発売日: 1988年6月20日
ジャンル: R&B、ニュー・ジャック・スウィング
ニュー・ジャック・スウィングの幕開け――New Editionの再構築と進化
1988年にリリースされた『Heart Break』は、New Editionのキャリアの中でも特に重要な作品であり、ニュー・ジャック・スウィング時代の到来を告げた画期的なアルバムである。本作は、ボビー・ブラウンの脱退後にジョニー・ギルが新メンバーとして加入し、グループのヴォーカルスタイルがより洗練されたことが大きな特徴となっている。
プロデューサーにはジャム＆ルイス（Jimmy Jam & Terry Lewis）を迎え、これまでのポップ寄りのR&Bから、より成熟したサウンドへとシフト。ダンサブルなビート、エッジの効いたシンセ、洗練されたヴォーカルアレンジが融合し、New Editionはアイドルグループから本格派R&Bグループへと生まれ変わった。
シングル「If It Isn’t Love」「Can You Stand the Rain」「You’re Not My Kind of Girl」などが大ヒットし、New Editionは80年代後半のR&Bシーンにおいて確固たる地位を築いた。
全曲レビュー
1. Introduction
短いインストゥルメンタルでアルバムの幕を開ける。ジャム＆ルイスによる洗練されたプロダクションが、これまでのNew Editionとは違うことを予感させる。
2. That’s The Way We’re Livin’
ファンクの要素を取り入れたアップテンポなオープニングトラック。グループの新しい方向性を示すエネルギッシュな一曲。
3. Where It All Started
ダンサブルなビートが特徴的なニュー・ジャック・スウィングの王道ナンバー。ジョニー・ギルのソウルフルなボーカルが加わったことで、グループの厚みが増している。
4. If It Isn’t Love
本作の代表曲のひとつ。キャッチーなメロディと軽快なビートが印象的な楽曲で、失恋をテーマにした切ない歌詞が多くのリスナーの共感を呼んだ。今でもNew Editionのライブで欠かせない楽曲。
5. N.E. Heart Break
アルバムタイトルにもなっている楽曲で、グループの新たな時代を象徴するアグレッシブなナンバー。リズミカルなサウンドとダイナミックなヴォーカルが融合し、ダンスチューンとしても人気が高い。
6. Crucial
シンプルなビートに乗せて、グループの美しいハーモニーが際立つミッドテンポのR&Bナンバー。洗練されたアレンジが心地よい。
7. You’re Not My Kind of Girl
スムーズなグルーヴとジャム＆ルイスらしいシンセサウンドが特徴的な楽曲。歌詞は、恋愛関係における価値観の違いを描いたもの。
8. Superlady
ファンクとR&Bが融合した楽曲。メンバーそれぞれのボーカルがバランスよく活かされたアレンジが特徴的で、ジョニー・ギルの力強い歌声が特に映える。
9. Can You Stand the Rain
アルバムの中でも最も感動的なバラード。愛と試練をテーマにした歌詞と、メンバーのエモーショナルなハーモニーが見事に融合し、New Editionのキャリアの中でも屈指の名曲となった。
10. Competition
アップビートなR&Bナンバーで、ニュー・ジャック・スウィングのグルーヴが全開。リズムの強調されたアレンジが特徴的。
11. Boys To Men
この曲は後にBoyz II Menというグループ名の由来となった楽曲でもあり、若者が成長し、大人へと変わる過程を歌った感動的なバラード。New Editionの進化を象徴するような一曲。
総評
『Heart Break』は、New Editionがアイドル的なボーイズグループから、成熟したR&Bグループへと変貌を遂げた作品であり、ニュー・ジャック・スウィングというジャンルの発展にも大きな影響を与えた。
ジョニー・ギルの加入により、グループのヴォーカル力が飛躍的に向上し、ジャム＆ルイスのプロダクションによってサウンドがより洗練されたものになっている。「If It Isn’t Love」「Can You Stand the Rain」「You’re Not My Kind of Girl」などの楽曲は、今なお80年代R&Bのクラシックとして愛されている。
本作の成功により、New Editionは後のBell Biv DeVoeやJohnny Gill、Bobby Brownといった個々のメンバーのソロキャリアへと繋がり、90年代のR&Bシーンに多大な影響を与えた。
ニュー・ジャック・スウィングや80年代後半のR&Bを語る上で欠かせない名盤であり、New Editionの歴史の中でも最高傑作のひとつと言える。
おすすめアルバム
- Bobby Brown – Don’t Be Cruel (1988)
- New Edition脱退後、ボビー・ブラウンがニュー・ジャック・スウィングで大成功を収めたアルバム。
- Bell Biv DeVoe – Poison (1990)
- New Editionのメンバーが結成したユニットで、ニュー・ジャック・スウィングをさらに進化させた作品。
- Guy – Guy (1988)
- Teddy Rileyが手がけたニュー・ジャック・スウィングの代表的なアルバム。
- Boyz II Men – Cooleyhighharmony (1991)
- New Editionの影響を強く受けた90年代R&Bボーイズグループのデビュー作。
- Keith Sweat – Make It Last Forever (1987)
- ニュー・ジャック・スウィングの初期を代表する、スムーズなR&Bアルバム。
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- ニュー・ジャック・スウィングの初期を代表する、スムーズなR&Bアルバム。
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