発売日: 2018年4月6日
ジャンル: ファンク / ネオソウル / ジャズヒップホップ
Tom Mischのフルアルバムデビュー作「Geography」は、彼の音楽的才能を一段と明確に示した作品だ。このアルバムでは、ジャズ、ネオソウル、ファンク、ディスコなど多彩な要素を巧みに融合し、聴き手を滑らかでポジティブな音楽の旅へと誘う。プロデューサー、シンガー、ギタリストとしての能力を見事に発揮し、彼自身が得意とするDIYスタイルを洗練された形で提示している。
「Beat Tape」シリーズの実験的な側面はそのままに、楽曲のポップ性やプロダクションの精度がさらに磨かれているのが特徴だ。また、多くのゲストアーティストとのコラボレーションもアルバムのハイライトとなっており、それぞれのトラックが異なる個性を放ちながらも一貫したトーンを保っている。
「Geography」は、Tom Mischがインディーシーンから世界的な注目を集めるアーティストへと進化した瞬間を捉えた作品であり、そのグルーヴィーで洗練されたサウンドは幅広いリスナーに響くだろう。
各トラック解説
1. Before Paris
ジャズ調のギターとナレーションが組み合わさったイントロ的なトラック。「芸術は純粋な自己表現である」というテーマを語り、アルバム全体のポジティブなトーンを設定する。
2. Lost in Paris (feat. GoldLink)
GoldLinkを迎えた、アルバムの中でも特にダンサブルなナンバー。軽快なギターリフとリズミカルなビートが特徴で、GoldLinkのラップが楽曲にアクセントを加えている。テーマは「失われたものとそれに対する郷愁」。
3. South of the River
アルバムを象徴する楽曲の一つ。ファンクとディスコの要素を取り入れたグルーヴィーなトラックで、トランペットやシンセが曲の高揚感を高める。リスナーを踊らせるポテンシャルを持った一曲。
4. Movie
映画のようにドラマチックなトラック。ストリングスが曲の深みを増し、Tom Mischの落ち着いたボーカルが感情を引き出している。イントロのヴィンテージ感も魅力的。
5. Tick Tock
アップテンポなインストゥルメンタルトラック。軽快なギターとリズムが印象的で、Tom Mischのプロデューサーとしてのセンスが際立つ一曲。
6. It Runs Through Me (feat. De La Soul)
De La Soulとのコラボレーション曲で、ジャズとヒップホップの融合が美しい楽曲。音楽そのものが人の人生に流れるエネルギーであるというテーマを歌い上げている。
7. Isn’t She Lovely
スティーヴィー・ワンダーの名曲をTom Mischがカバー。原曲のポップな魅力を保ちながら、彼らしいギターアレンジを加え、親しみやすい雰囲気を作り出している。
8. Disco Yes (feat. Poppy Ajudha)
ディスコの影響を前面に押し出したダンサブルなトラック。Poppy Ajudhaの伸びやかなボーカルとTom Mischのギターが完璧なバランスで共鳴し、パーティー感あふれる一曲に仕上がっている。
9. Man Like You
落ち着いたアコースティック調のバラード。シンプルなギターとTom Mischの柔らかいボーカルが、親密な雰囲気を生み出している。
10. Water Baby (feat. Loyle Carner)
盟友Loyle Carnerとのコラボレーション曲。ジャジーなピアノと心地よいビートがCarnerのラップを支え、リスナーにリラックスした空間を提供する。
11. You’re On My Mind
スムーズなギターリフとリズムが印象的な楽曲。シンプルな構成ながらも洗練されており、リラックスして聴ける。
12. Cos I Love You
Tom Mischのギターと感情的なボーカルが際立つロマンチックな一曲。シンプルなアレンジが、彼の音楽の本質を浮き彫りにしている。
13. We’ve Come So Far
アルバムのフィナーレを飾る壮大なトラック。サウンドが徐々に高まる構成が感動的で、アルバム全体のテーマである「音楽と人生の旅」を総括している。
アルバム総評
「Geography」は、Tom Mischが持つ音楽的多才さと深い愛情を存分に感じさせる作品だ。ファンク、ジャズ、ネオソウルといった要素を融合させたサウンドは、単なるジャンルを超えてリスナーに喜びを与える。洗練されたプロダクションと、温かみのあるボーカル・インストゥルメンタルの両面が絶妙なバランスで組み合わされており、彼のキャリアの新たなステージを象徴する一枚となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
99.9% by Kaytranada
エレクトロとファンクの融合が特徴で、Tom Mischファンにも響くビートの質感が楽しめる。
Home Again by Michael Kiwanuka
ネオソウルとフォークが融合した作品で、Tom Mischのアコースティックサイドが好きな人におすすめ。
Black Focus by Yussef Kamaal
ジャズとエレクトロニカが融合したアルバムで、リズムの複雑さと洗練されたサウンドが共通する。
Yesterday’s Gone by Loyle Carner
Tom Mischと多くコラボレーションしているUKラッパーLoyle Carnerのアルバム。リリカルで暖かみのあるサウンドが特徴。
Freudian by Daniel Caesar
甘美なネオソウルアルバムで、Tom Mischのソウルフルな側面を好むリスナーに最適。
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