発売日: 2019年9月27日
ジャンル: サイケデリックロック、ネオサイケデリア
Templesの3作目となる「Hot Motion」は、前作「Volcano」からのエレクトロポップ的な要素を抑え、より生々しいサイケデリックロックに回帰したアルバムである。60年代のクラシックなサイケロックへのオマージュが多く見られ、シンセサイザーの代わりにギターが再び主役に返り咲いている。幻想的なメロディ、ギターのリフ、そして神秘的な雰囲気が全体を包み込み、Templesらしいカラフルで深みのあるサウンドを再び提示している。抑えられたポップさと、よりダークでミステリアスなトーンが融合し、アルバム全体に統一感を与えている。
各曲ごとの解説:
- Hot Motion
アルバムタイトル曲「Hot Motion」は、シンプルで力強いギターフックが特徴のトラック。テンションの高いリズムとエネルギッシュなヴォーカルが、聴く者を一気に引き込む。サイケデリックなムードとキャッチーなメロディが見事に融合し、アルバムの導入としてふさわしい曲となっている。 - You’re Either on Something
アップテンポなリズムと軽快なメロディが特徴的なこの曲は、歌詞に不確実性や疑念が漂い、どこか緊張感のある雰囲気を持つ。ギターのリフとシンセの控えめなサウンドがバランス良く配置され、ダイナミックなサウンドが印象的。 - Holy Horses
「Holy Horses」は、サイケデリックなリバーブのかかったギターと、浮遊感のあるメロディが特徴のトラック。複雑なアレンジが光り、どこか夢の中にいるような幻想的な雰囲気を持っている。歌詞は神秘的なイメージが豊富で、深層的なテーマが漂う。 - The Howl
重厚なベースラインとギターのリフが、この曲のダークなエネルギーを作り出している。「The Howl」は、感情の爆発と抑圧の緊張をテーマにしており、力強いボーカルとリズムセクションが一体となって迫力あるサウンドを生み出している。 - Context
「Context」は、メロディアスなサイケポップトラックで、バンドの明るい一面を感じさせる。豊かなギターのハーモニーと軽やかなリズムが、リスナーを包み込むように展開され、アルバム全体の中でもリラックスした雰囲気を提供している。 - The Beam
この曲は、不思議で神秘的な雰囲気が漂っており、特に歌詞が抽象的で多義的なイメージを持つ。シンセサイザーとギターが複雑に絡み合い、壮大でスペーシーなサウンドスケープを生み出している。バンドの実験的な側面が強調された楽曲だ。 - Not Quite the Same
シンプルでキャッチーなメロディを持つ「Not Quite the Same」は、ギターポップ的な要素が感じられる一曲。前向きなエネルギーが溢れており、ポップなフックが印象的。アルバムの中で一息つける軽やかなトラックだ。 - Atomise
「Atomise」は、深いリバーブとゆったりとしたリズムが際立つ曲で、ミステリアスで幻想的な雰囲気を醸し出している。歌詞は崩壊や分解をテーマにしており、ダークなサウンドが不安定な心情を反映しているように感じられる。 - It’s All Coming Out
エネルギッシュで明るいトーンの曲で、ギターリフが曲全体を支えている。ヴォーカルも力強く、テンポの速いビートがテンションを保ちながらも、ポップな感覚が際立っている。 - Step Down
「Step Down」は、力強いギターとシンセサウンドが組み合わさり、クラシックなロックと現代的なサイケデリアをうまく融合させている。歌詞は再び抑圧された感情や社会的なテーマに触れており、緊張感を持ったトラック。 - Monuments
アルバムの最後を飾る「Monuments」は、壮大でダイナミックな構成が特徴のトラック。ゆっくりとしたリズムと徐々に盛り上がるギターが、アルバムの締めくくりにふさわしい感動的なフィナーレを演出している。
アルバム総評:
「Hot Motion」は、Templesがよりダイナミックでエネルギッシュな方向性を探求し、ギターサウンドに焦点を戻した力強いアルバムである。前作「Volcano」でのポップな要素を抑え、クラシックなサイケデリックロックの影響を強く感じさせるトラックが多い。また、歌詞には内省的で神秘的なテーマが多く、アルバム全体に一貫したダークなトーンが流れている。「Hot Motion」や「The Howl」などの強烈なトラックがアルバムの中核を成し、バンドの新たな進化が明確に感じられる作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- King Gizzard & the Lizard Wizard by Nonagon Infinity
激しいギターリフとエネルギッシュなサウンドが共通しており、「Hot Motion」のサイケデリックな側面が気に入った人におすすめ。 - Lonerism by Tame Impala
サイケデリックなエレメントとキャッチーなメロディが融合した作品で、ギターフォーカスのサウンドを好むリスナーに最適。 - The Holy Bible by Manic Street Preachers
ダークで内省的なテーマとエネルギッシュなギターロックが、「Hot Motion」と共通する点が多い。 - The Soft Bulletin by The Flaming Lips
実験的なサウンドとサイケデリックな雰囲気が魅力で、幻想的な音作りが「Hot Motion」と響き合う。 - Innerspeaker by Tame Impala
サイケデリックロックのモダンな再解釈を感じさせるアルバムで、特にギターサウンドの豊かさが「Hot Motion」と共通している。
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