アルバムレビュー:Heart Like a Sky by Spandau Ballet

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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発売日: 1989年9月18日(UK限定)
ジャンル: ソフトロック、アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)、ポップ・ソウル、ブルー・アイド・ソウル

概要

『Heart Like a Sky』は、Spandau Balletが1989年にリリースした6作目のスタジオ・アルバムであり、80年代を象徴した彼らが“時代の終わり”とともに作り上げた、静かなる終章である。
前作『Through the Barricades』(1986年)で社会的テーマを大胆に取り入れた彼らは、本作でよりパーソナルで成熟した表現へと移行。
しかし同時に、時代の音楽的トレンドの変化(アシッド・ハウスやニュー・ジャック・スウィングなど)とバンド内部の摩擦が、作品全体にどこか“儚さ”と“過渡期の息づかい”を刻んでいる。

このアルバムはイギリスではリリースされたものの、アメリカでは未発売となり、商業的には成功を収めたとは言い難い。
だがその内容には、ロマンティックな理想と現実の間で揺れる“大人の抒情”と“控えめな気高さ”があり、Spandau Balletの最後の純正ラインナップによる作品として、リスナーの心に静かに残り続けている。

プロダクションにはGary KempとTony Swainが携わり、煌びやかなサウンドよりも、ソウルフルでメロウな空気感を重視したナチュラルな音像が特徴。
豪華さや派手さではなく、“少しだけ立ち止まって語りかける”ような、親密なポップスとしての手触りが魅力である。

全曲レビュー

1. Be Free with Your Love

アルバムのリード・シングル。
ミディアムテンポのAOR風ポップで、「愛は自由なものであるべきだ」というメッセージを、優しくも説得力あるメロディで表現する。
サックスとギターのバランスもよく、バンドの円熟味を感じさせる1曲。

2. Crashed into Love

ややシンセ寄りのビート感がありつつも、トニー・ハドリーのヴォーカルが持つエモーショナルな質感が全体を包み込む。
「突然の恋がすべてを変える」というテーマが、柔らかな情熱とともに描かれる。

3. Big Feeling

感情の爆発というより、じわじわと湧き上がる“感覚の大きさ”を歌った内省的ナンバー。
ホーンとストリングスのアレンジは控えめで、リリックの親密さを引き立てる。

4. A Matter of Time

時間の経過と変わりゆく感情をテーマにした楽曲。
リズムはゆったりとしながらもメロディラインははっきりしており、バンド後期らしい哀愁を帯びたソングライティングが際立つ。

5. Motivator

アルバム中もっともアクティヴなトラックのひとつ。
軽快なギターリフとファンキーなベースラインが特徴で、ポジティブなエネルギーを放っている。
それでも全体のトーンはどこか落ち着いており、Spandau Balletらしい上品さは失われていない。

6. Empty Spaces

“何もない空間”というタイトルが象徴する通り、心の欠落や孤独をテーマにした穏やかで内省的なバラード
ボーカルとピアノを中心としたシンプルな構成が、リスナーの感情にじんわりと染み入る。

7. Windy Town

ややアメリカン・ブルー・アイド・ソウル的な香りを持つ、開放的なナンバー。
風の強い町=人生の嵐の中に立つ自分、という比喩が効いた歌詞と、スムースな演奏が心地よい。

8. A Handful of Dust

アルバムの中でも最も文学的・詩的な楽曲。
T.S. Eliotの『荒地』を想起させるタイトルにふさわしく、失われたもの、崩れゆく関係性をしみじみと歌い上げる。
トニー・ハドリーの包容力ある歌声が特に映える。

9. Heart Like a Sky

タイトル曲にして、アルバムのテーマそのものを象徴する抒情的バラード。
“空のような心”は、広さ、空虚さ、そして自由の象徴。
メロディは優しく開かれており、ラストにふさわしい開放感と余韻を残す。

総評

『Heart Like a Sky』は、Spandau Balletというバンドが80年代を生き抜き、スタイルから内面へと語り口を変えていった最後の姿を映すアルバムである。
時代性からすればやや地味で、かつ商業的成功からは遠ざかったものの、本作には“老成ではなく、静かなる成熟”とでも呼ぶべき表現の深みがある。

派手な衣装も、装飾的なホーンセクションもない。
だが、ここには人間関係、時間、記憶、孤独といった、より普遍的で内なる世界と向き合う意志があり、Spandau Balletが単なるファッショナブルな80sバンドではなかったことを示している。

そしてこの作品を最後に、オリジナルラインナップでの活動は事実上終了する。
『Heart Like a Sky』は、喧騒の時代を駆け抜けた5人が、静かな空の下に置いた“感情の手紙”のような作品なのだ。

おすすめアルバム(5枚)

  • Mike + The Mechanics / Living Years
     親密なリリックとソフトロック的な洗練が共通する、大人のためのポップ。
  • Level 42 / Staring at the Sun
     技巧とメロディのバランス、そして時代への適応に苦闘する姿が重なる。
  • Prefab Sprout / From Langley Park to Memphis
     都会的な詩性と成熟したポップ・アレンジの美しさが響き合う。
  • Climie Fisher / Coming In for the Kill
     80年代後半のAOR的空気を持つ、切なさと洗練が共存する一枚。
  • Tears for Fears / The Seeds of Love
     音楽的成熟と人間的誠実さを追求した、バンドの“静かな野心”が共通。

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