1. 歌詞の概要
「Fade In-Out」は、オアシスが1997年に発表した3作目のアルバム『Be Here Now』に収録された楽曲である。全長6分以上に及ぶ長尺曲で、アルバムの中でも特にヘヴィで荒々しいギターサウンドが特徴的だ。歌詞は「苦悩」と「自己破壊」、そして「時間や意識の揺らぎ」といったテーマを扱っており、精神的な混乱や依存症的な影が色濃く漂っている。
タイトルの「Fade In-Out(フェード・イン/アウト)」という言葉自体が、意識が揺らぎ、現実と幻想の間を漂うような感覚を示しており、混沌とした時代のオアシスを象徴しているようにも聞こえる。
2. 歌詞のバックグラウンド
『Be Here Now』は、オアシスが世界的な大成功を収めた『Morning Glory』の後に制作されたアルバムであり、過剰なプロダクションと長大な曲構成が特徴となっている。その中で「Fade In-Out」は、当時のリアム・ギャラガーやバンドを取り巻く環境──過度の名声、ドラッグ、プレッシャー──を反映した楽曲だとされている。
特筆すべきは、ギターにジョニー・デップが参加している点である。彼は当時リアムの妻パッツィ・ケンジットを通じてバンドと親しくしており、スライドギターで楽曲に独特の響きを加えている。このエピソードは「Fade In-Out」を語るうえで欠かせない逸話だ。
また、歌詞や曲の構造には、アメリカ南部のブルース的要素と、サイケデリックな広がりが融合しており、ブリットポップの枠を超えたヘヴィロックとして存在感を放っている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元: Oasis – Fade In-Out Lyrics | Genius
Get on the roller coaster
ローラーコースターに乗れ
The fair’s in town today
今日は町に祭りが来ている
You get on the roller coaster
お前はそのジェットコースターに乗り
There’s no escape anyway
逃げ場なんてどこにもない
この部分は、人生の浮き沈みや混乱を「ジェットコースター」に喩えている。興奮と恐怖が入り混じり、避けられない運命に乗せられている感覚が表現されているのだ。
4. 歌詞の考察
「Fade In-Out」の歌詞は、まるで現実と幻想の境界が曖昧になっていく様子を描いている。タイトルの「フェードイン/アウト」という表現は、意識の覚醒と喪失、始まりと終わり、存在と消失の間を揺れ動く人間の状態を示唆している。
この時期のオアシスは、急激な成功の代償として心身ともに不安定な状態にあった。ノエル・ギャラガーはインタビューで「自分たちは頂点に立ったが、それが何を意味するのか分からなかった」と語っており、この曲にはそうした虚無感や混乱が反映されている。
また、リアムのヴォーカルは荒々しく、時に叫ぶように響く。これは単なる歌ではなく、「存在そのものの揺らぎ」を体現しているかのようだ。ギターのスライド音が酩酊感を伴い、曲全体を不安定に揺らしているのも、そのテーマと深く結びついている。
つまり「Fade In-Out」は、栄光の陰で揺らぐ精神状態を音楽に刻み込んだ楽曲であり、オアシスがブリットポップを超えて「ロックの混沌」を表現した重要な瞬間でもある。
(歌詞引用元: Genius Lyrics, 上記リンク参照)
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- D’You Know What I Mean? by Oasis
同じ『Be Here Now』収録曲で、混沌と過剰さを象徴するナンバー。 - Columbia by Oasis
デビュー期からの長尺サイケデリックチューンで、「Fade In-Out」と同じ陶酔感を持つ。 - Champagne Supernova by Oasis
幻想的で長尺な曲構造が共通し、内省的な響きを持つ名曲。 - I Am the Resurrection by The Stone Roses
長いアウトロとサイケデリックな広がりを持ち、オアシスに繋がるUKロックの系譜を感じさせる。 - Gimme Shelter by The Rolling Stones
荒々しさと不穏さが共通するロックの古典。
6. 特筆すべき事項:ジョニー・デップの参加と「Be Here Now」の象徴性
「Fade In-Out」は、『Be Here Now』というアルバム全体の「過剰さ」と「混沌」を体現する楽曲である。6分を超える長さ、荒々しいサウンド、そしてジョニー・デップのスライドギター参加──これらがすべて揃って、この曲は90年代後半のオアシスの姿を鮮明に映し出している。
特にジョニー・デップの参加は話題を呼び、当時のオアシスがいかに文化的・芸能的にも「中心」にいたかを示している。彼らの音楽は単なるバンドサウンドを超え、時代そのものの空気を吸い込み、爆発させていたのだ。
総じて「Fade In-Out」は、ブリットポップの光と影を凝縮した楽曲であり、オアシスのキャリアにおける「最も荒れ狂った瞬間」の証言とも言えるだろう。
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