発売日: 1975年11月10日
ジャンル: パンク・ロック、アート・ロック、プロトパンク
Horsesは、パティ・スミスが1975年にリリースしたデビューアルバムであり、パンク・ロック史における重要な作品として広く認識されている。このアルバムは、ロックと詩的な表現が融合した独自のスタイルで、スミスの鋭い歌詞と反骨精神が全編を通じて響き渡る。プロデューサーにジョン・ケイル（ヴェルヴェット・アンダーグラウンド）を迎え、シンプルなギターリフとビートにスミスの情熱的で自由奔放なボーカルが重なり、どこか荒削りで力強いエネルギーが感じられる。スミスの詩的なリリックは時に挑発的であり、自己探求や自由、アイデンティティのテーマが作品全体にわたって展開されている。リリースから数十年が経過した今もなお、Horsesは多くのアーティストやファンに影響を与え続ける革新的なアルバムとして評価されている。
各曲解説
- Gloria
ヴァン・モリソンが作詞した「Gloria」を大胆にアレンジし、スミス流の情熱的な詩が加えられたオープニングトラック。冒頭の「Jesus died for somebody’s sins, but not mine」という衝撃的なフレーズで一気に引き込まれ、神秘と反逆が交錯するスミスの独自のスタイルが全開で展開される。 - Redondo Beach
レゲエ風のリズムと軽快なメロディが印象的な一曲で、歌詞には切ないストーリーが込められている。友人を喪失した痛みと罪悪感を描きつつも、どこか明るさが残るサウンドが魅力的。 - Birdland
即興的な要素を多く含む9分にわたる壮大な楽曲で、詩的で幻想的な歌詞が印象的。スミスのボーカルは囁きや叫びを行き来し、夢と現実が混ざり合うような不思議な体験をリスナーに与える。 - Free Money
貧困とそれに対する夢をテーマにしたパワフルな曲。希望と絶望が入り混じる歌詞と激しいサウンドが、スミスの強いメッセージを引き立てている。自由に生きることの難しさとそれに対する切実な思いが表現されている。 - Kimberly
スミスの妹への愛情と保護の念が込められた一曲で、神秘的なメロディと歌詞が特徴的。スミスの柔らかいボーカルが、親しみやすいサウンドと共に、聴く者に温かさを伝えている。 - Break It Up
夢と現実が交錯する抽象的な歌詞が印象的で、ジム・モリソンへの敬意が込められた一曲。ギターリフと力強いボーカルが、スミスの内面を激しく描写し、聴き手を引き込む。 - Land: Horses/Land of a Thousand Dances/La Mer(de)
即興的でエネルギッシュな9分の組曲で、「Horses」としてアルバムの象徴的な存在。物語性と詩的な表現が混在し、リズムの変化とともにスミスのパフォーマンスが最高潮に達する。象徴的なフレーズ「Horses, horses, horses」が繰り返され、圧倒的なカタルシスが生まれる瞬間だ。 - Elegie
アルバムのラストを飾る静かなバラードで、友人や過去への追悼がテーマ。切なく美しいメロディとスミスの静かなボーカルが、深い感情を呼び起こし、静かにアルバムを締めくくる。
アルバム総評
Horsesは、パティ・スミスの詩的才能とロックへの情熱が見事に融合したデビュー作であり、パンクとアートロックの境界を大胆に押し広げた革新的な作品である。彼女の鋭い言葉と力強いボーカル、そしてジョン・ケイルのプロデュースが作り出すサウンドは、ロックミュージックを新たな次元に引き上げた。特に「Gloria」や「Land: Horses」は、スミスの音楽と詩が持つ自由奔放なエネルギーを象徴しており、聴く者に強烈な印象を与える。彼女が描く人間の複雑な感情と、社会への反抗心は、今も多くのアーティストやリスナーに影響を与え続け、Horsesは時代を超越した名盤として語り継がれている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Velvet Underground – The Velvet Underground & Nico
パンクとアートロックのルーツとして知られるアルバム。暗く詩的な歌詞と実験的なサウンドが、Horsesと共鳴する。
Television – Marquee Moon
ニューヨーク・パンクシーンで活躍したテレヴィジョンの代表作で、ギターの絡み合いと鋭いリリックが特徴。スミスのファンにも響くはず。
Iggy Pop – The Idiot
パンクの先駆者であるイギー・ポップによる、ダークで内省的なソロ作品。パティ・スミスと同じく、ロックの枠を超えた個性的な表現が魅力。
Blondie – Parallel Lines
パティ・スミスと同時期に活躍したブロンディの名盤で、パンクとポップが融合したサウンドが楽しめる。強いメロディが印象的。
PJ Harvey – Dry
内省的で強烈な歌詞とエモーショナルなボーカルが特徴のデビューアルバム。パティ・スミスの影響を受けたサウンドと表現が光る。
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