発売日: 1969年12月29日
ジャンル: ハードロック、ブルースロック
「赤盤」として語り継がれる、パワートリオの荒々しい進撃
1969年、デビューアルバムOn Timeをリリースしてからわずか4か月後、Grand Funk Railroad（以下GFR）は2ndアルバムGrand Funkを発表した。アルバムジャケットが真っ赤に染められていたことから、ファンの間では「The Red Album」とも呼ばれる本作は、デビュー作以上に骨太なロックンロールを詰め込んだ作品となっている。
この時期のGFRは、まだ商業的な成功を収める前ながら、ライブパフォーマンスが評判を呼び、急速に人気を獲得していた。ウッドストックの翌年、時代はヒッピー文化からハードなロックへと移行しつつあったが、彼らのスタイルはその流れにピタリとはまっていた。レッド・ツェッペリンやディープ・パープルが新たなロックの形を作り始める中で、GFRはより泥臭く、ブルースを基盤にしたパワフルな演奏で勝負をかけていた。
本作もプロデュースはテリー・ナイトが担当。ライブ感を意識した荒削りなサウンドは前作同様だが、より分厚く、バンドとしての一体感が増している。GFRの真骨頂である「シンプルかつ圧倒的なパワー」が存分に発揮され、後に続くアリーナロックの先駆けとも言えるサウンドを確立した。
全曲レビュー
1. Got This Thing On The Move
ヘヴィなギターリフとグルーヴィーなリズムが炸裂する、アルバムの幕開けにふさわしいナンバー。マーク・ファーナーのギターが火を吹き、ベースのメル・サッチャーがうねるようなラインを刻む。まるで暴走する列車のような疾走感があり、ライブでの爆発力が容易に想像できる。
2. Please Don’t Worry
GFRらしい、ブルースロックに根ざしたシンプルな一曲。リズム隊のタイトなグルーヴが心地よく、ファーナーのヴォーカルがエモーショナルに響く。間奏ではギターとベースが絡み合うジャム的な展開を見せ、まるでライブ録音のような生々しさがある。
3. High Falootin’ Woman
軽快なブギー調のナンバーで、GFRのブルースルーツが色濃く反映されている。レッド・ツェッペリンの「Custard Pie」を思わせるようなリフが特徴的で、ファーナーのギターが印象的なスライドプレイを披露する。リズムセクションのタイトさも際立つ一曲だ。
4. Mr. Limousine Driver
シングルカットもされた本作の代表曲のひとつ。ブルースとファンクを融合させたようなグルーヴィーな楽曲で、GFRの多様な音楽性が垣間見える。ドン・ブリューワーのドラムがタイトに刻まれ、ヴォーカルのシャウトが絶妙なアクセントとなっている。
5. In Need
7分近い長尺の楽曲で、サイケデリックな要素とブルースロックが融合した、まさにGFRらしい一曲。イントロのゆったりとした展開から、徐々にテンションを高めていく構成は、後の「I’m Your Captain（Closer to Home）」へと続くドラマチックな作風の原点とも言える。
6. Winter And My Soul
ミドルテンポのブルースナンバーで、どこか哀愁を帯びた雰囲気を持つ。ファーナーのギターが切なく響き、彼の歌声もどこか感傷的だ。サビでは爆発するようなエネルギーを見せるが、基本的には抑制された演奏が光る楽曲。
7. Paranoid
ブラック・サバスの「Paranoid」とは無関係ながら、同じくハードなリフを主体としたヘヴィな楽曲。サッチャーのベースラインが印象的で、全体を引っ張る役割を担っている。ギターとドラムの掛け合いもスリリングで、ライブ向きのアレンジが施されている。
8. Inside Looking Out
アルバムのクライマックスを飾る、10分を超える大作。アニマルズのカバー曲だが、原曲とはまったく異なるアプローチで、GFRらしいヘヴィなアレンジが施されている。ジャムセッション的な展開が多く、各メンバーの演奏力の高さが際立つ。ライブではさらに長尺の演奏が披露されることが多く、GFRの代表的な一曲となっている。
総評
Grand Funkは、デビュー作On Timeの勢いをそのままに、さらにダイナミックな楽曲が詰め込まれた一枚だ。シンプルなリフと圧倒的なグルーヴ、そして生々しいライブ感がアルバム全体を貫いており、GFRの本質を知るには最適な作品と言える。特に「Inside Looking Out」や「Paranoid」などの長尺の楽曲では、ジャムバンドとしての側面も強く、彼らの演奏力の高さが存分に発揮されている。
この時期のGFRは、商業的な成功よりも「とにかく演奏すること」を重視していた時代であり、その純粋なエネルギーがこのアルバムには詰まっている。70年代のハードロックの流れを作った重要な作品のひとつであり、現在でもロックファンには必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Led Zeppelin – I
GFRと同じく、ブルースを基盤にしたハードロックの金字塔。荒々しい演奏とダイナミックな楽曲構成が共通している。 - Mountain – Climbing!
レスリー・ウェスト率いるハードロックバンドの名作。GFR同様、ヘヴィなブルースロックが特徴。 - The James Gang – Rides Again
ジョー・ウォルシュのギターが冴え渡るアメリカン・ハードロックの名盤。GFRファンにはたまらないサウンドが詰まっている。 - Cactus – Cactus
同時期に活動していたアメリカのハードロックバンドで、GFRと並ぶ「野性味溢れる」サウンドが特徴的。 - Humble Pie – Rock On
スティーヴ・マリオット率いる英国のハードロックバンド。ブルースベースのヘヴィなグルーヴがGFRと共通する。
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