発売日: 1972年11月5日
ジャンル: サイケデリック・ロック / カントリーロック / ジャムバンド
The Grateful Deadの3枚組ライブアルバムEurope ’72は、1972年春に行われたヨーロッパツアーの中から厳選されたパフォーマンスを収録した作品だ。このアルバムは、バンドのライブバンドとしての本質を捉え、彼らの卓越した即興演奏とスタジオでは表現しきれないダイナミズムを伝えるものとなっている。
収録曲は、新曲と既存曲の両方をバランスよく組み合わせており、カントリーロック、フォーク、サイケデリックロックの要素が複雑に絡み合っている。また、音質面でもスタジオアルバムに匹敵するクオリティを持ち、リリース後にはThe Grateful Deadのライブアルバムとして高く評価された。以下に、主要楽曲を中心に解説する。
1. Cumberland Blues
カントリーブルースとロックを融合させた楽曲で、軽快なリズムと複雑なコーラスワークが印象的。ライブならではのエネルギッシュな演奏が楽曲に新たな生命を吹き込んでいる。
2. He’s Gone
アルバムで初披露された新曲で、後にバンドの代表曲の一つとなる。感傷的なメロディとJerry Garciaの優しいボーカルが特徴的で、喪失感をテーマにした歌詞が心に染みる。
3. Jack Straw
Bob WeirとJerry Garciaが交互に歌うストーリーテリングの一曲。犯罪者二人の物語を描いた歌詞が印象的で、デッドらしいリズムチェンジとエモーショナルなギターワークが際立つ。
4. China Cat Sunflower / I Know You Rider
ライブの定番メドレーとして人気の高い楽曲。サイケデリックな「China Cat Sunflower」とフォークの伝統曲「I Know You Rider」が自然に融合し、バンドの即興性と一体感を感じさせるパフォーマンスとなっている。
5. Brown-Eyed Women
アルバム初登場の新曲で、カントリーロックのリズムが心地よい一曲。酒造りと家族の物語を描いた歌詞が詩的で、ペダルスティールギターが楽曲に温かみを加えている。
6. Truckin’
スタジオ版よりも長尺で展開される、ライブならではのダイナミックな演奏。自由奔放なツアー生活をテーマにした歌詞が、観客との一体感を生み出している。
7. Morning Dew
ライブでは特にドラマチックな展開を見せる楽曲で、核戦争後の静けさを描いた歌詞が深い余韻を残す。Jerry Garciaの感情的なギターワークとボーカルが圧巻のパフォーマンス。
8. Sugar Magnolia
Bob Weirがメインボーカルを務める明るいナンバーで、ライブの観客を盛り上げる定番曲。ライブバンドとしてのThe Grateful Deadの魅力が詰まった楽曲。
9. Ramble on Rose
カントリーフォーク調の楽曲で、Garciaのリードボーカルが物語性のある歌詞を引き立てる。ライブでのバンドのアンサンブルが楽しめる一曲。
10. Playing in the Band
ライブアルバムのハイライトとも言える楽曲で、即興演奏をふんだんに取り入れたジャムセッションが圧巻。Bob Weirのボーカルとリズムセクションの躍動感が際立っている。
アルバム総評
Europe ’72は、The Grateful Deadがライブバンドとしての真髄を発揮したアルバムであり、彼らの即興演奏や多様な音楽性を存分に堪能できる作品だ。収録曲のどれもがライブならではの新たな表情を見せ、スタジオアルバムとは異なるバンドのダイナミックな一面を捉えている。
特に、Jerry GarciaとBob Weirの掛け合いや、リズムセクションの一体感、即興セクションでの冒険的なアプローチが聴きどころだ。また、初披露の新曲が多く含まれており、ライブアルバムでありながらバンドのクリエイティビティを強く感じさせる一枚となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Live/Dead by The Grateful Dead
バンド初のライブアルバムで、サイケデリックジャムの真骨頂を楽しめる。Europe ’72が好きなら必聴。
Workingman’s Dead by The Grateful Dead
フォークやカントリー色が濃厚なスタジオアルバム。Europe ’72のルーツを感じられる。
American Beauty by The Grateful Dead
美しいハーモニーと親しみやすいメロディが際立つ名盤。スタジオ版での楽曲がライブでどのように変化するか楽しめる。
Get Yer Ya-Ya’s Out! by The Rolling Stones
ライブアルバムの名盤で、バンドのエネルギーと観客との一体感を味わえる。
At Fillmore East by The Allman Brothers Band
ジャムバンドのライブアルバムとして必聴の一枚。The Grateful Deadファンには特におすすめ。
コメント