゆったりとしたテンポが特徴の楽曲。シンプルなピアノのフレーズと控えめなヴォーカルが、内省的な雰囲気を醸し出しており、アルバム全体の中での静寂の瞬間を提供する。 - Tear It Down
軽快なリズムと明るいメロディが特徴のポップな曲。ホーンセクションが加わり、サウンドに豊かさが生まれている。前向きな歌詞とエネルギッシュな演奏が、アルバム全体の流れに活気を与えている。 - Shotgun
強烈なギターリフとリズミカルなドラムが目立つアップテンポのロックナンバー。勢いのあるサウンドとダニエルの攻撃的なヴォーカルが曲に迫力を与え、ライブ感あふれるトラックに仕上がっている。 - Us
アルバムを締めくくるインストゥルメンタルに近いトラックで、サックスの音色がジャズ的な雰囲気を作り出している。美しいメロディとゆったりとしたリズムが、アルバム全体の締めとして穏やかに余韻を残す。
アルバム総評:
『Hot Thoughts』は、Spoonがエレクトロニックな要素やファンク、ダンスロックを取り入れ、新たな音楽的領域に踏み出したアルバムだ。従来のミニマリズムを維持しつつも、より広がりのあるサウンドと大胆な実験性が加わり、バンドの進化を感じさせる。特に「Hot Thoughts」や「Can I Sit Next to You」のようなファンキーでダンサブルな楽曲は、これまでのSpoonのスタイルを刷新するものであり、一方で「I Ain’t the One」や「Us」のような静かな曲では、感情的な深みを堪能できる。『Hot Thoughts』は、Spoonが新たなチャレンジに挑んだ意欲作であり、彼らの音楽的柔軟性を証明するアルバムだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Let’s Dance by David Bowie
エレクトロニックな要素とファンクの融合が印象的なアルバム。Spoonの『Hot Thoughts』のダンサブルな側面に共鳴する作品。 - Random Access Memories by Daft Punk
ディスコとファンクのエッセンスを取り入れた名作。エレクトロニックなサウンドと生演奏の融合が、『Hot Thoughts』のファンに響く。 - Blackstar by David Bowie
エクスペリメンタルなサウンドとジャズ的な要素が強いアルバム。『Hot Thoughts』の冒険的なスタイルを楽しんだリスナーにおすすめ。 - Talking Heads: 77 by Talking Heads
ポストパンクとアートロックの融合が楽しめるアルバム。Spoonの実験的な側面とリズムの多彩さを愛する人に最適。 - St. Vincent by St. Vincent
アートロックとエレクトロポップが融合した作品。Spoonの『Hot Thoughts』で感じたダークでセクシーな雰囲気が好きな人におすすめの一枚。
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