1. 歌詞の概要
「Foolin’」は、Def Leppardが1983年に発表したアルバム『Pyromania』に収録されたシングルであり、バンドを世界的成功へと押し上げた重要な楽曲のひとつである。歌詞のテーマは、愛の駆け引きと裏切りの感情を描くもので、激情と迷いが交錯している。タイトルの「Foolin’（騙す／弄ぶ）」が示す通り、相手の愛情が本物なのか、それとも弄ばれているだけなのかという不安が中心となっている。語り手は「Is anybody out there?」「Is anybody foolin’ me?」と繰り返し問いかけ、孤独や疑念に苛まれる心情を吐露している。
一方で、歌詞は悲壮に沈むのではなく、サウンドのエネルギーと相まって切なさと高揚感を同時に表現している。愛の裏切りや不安がテーマでありながら、アリーナを揺るがすようなパワーを持ったアンセムとして成立しているのが特徴である。
2. 歌詞のバックグラウンド
1983年にリリースされた『Pyromania』は、Def Leppardにとって飛躍的な成功を収めたアルバムであり、アメリカを中心に爆発的な人気を獲得した。アルバムは全米チャートで2位を記録し、シングル「Photograph」とともに「Foolin’」も大きなヒットとなった。
「Foolin’」はシングルとして全米Billboard Hot 100で28位にチャートインし、MTVのヘヴィ・ローテーションによってさらに広がりを見せた。特に当時のDef Leppardは、アイアン・メイデンやジューダス・プリーストのようなヘヴィメタル寄りのサウンドから、メロディックで洗練されたハードロックへと進化を遂げており、その代表例がこの曲であった。
プロデューサーのロバート・ジョン・“マット”・ラングは、「Foolin’」においても多層的なギターハーモニーや精緻なコーラスワークを徹底的に構築し、バンドの音をラジオやMTVに適した形に仕上げた。結果として、この曲は「キャッチーでありながらハード」「切なさと力強さが共存する」というDef Leppardのサウンドを象徴する作品となった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
（歌詞引用元：Def Leppard – Foolin’ Lyrics | Genius）
Lady luck never smiles
幸運の女神は決して微笑まない
So lend your love to me awhile
だからせめて少しの間だけでも愛を貸してくれ
Do with me what you will
君が望むように僕を扱ってくれ
Break the spell, take your fill
呪縛を解いて、心ゆくまで満たしてくれ
Is anybody out there, anybody there?
そこに誰かいるのか、誰か答えてくれ
Does anybody wonder, anybody care?
誰か思ってくれるのか、気にしてくれるのか
Foolin’, foolin’, foolin’
弄ばれている、騙されている、惑わされている
歌詞は相手への愛を求める切実な願いと、自分が弄ばれているのではないかという疑念を行き来している。その揺れ動く心情が、サビの反復によって強調される。
4. 歌詞の考察
「Foolin’」の歌詞は、単なる失恋の歌ではなく「愛における信頼の危うさ」を描いている。語り手は愛を渇望しながらも、同時に相手に裏切られることを恐れている。そこには「愛されたい」という願いと「騙されているかもしれない」という不安が同居しており、その葛藤が「Foolin’」という一言に凝縮されているのだ。
また、サウンドとの関係も重要である。穏やかに始まり、次第に熱を帯びていく曲の展開は、心の迷いや激情の高まりを反映している。特にサビでの「Foolin’」の連呼は、まるで観客に向けて問いかけるかのように響き、個人的な苦悩がアリーナ全体を包む普遍的な共感へと昇華される。
Def Leppardの歌詞にはしばしば、愛や欲望を「不安定で危険なもの」として描く傾向が見られる。「Foolin’」はその典型であり、ただの甘美な恋愛の歌ではなく、信頼と裏切りの狭間に立つ人間の心の弱さを表現していると言える。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Photograph by Def Leppard
同じ『Pyromania』収録の大ヒット曲。憧れと欲望を切実に歌い上げる。 - Rock of Ages by Def Leppard
同アルバムの代表的アンセム。パワフルで祝祭的なエネルギーが共通。 - Too Late for Love by Def Leppard
『Pyromania』収録。メロディアスでドラマティックな構成が魅力。 - Livin’ on a Prayer by Bon Jovi
愛と困難をテーマにした80年代ハードロックの象徴。叙情性と力強さの両立が共通する。 - Waiting for a Girl Like You by Foreigner
愛に対する不安と切実さを描くバラード。メロディアスなアプローチが響き合う。
6. 「Foolin’」の持つ象徴性
「Foolin’」は、Def Leppardが『Pyromania』で達成したサウンドの成熟を象徴する楽曲である。ハードロックの力強さを保ちながら、メロディアスで大衆性を持つスタイルを確立し、以後の『Hysteria』へとつながる道筋を示した。
また、この曲はMTV時代の映像文化とも結びつき、ミュージック・ビデオを通じてバンドの魅力を広く伝えた。シリアスなテーマを持ちながらも、サウンドはキャッチーでパワフル。その二重性こそがDef Leppardの本質であり、「Foolin’」はその代表的な成果である。
今なおライブで演奏される定番曲であり、聴衆が「Foolin’」のコーラスをシンガロングする光景は、80年代ハードロックが持っていた熱狂と普遍的な共感力を象徴している。
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