発売日: 2019年5月10日
ジャンル: インディーロック、ローファイ、ソフトロック
『Here Comes the Cowboy』は、Mac DeMarcoの4thアルバムであり、彼の音楽スタイルをさらにミニマルにし、静かでリラックスした雰囲気を追求した作品だ。前作『This Old Dog』で見られた内省的なテーマを引き継ぎつつ、アコースティックギターやシンプルなシンセを中心に、よりミニマルなアプローチが取られている。「カウボーイ」というテーマがアルバム全体に貫かれており、ノスタルジックで牧歌的なムードが漂う。Mac特有の気だるいボーカルとローファイなサウンドは健在だが、過去の作品に比べて、感情や音の層がより控えめで、内省的なアルバムとなっている。
各曲ごとの解説:
- Here Comes the Cowboy
タイトル曲で、アルバム全体のテーマを象徴するようなシンプルでミニマルなトラック。ゆったりとしたテンポと、反復するベースラインが中心で、Macの気だるいボーカルが静かに響く。イントロとして非常に控えめで、アルバムの静かなトーンを示している。 - Nobody
シングルとしてもリリースされたこの曲は、孤独や疎外感をテーマにしたメランコリックなナンバー。軽やかなギターと繊細なシンセサウンドが曲全体を支え、Macの内省的な歌詞が強く響く。ゆっくりと進行するメロディが、孤独感を際立たせている。 - Finally Alone
一人でいることの安らぎを描いた楽曲。リラックスしたメロディと、ギターとシンセが絡み合い、静かながらも温かみのあるサウンドスケープが広がる。歌詞はシンプルだが、Macの感情的なボーカルが深い印象を残す。 - Little Dogs March
軽快で親しみやすいリズムが特徴の楽曲。メロディはシンプルで、歌詞にはユーモラスな要素も感じられるが、全体的にはどこか哀愁が漂っている。短いながらも、アルバム全体のテーマにフィットした曲だ。 - Preoccupied
シンプルなシンセサウンドと、ゆったりとしたビートが特徴のトラック。歌詞は、心の中にある不安や気になることに囚われた状態を描いており、Macの穏やかなボーカルが曲の静かなムードを保っている。 - Choo Choo
アルバムの中で異彩を放つファンキーなトラック。シンプルなビートに、リズミカルなギターと遊び心のあるボーカルが重なり、実験的な一面が表れている。リズムが前面に出た曲で、Macの遊び心が感じられる一曲だ。 - K
彼女への思いを込めた、穏やかで感情的なバラード。シンプルなアコースティックギターの伴奏と、優しく囁くようなボーカルが特徴的で、非常に個人的で親密な雰囲気を醸し出している。 - Heart to Heart
友情や愛情をテーマにした、ゆったりとしたテンポの楽曲。シンセが曲の大部分を支え、リズムは控えめでありながらもリラックスしたムードを作り出している。シンプルな構成の中に、感情の深みが込められている。 - Hey Cowgirl
ノスタルジックな雰囲気を持つミッドテンポのトラック。牧歌的なイメージを想起させるサウンドが、カウボーイというテーマをさらに強調している。Macの軽やかなボーカルとギターが、曲全体に穏やかで落ち着いた雰囲気を与えている。 - On the Square
シンセサウンドがリードする、ドリーミーな楽曲。リズムはゆったりとし、浮遊感のあるサウンドがアルバムの中でも特に印象的。歌詞は抽象的で、感情の揺れを表現しており、アルバムの静かな流れを保ちながらも深い印象を残す。 - All of Our Yesterdays
過去を振り返り、時間の流れや変化をテーマにした楽曲。メロウなメロディとシンプルなギターが、歌詞のノスタルジーを強調している。Macのボーカルは静かで控えめだが、過去への思いが込められた曲だ。 - Skyless Moon
切なさが漂うバラードで、孤独感や内省的な思いを描いている。アコースティックギターとシンプルなアレンジが曲全体を支え、Macの静かなボーカルが感情を抑えた形で表現されている。 - Baby Bye Bye
アルバムを締めくくるトラックで、静かなギターサウンドに乗せて別れを歌っている。最後にシンセやエレクトロニカ的な要素が加わり、リズムが複雑になるなど、Macの実験的なアプローチが感じられるフィナーレだ。
アルバム総評:
『Here Comes the Cowboy』は、Mac DeMarcoがよりミニマルで内省的な方向に進化した作品だ。前作『This Old Dog』の内省的なテーマを引き継ぎながらも、音の層がさらにシンプルになり、リラックスした雰囲気が強調されている。カウボーイというモチーフは、アルバム全体に漂う孤独感やノスタルジアを象徴しており、Macの飄々としたスタイルの中にも、深い感情や思索が込められている。ローファイなサウンドと控えめなアレンジが彼の独自の魅力を際立たせる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- This Old Dog by Mac DeMarco
『Here Comes the Cowboy』と同様に、内省的でアコースティックなトーンが中心のアルバム。ミニマルで感情的なアプローチが共通している。 - Aerial by Kate Bush
ミニマルで牧歌的なサウンドと、深い感情を描いた歌詞が共鳴するアルバム。内省的で静かなムードを持つリスナーにおすすめ。 - I Love You, Honeybear by Father John Misty
ウィットに富んだ歌詞とメロウなサウンドが特徴のアルバム。Mac DeMarcoのユーモラスで感情的なスタイルに通じる。 - Carrie & Lowell by Sufjan Stevens
家族や時間の流れに対する内省的なテーマが共通する、感動的なアコースティックアルバム。 - Heaven or Las Vegas by Cocteau Twins
ドリーミーで浮遊感のあるサウンドが印象的な作品。『Here Comes the Cowboy』の控えめで夢幻的なトーンに通じる部分がある。
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