
発売日: 2015年4月13日
ジャンル: インディーロック、シンセポップ、ニューウェーブ
煌びやかな都市の幻想と愛の崩壊——The Wombatsの成熟した3rdアルバム
イギリス・リバプールのインディーロックバンド The Wombats が2015年にリリースした3rdアルバム Glitterbug は、ロサンゼルスの華やかな都市の喧騒と、その裏に潜む孤独や幻想の崩壊をテーマにした作品 だ。
前作 This Modern Glitch(2011年)でシンセポップを大きく取り入れた彼らは、本作でさらにその方向性を進化させ、より洗練されたエレクトロニックなサウンドと、シネマティックなストーリーテリングを融合させている。
アルバム全体を通して、恋愛の興奮と苦悩、都会の魅惑と幻滅、刹那的な幸福とその崩壊 というテーマが一貫して描かれており、ポストパンク・リバイバルのエネルギーとニューウェーブの煌びやかなシンセが絶妙にミックスされている。
全曲レビュー
1. Emoticons
ピアノのシンプルなイントロから始まり、次第にビートとシンセが加わるドラマチックなオープニングナンバー。現代の恋愛におけるデジタル依存を皮肉る歌詞 が特徴的で、アルバムのテーマを象徴する一曲。
2. Give Me a Try
煌びやかなシンセとキャッチーなリズムが印象的な楽曲。新しい恋への期待と不安を歌い上げる、ダンサブルで開放感のあるナンバー で、ライブでも盛り上がる一曲。
3. Greek Tragedy
本作を代表するリードシングルで、劇的な恋愛の浮き沈みを「ギリシャ悲劇」に例えたリリック が秀逸。シンセを前面に押し出したサウンドと、The Wombats らしいユーモアのある歌詞が魅力。
4. Be Your Shadow
疾走感のあるビートとシンセポップのメロディが融合した楽曲。恋愛における執着心をテーマにした歌詞が、ハイテンションなサウンドと対照をなしている。
5. Headspace
スローテンポなナンバーで、恋愛の終焉と感情のすれ違い をテーマにした楽曲。ダークなベースラインと浮遊感のあるシンセが印象的。
6. This Is Not a Party
タイトル通り、都会のナイトライフの空虚さ を皮肉った歌詞が特徴的な楽曲。アップテンポなビートとギターリフが、無意味なパーティーの喧騒を表現している。
7. Isabel
アルバムの中で最も内省的なバラード。失われた愛への執着と後悔を歌った、感情的なボーカルが際立つ楽曲。
8. Your Body Is a Weapon
ロック色の強い楽曲で、キャッチーなギターリフとシンセのバランスが絶妙。タイトルからもわかるように、魅力的な外見のみに惹かれてしまう恋愛の矛盾 を描いている。
9. The English Summer
タイトルとは裏腹に、暑苦しくも退屈なイギリスの夏を皮肉った楽曲。ミステリアスな雰囲気のサウンドが独特。
10. Pink Lemonade
突き抜けるようなシンセと疾走感のあるドラムが特徴のポップナンバー。恋愛の不安と疑念を描いた、シニカルな歌詞 がThe Wombats らしい。
11. Curveballs
アルバムの締めくくりにふさわしい、メランコリックな楽曲。人生の思いがけない展開や、計画通りにいかない現実を受け入れることをテーマにしている。
総評
Glitterbug は、The Wombats がシンセポップとインディーロックの境界をさらに押し広げた作品 であり、恋愛の浮き沈みや都市の光と影をテーマにした、シネマティックなコンセプトアルバム となっている。
本作は、前作 This Modern Glitch で確立したエレクトロポップの要素をさらに洗練させ、よりモダンで都会的なサウンドへと進化している。「Greek Tragedy」や「Give Me a Try」などの楽曲はキャッチーでありながら、歌詞にはどこか寂しさや皮肉が込められており、アルバム全体のトーンを引き締めている。
おすすめのリスナー:
- シンセポップとインディーロックの融合を好む人
- The 1975 や CHVRCHES のようなエレクトロポップ寄りのインディーを楽しむ人
- 恋愛のリアルな側面や、都会の虚しさを描いた歌詞に共感できる人
おすすめアルバム
1. The 1975 – I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It (2016)
シンセポップとインディーロックを融合させたサウンドが共通している。
2. Two Door Cinema Club – Gameshow (2016)
ダンサブルなインディーロックとエレクトロサウンドの融合が光る作品。
3. Foster the People – Supermodel (2014)
シンセポップとギターロックのバランスが取れた作品で、The Wombats のサウンドと似たエネルギーを持つ。
4. Phoenix – Bankrupt! (2013)
エレクトロポップとインディーロックの洗練された融合が楽しめる。
5. CHVRCHES – Every Open Eye (2015)
シンセサウンドを前面に押し出したポップな作品で、The Wombats のエレクトロニックな要素と相性が良い。
Glitterbug は、The Wombats のシンセポップへの傾倒と、都会の幻想と現実のギャップを描いたコンセプチュアルな作品 であり、インディーロックシーンにおける彼らの立ち位置を確固たるものにしたアルバムである。
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