Fourth of July by Galaxie 500(1990)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

Fourth of July” は、アメリカのインディーロックバンド Galaxie 500(ギャラクシー500) が1990年にリリースしたサードアルバム『This Is Our Music に収録された楽曲であり、バンドの最後のアルバムを象徴する重要な楽曲の一つである。

タイトルの「Fourth of July(7月4日)」はアメリカの独立記念日を指しているが、歌詞の中では祝祭的な雰囲気はなく、むしろ虚無感と孤独、人生の意味を見つけられない感覚 が支配している。主人公は、まるで「人生を無駄に過ごしているのではないか」と自問しながらも、特に何かをするわけでもなく、ただ日々を過ごしている。

「I wrote a poem on a dog biscuit(僕は犬用ビスケットに詩を書いた)」 という冒頭の歌詞は、無意味な行為の象徴として機能しており、主人公の人生に対する空虚な感覚 を強調している。一方で、曲の最後には「I feel fine(僕は大丈夫)」 というフレーズが繰り返され、絶望の中にもある種の諦めと受容が存在していることを示唆している

2. 歌詞のバックグラウンド

Galaxie 500は、1987年に結成されたアメリカのドリームポップ/スロウコアの先駆的バンド であり、そのミニマルで幻想的なサウンドは、後のインディーロックシーンに大きな影響を与えた。

This Is Our Music』は、バンドの最後のアルバム となり、リリース後まもなくしてフロントマンのディーン・ウェアハム(Dean Wareham)がバンドを脱退し、Galaxie 500は解散することとなった。そのため、このアルバム全体には、どこか終焉を迎えるバンドの雰囲気が漂っており、「Fourth of July」もその象徴的な楽曲のひとつとなっている。

音楽的には、シンプルながらも浮遊感のあるギターと、ナオミ・ヤン(Naomi Yang)の深みのあるベースライン、デイモン・クルコウスキー(Damon Krukowski)のスローテンポなドラムが組み合わさり、夢の中を彷徨うようなサウンドスケープを作り出している

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、この曲の印象的な歌詞の一部を抜粋し、日本語訳を添える。

I wrote a poem on a dog biscuit
And your dog refused to look at it

僕は犬用ビスケットに詩を書いた
でも君の犬はそれを見ようともしなかった

So I got drunk and looked at the Empire State Building
It was no bigger than a nickel

だから僕は酔っ払って、エンパイア・ステート・ビルを眺めた
それは5セント硬貨よりも小さく見えた

And I feel fine

そして僕は大丈夫

この歌詞では、人生の虚無感と、社会の中での自分の小ささを象徴するイメージが連続して描かれる

  • 「犬用ビスケットに詩を書く」という行為は、完全に無意味なことの象徴 であり、主人公が何かを表現しようとしても、それが何の影響も与えないことを示している。
  • 「エンパイア・ステート・ビルが5セント硬貨より小さく見える」 というラインは、酔っ払った視点のゆがみを表現すると同時に、自分自身がどれほど世界の中で取るに足らない存在なのかを感じる比喩 でもある。
  • 最後に「I feel fine(僕は大丈夫)」 というフレーズが何度も繰り返されるが、それが本心なのか、それとも自分自身に言い聞かせているのかは明確ではない。この曖昧さが、この曲の持つ哀愁と深みをより強調している。

※ 歌詞の引用元: Genius

4. 歌詞の考察

「Fourth of July」は、虚無感、孤独、そして世界の中での自分の存在の小ささ を描いた楽曲であり、Galaxie 500の中でも特に深い内省を促す楽曲 である。

  • 「無意味な行動」と「酔っ払いの視点」
    • 何か意味を持たせようとしても、それが世界に何の影響も与えないことに気づく瞬間の虚しさを象徴。
  • 「世界の巨大さと自分の小ささ」
    • エンパイア・ステート・ビルの比喩は、自己の無力感を視覚的に表現している。
  • 「I feel fine(僕は大丈夫)」の繰り返し
    • このフレーズは、本当に大丈夫なのか、それとも自分自身を納得させようとしているのかが曖昧 であり、聴き手に強い印象を残す。

この曲は、人生の中でふと感じる無力感や孤独、しかしそれでも日々が続いていくことを静かに描いている

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Tugboat” by Galaxie 500
    社会的な距離感と孤独をテーマにしたバンドの代表曲。
  • Blue Thunder” by Galaxie 500
    逃避と自由をテーマにしたドリーミーな楽曲。
  • “Sometimes” by My Bloody Valentine
    静寂と混沌が交錯するシューゲイザーの名曲。
  • “Fade Into You” by Mazzy Star
    浮遊感のあるメロディと切ない歌詞が特徴のドリームポップの代表曲。
  • Pink Moon” by Nick Drake
    内省的なフォークソングで、シンプルながら深い影響を与えた楽曲。

6. “Fourth of July” の影響と評価

「Fourth of July」は、Galaxie 500の持つ「静かでありながら圧倒的な感情を伴う」スタイルを象徴する楽曲 であり、ドリームポップやスロウコアのファンにとって特別な位置を占める楽曲 となっている。

特に、虚無感とそれを受け入れる感覚が、リスナーの心に深く刺さる 楽曲であり、バンドが解散した後も、インディーシーンで広く愛され続けている。


Fourth of July” は、孤独と虚無感を静かに受け入れる姿勢を描いた、Galaxie 500の名曲 であり、今なお多くのリスナーの心に響き続ける作品である。

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