アルバムレビュー:Fables of the Reconstruction by R.E.M.

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1985年6月10日
ジャンル: オルタナティヴロック、カレッジロック、サザンゴシック、ポストパンク


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概要

『Fables of the Reconstruction』は、R.E.M.が1985年にリリースした3作目のスタジオ・アルバムであり、アメリカ南部の風景と伝承を神話的に再構成した、“記憶と土地”のアルバムである。

イギリス・ロンドンで録音された本作は、過酷な天候や不慣れな環境がメンバーに心理的影響を及ぼし、バンド内では「制作中もっとも気が滅入った作品」と語られることもある。
だが、そうした閉塞感、不安、漂う土の匂いが逆に音に染み込むことで、本作は他のどのR.E.M.作品とも異なる、“重さ”と“深度”を獲得している。

プロデュースはジョー・ボイド(ニック・ドレイク、フェアポート・コンヴェンション)によって手がけられ、フォーク的素養やアメリカーナ的手触りが強く押し出されている。
そしてタイトルの“Reconstruction(再建)”は、南北戦争後のアメリカ南部社会の再構築期を指すと同時に、「語り直される神話」「歪んだ歴史の影」を象徴している。

このアルバムは、オルタナティヴロックとしてのR.E.M.“音楽ジャンル”を越えて、“風土と記憶”を表現しようとした初めての試みとして、現在でも高い評価を受けている。


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全曲レビュー

1. Feeling Gravitys Pull

不穏なチェロと複雑なコード進行で幕を開ける異色の一曲。
“重力の引力”という比喩を通して、存在の不安定さや人生の重さを描く。
実験的なサウンドはアルバムの空気を決定づける。

2. Maps and Legends

失われた土地、忘れられた人々──この曲は、R.E.M.が描く“南部の寓話”の序章。
コーラスの重なりとアコースティックギターが、祈りのような響きを持つ。

3. Driver 8

鉄道のリズムに乗ってアメリカ南部の風景を駆け抜ける、フォークロック調の名曲。
疾走感と郷愁が共存し、「運転手8号」は現実の職業であると同時に、逃避行の象徴でもある。
ピーター・バックのギターリフが美しい。

4. Life and How to Live It

実在したジョージア州アセンズの変人“ブレイン・ウィルバー”の半生をモチーフにしたストーリーテリング・ロック。
スピード感のある演奏と謎めいた語り口が交差し、都市伝説的な魅力を放っている。

5. Old Man Kensey

田舎の変わり者“ケンジー老人”の人物像を描く。
乾いたベースと不穏なテンポが、南部の埃っぽい空気と怪異性を感じさせる。
ローカルな風景を、世界の終わりのように描く手腕が光る。

6. Cant Get There from Here

ホーンを導入した、アルバム中では珍しいファンキーなナンバー。
“そこへは行けない”というタイトルが、閉ざされた田舎町の地理的・文化的孤立を象徴する。
皮肉とユーモアが入り混じる佳曲。

7. Green Grow the Rushes

詩的なタイトルは古いイギリス民謡の引用。
実際の内容は労働者搾取や階級構造への批判とも解釈される。
明確な政治性を避けつつも、“音の民話”としての力強さを持つ。

8. Kohoutek

チェコの彗星にちなんだタイトルで、“一度だけ現れる奇跡”を暗喩。
スタイプのボーカルは抑制されながらも感情を滲ませ、消えていくものへの哀悼が漂う。

9. Auctioneer (Another Engine)

切迫したテンポとカウボーイ風のギターが織りなすスリリングなナンバー。
“競売人”というテーマは、資本主義社会における人間の取引的存在を暗示しているようにも。

10. Good Advices

「もし困ったら、橋を渡って南へ行け」と語る、内省的で優しい曲。
まるで人生の旅路を静かに励ますような、R.E.M.らしい小さな福音。

11. Wendell Gee

バンジョーとピアノが織りなす、牧歌的で美しいクロージング。
“ウェンデル・ジー”という人物の肖像を通して、アメリカ南部の風土と人間模様がにじみ出る。
R.E.M.の“サザン・ゴシック”的アプローチの象徴的楽曲。


総評

『Fables of the Reconstruction』は、土地・記憶・神話が渾然一体となった、R.E.M.流“サザン・ゴシック・フォークロア”である。
単なるロックアルバムではなく、詩的な紀行文、オルタナティヴな民話集、そして南部の夢の地図のような作品なのだ。

音像はどこか湿っぽく、霧に包まれたような感覚が常につきまとう。
しかしその霧の中には、たしかに実在した誰かや、かつてあった場所の匂いが封じ込められている。

当時の批評家の間では賛否が分かれたが、後年に再評価が進み、現在ではR.E.M.初期の最も文学的かつ奥深い作品として知られている。
Murmur』や『Reckoning』が“音の詩”だったとすれば、『Fables of the Reconstruction』は“土地の小説”である。


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歌詞の深読みと文化的背景

『Fables of the Reconstruction』におけるマイケル・スタイプのリリックは、
直接的な社会批判や個人的感情の吐露を避け、曖昧な語りと地元の伝承を使った“間接話法”で構成されている。

これは、1980年代において南部の記憶がいかに“語られにくいもの”であったかを物語っている。
奴隷制度、貧困、宗教、孤独、そして忘れられた人々——そうしたものが“寓話”として歌われることで、より普遍的な“アメリカの内面”が浮かび上がる。

『Fables of the Reconstruction』は、
音楽で書かれたアメリカ南部の伝記であり、歴史の中で忘れられた声に静かに耳を傾けるアルバムなのだ。

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