発売日: 2017年1月20日
ジャンル: バロックポップ、アートロック、オーケストラポップ
カリフォルニア出身のデュオFoxygenがリリースした「Hang」は、彼らのディスコグラフィの中でも最も壮大で野心的なアルバムである。本作はオーケストラアレンジを大々的に取り入れ、サウンドに重厚さと華麗さを加えた一作で、全編を通じて70年代ロックの影響が色濃く反映されている。ボーカルのサム・フランスは、デヴィッド・ボウイやミック・ジャガーを彷彿とさせるようなシアトリカルでカリスマ性あふれる表現を見せ、オーケストラとバンドサウンドが融合した豊かなサウンドスケープを作り出している。
アルバム全体のプロダクションには、ロサンゼルスの「スタジオ・ミュージシャン」たちの力が注がれ、レトロなフィルターを通しつつも豪華で鮮やかな音が鳴り響く。ジョナサン・ラドーのプロデュースとピアノのアレンジが、どの曲にも華麗な味付けを加えており、「Hang」はまるでブロードウェイの舞台を見ているかのような体験をリスナーに提供する。
トラックごとの解説
1. Follow the Leader
アルバムの幕開けを飾る「Follow the Leader」は、ホーンとストリングスが贅沢に使われた一曲で、70年代のグラムロックとソウルミュージックが融合したサウンドが特徴。サムのシアトリカルなボーカルが、リスナーを華やかな世界へと引き込む。
2. Avalon
「Avalon」は、オーケストラが前面に出たバラード風のトラックで、サムの感情的な歌声が際立っている。美しいストリングスとピアノが印象的で、ロマンチックかつドラマチックな雰囲気が漂う。
3. Mrs. Adams
レトロなサウンドが色濃い「Mrs. Adams」は、シンプルなリズムとリフに乗せて、サムが物語性のある歌詞を語りかけるように歌う。ホーンセクションが随所で彩りを加え、曲全体に華やかさが感じられる。
4. America
アルバムの中心的な存在である「America」は、約5分半にわたる壮大なナンバーで、アメリカの栄光と影がテーマとなっている。劇的な転調やテンポの変化が続き、クラシカルなオーケストレーションが迫力を添えている。まるでミュージカルの一幕のような構成が印象的。
5. On Lankershim
ノスタルジックなメロディが流れる「On Lankershim」は、ロサンゼルスの一風景を切り取ったような楽曲。サムの語りかけるような歌声と、温かいストリングスが心地よく、聴き手をロマンチックな旅に連れ出す。
6. Upon a Hill
「Upon a Hill」は、短くも印象的なトラックで、ホーンとピアノがリズムを支え、エネルギッシュな展開が楽しめる。サムのパフォーマンスが目立ち、ブロードウェイの一シーンのような華やかさがある。
7. Trauma
「Trauma」は、メランコリックでシリアスなトーンが印象的な楽曲で、ピアノとストリングスが静かに絡み合う。タルボットのシアトリカルなボーカルが、内面の葛藤や痛みを表現しており、アルバムの中でも特に感情的な一曲だ。
8. Rise Up
アルバムを締めくくる「Rise Up」は、力強くも希望に満ちたナンバーで、まるでフィナーレを飾るかのようなスケール感がある。サムが高らかに歌い上げ、ホーンとストリングスがクライマックスに向かって盛り上がりを見せる。
アルバム総評
「Hang」は、Foxygenが70年代のロックとバロックポップのエッセンスを詰め込んだ、壮大かつ華麗なアルバムである。ブロードウェイのミュージカルやハリウッドのオーケストラ映画を彷彿とさせる豪華なサウンドが、まるで一つの音楽劇を見ているような体験をもたらす。アルバム全体を通して、Foxygenは自分たちのルーツと新たな音楽的な挑戦を見事に融合させ、唯一無二のサウンドを作り上げている。「Hang」は、彼らの音楽の多様性と表現力を最大限に活かし、聴く者を華やかでノスタルジックな音楽の旅へと誘う。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Hunky Dory by David Bowie
Foxygenのシアトリカルでドラマチックなスタイルは、ボウイのこの名盤からの影響が感じられる。華麗なピアノと物語性のあるリリックが共通点。
Goodbye Yellow Brick Road by Elton John
オーケストラとポップの融合が見事に表現されたアルバム。Foxygenの音楽と同じく、華麗さと哀愁が共存している。
What’s Going On by Marvin Gaye
オーケストラを多用しながらも、社会的メッセージが込められた作品。Foxygenの「America」と通じるテーマと壮大なアレンジが魅力。
Songs in the Key of Life by Stevie Wonder
豊かなアレンジと心に響くメロディが特徴のソウル名盤。Foxygenの豪華なサウンドと、人生を歌うメッセージ性が共鳴する。
Pet Sounds by The Beach Boys
バロックポップの金字塔で、美しいハーモニーとオーケストレーションが特徴。Foxygenの繊細なサウンド作りと共通点が多い。
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