発売日: 1972年5月12日
ジャンル: ロック、ブルースロック、カントリーロック、ソウル、ゴスペル
The Rolling Stonesの『Exile on Main St.』は、1972年にリリースされた2枚組アルバムで、彼らのキャリアの中でも最高傑作とされる作品だ。フランスのニースにあるキース・リチャーズの邸宅「ネルコート」で録音され、その過程で生まれた荒々しいエネルギーと多様な音楽性がアルバム全体を貫いている。ブルース、カントリー、ロカビリー、ソウル、ゴスペルといったジャンルが絶妙にミックスされ、当時の彼らのライフスタイルと音楽への探求心を象徴する作品となっている。
アルバムの制作背景は混沌そのもので、ドラッグや法的問題が影を落としつつも、結果としてその混沌がアルバムの魅力を高める重要な要素となった。楽曲の録音には多くのゲストミュージシャンが参加し、バンドのインタープレイとゲストによる多彩な音色が、作品に奥行きを与えている。リリース当初の評価は賛否両論だったが、後にその重要性が再評価され、今ではロック史上最高のアルバムの一つとして広く認識されている。
各曲解説
1. Rocks Off
アルバムを象徴するダイナミックなオープニングトラック。疾走感のあるギターリフとミック・ジャガーのボーカルが、アルバム全体の荒々しいエネルギーを体現している。ホーンセクションが加わり、楽曲に厚みを与えている。
2. Rip This Joint
ロカビリーとパンクの先駆けともいえる、スピーディーで攻撃的なナンバー。キース・リチャーズのギターが炸裂し、バンド全体が解放感に満ちた演奏を繰り広げる。
3. Shake Your Hips
スリム・ハーポのブルースナンバーをカバーした楽曲で、ミニマルなアレンジと反復的なリズムが中毒性を生む。ストーンズがブルースに深く根ざしていることを感じさせる一曲。
4. Casino Boogie
ルーズな雰囲気が漂う楽曲で、バンドの即興性が際立つ。ジャガーとリチャーズのボーカルの掛け合いが独特の味わいを生む。
5. Tumbling Dice
アルバムを代表する楽曲で、ゴスペルやソウルの要素が色濃く反映されたミッドテンポのナンバー。グルーヴ感のあるリズムセクションとジャガーのリリカルなボーカルが魅力的だ。
6. Sweet Virginia
アコースティックギターとハーモニカが心地よいカントリーナンバー。ジャガーの飾らない歌声とコーラスが、温かみのある雰囲気を作り出している。
7. Torn and Frayed
カントリーロックの影響が色濃い楽曲で、リチャーズのスライドギターが特徴的。歌詞にはロックスターの孤独や困難が描かれている。
8. Sweet Black Angel
レゲエのリズムを取り入れた異色のトラック。アフリカ系アメリカ人の公民権活動家アンジェラ・デイヴィスをテーマにした歌詞が社会的なメッセージ性を持つ。
9. Loving Cup
ピアノを主体としたソウルフルなバラードで、アルバムの中でも特にロマンチックな一曲。ジャガーのエモーショナルなボーカルとホーンセクションが美しい。
10. Happy
キース・リチャーズがリードボーカルを務める名曲で、彼の自由奔放なパーソナリティが反映された楽曲。シンプルながらも、聴き手の心に残るポップなメロディが特徴的。
11. Ventilator Blues
ドロドロとしたブルースナンバーで、暗く重厚な雰囲気が漂う。ホーンセクションとリズムセクションが楽曲を引き締めている。
12. Let It Loose
ゴスペルの影響を感じさせる壮大な楽曲で、ジャガーの感情的なボーカルとコーラスが聴きどころ。アルバムの中でも特にスピリチュアルな一曲。
13. All Down the Line
軽快なギターリフが特徴的なロックナンバーで、ライブでも定番となる楽曲。バンドの勢いが感じられる。
14. Stop Breaking Down
ロバート・ジョンソンのブルースナンバーをカバー。ギターリフとジャガーのパワフルなボーカルが際立つ。
15. Shine a Light
神聖な雰囲気を持つゴスペル調の楽曲で、ジャガーのボーカルが心に響く。アルバム全体のテーマを総括するような深い感情が込められている。
16. Soul Survivor
アルバムを締めくくるアップテンポのトラック。軽快なギターワークとボーカルが印象的で、最後までストーンズのエネルギーを感じさせる。
アルバム総評
『Exile on Main St.』は、The Rolling Stonesがその音楽的ルーツを存分に探求し、混沌の中から創り上げたロックの大傑作だ。ブルースやカントリー、ソウル、ゴスペルといった要素が見事に融合し、幅広い音楽性を楽しめるこのアルバムは、彼らの創造性と革新性の証明である。特に「Tumbling Dice」や「Happy」といった楽曲は、彼らのカタログの中でも不朽の名作として知られている。混沌と洗練が絶妙に共存する『Exile on Main St.』は、ロック史に燦然と輝く名盤だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Sticky Fingers by The Rolling Stones
本作の前作で、ブルースやカントリーの要素が色濃い名盤。代表曲「Brown Sugar」や「Wild Horses」を収録。
Let It Bleed by The Rolling Stones
ストーンズの音楽的ルーツと成熟が感じられる作品。ブルースやカントリーテイストが本作と共通する。
The Basement Tapes by Bob Dylan & The Band
同じくルーツミュージックを探求した作品で、ブルースやフォークのエッセンスが詰まっている。
American Beauty by Grateful Dead
カントリーやフォークの要素をロックに取り入れた傑作で、『Exile on Main St.』のカントリーテイストを好む人に最適。
Cosmo’s Factory by Creedence Clearwater Revival
アメリカ南部のルーツミュージックをベースにしたアルバムで、ストーンズのファンにもおすすめ。
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