1. 歌詞の概要
「Have It All」は、Jason Mrazが2018年にリリースしたアルバム『Know.』のリードシングルであり、彼のポジティブで希望に満ちたメッセージが全面に込められた楽曲である。明るく軽快なリズム、祝祭的なコーラス、そして人生への祝福を詰め込んだような歌詞が印象的で、Mrazらしい“善意の音楽”が全開に広がっている。
この曲のメッセージは明快だ。あなたの人生が愛と成功、そして幸せに満ちたものでありますように——。Mrazはこの願いを「Have It All（すべてを手にしてほしい）」という一言に凝縮し、聞く者に対して惜しみなくエールを送っている。具体的には「願いが叶うように」「失敗から学べるように」「思いやりを忘れないように」といった、人生のさまざまな場面に寄り添うメッセージが列挙され、まるで“現代の祝詞”のような趣きさえ感じられる。
リリース当時、Jason Mrazはこの曲について「これは希望のマントラだ」と語っており、自己啓発的でありながらも押し付けがましくなく、聴き手の心に寄り添うような優しさを宿している。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Have It All」は、Jason Mrazが2012年にミャンマーを訪れた際に仏教の僧侶から贈られた言葉「Tashi Delek（チベット語で“あなたに幸運がありますように”の意）」からインスピレーションを得て作られた楽曲である。Mrazは当時、この言葉がもつ祈りのような響きに心を打たれ、音楽を通して同じような気持ちを多くの人に届けたいと感じたという。
また、世界中が政治的・社会的に分断を深めるなか、「Have It All」は“希望”という普遍的で非政治的な感情をテーマとし、誰もが共感できるエネルギーを音楽に昇華した作品でもある。戦争や災害、個人の苦悩や挫折に直面している人々が、この曲を聴くことで少しでも心を明るくできるように——。そうした願いが、楽曲全体に込められている。
MVには、Mrazの故郷であるカリフォルニア州サンディエゴの子どもたちや学生たちが出演し、音楽とダンス、笑顔が満ちあふれる内容となっている。日常の中にある小さな喜びや祝福を讃えるこの作品は、まさに「生きることの賛歌」とも言えるだろう。
3. 歌詞の抜粋と和訳
この曲の歌詞は、まるで誰かに宛てた願いの手紙のように綴られている。以下にその一部を抜粋し、和訳を添えて紹介する。
May you have auspiciousness and causes of success
あなたに幸運と成功の因果がありますようにMay you have the confidence to always do your best
常にベストを尽くせる自信がありますようにMay you take no effort in your being generous
優しさを自然に表現できますようにSharing what you can, nothing more, nothing less
できる範囲で分け合えるように、それ以上でも以下でもなく
この導入部では、仏教的な祝福の言葉と現代的な願いが交差しながら、聴き手の人生に寄り添う祈りのようなフレーズが並ぶ。
I want you to have it all
君にすべてを手にしてほしいんだAll you can imagine
君が思い描くすべてをAll your dreams come true
夢がすべて叶いますようにAll you ever wanted
君がずっと欲しかったものすべてを
繰り返されるこのサビは、シンプルながらも力強く、まるで祝福の言葉を何度も捧げているかのようだ。
歌詞の全文はこちらで確認できる：
Jason Mraz – Have It All Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「Have It All」は、愛と希望、そして“分かち合い”の精神をもって世界と接していこうというJason Mrazの哲学が、ポップソングという形で結晶化された楽曲である。
興味深いのは、この曲が「成功しよう」「勝ち取ろう」といった現代的な成功主義とは一線を画している点だ。それは「競争に勝つこと」ではなく、「自分らしくあれること」「他人とつながること」「困っている人がいたら手を差し伸べること」こそが真の“Have It All”なのだと語っている。
また、この曲には道徳や説教のような堅苦しさがまったくない。むしろその言葉選びは遊び心に満ちており、Jason Mrazのウィットと人懐っこさが全体を柔らかく包んでいる。たとえば“May you get a gold star on your next test”という一節は、学業や努力を讃えつつも、どこか茶目っ気を感じさせるユーモラスな祝福だ。
つまりこの楽曲は、聴き手を評価や成果のプレッシャーから解放し、「あなたはそのままでいい」「そのままのあなたが、もうすでに“すべて”を持っているのかもしれない」という気づきを与えてくれる。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Count on Me by Bruno Mars
無条件の友情と信頼を歌った曲で、Mrazのポジティブなメッセージと共通する温かさを持つ。 - Three Little Birds by Bob Marley
「心配ないさ」という有名なフレーズに象徴されるように、人生を肯定する姿勢が「Have It All」に重なる。 - Good Life by OneRepublic
人生の小さな瞬間に感謝し、今ある幸せを噛みしめる視点が魅力のポップソング。 - You’ve Got the Love by Florence + the Machine
困難の中でも愛に支えられて生きていけるという希望を、壮大なスケールで描いた楽曲。 - Put a Little Love in Your Heart by Jackie DeShannon
他者への思いやりを呼びかける、古き良き時代のポップ・アンセム。現代版の「Have It All」とも言える。
6. “希望のマントラ”としての楽曲
「Have It All」は、Jason Mrazがこの不確かな時代に放った“光のような歌”である。その音楽は、何かを主張するのではなく、ただ「願う」ことで人の心に寄り添う。その姿勢は、宗教的でも政治的でもなく、ただただ“人間的”である。
この曲が放つ祈りのようなメッセージは、聴き手の心にそっと水を差し伸べる。たとえ明日が不安でも、たとえ今日がつらくても、「あなたがあなたらしくいられますように」と優しく背中を押してくれる。
音楽とは何か？ それは、誰かの声になり、誰かの希望となり、誰かの人生の伴奏になることかもしれない。「Have It All」はまさにそんな“寄り添う歌”であり、Jason Mrazが世界に贈った、音のマントラなのだ。
この曲を聴いた後、少しでも「人に優しくしたくなった」「自分を信じたくなった」と感じたなら、それこそが“Have It All”の真の意味なのかもしれない。
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