1. 歌詞の概要
「Dreamy Wednesdays（ドリーミー・ウェンズデイズ）」は、スウェーデンのギター・ポップバンド The Wannadies（ザ・ワナダイズ）の代表作『Be a Girl』（1994年）に収録された楽曲のひとつであり、そのタイトルどおり「夢見るような水曜日」という、平日のどこか退屈で曖昧な時間帯にふと訪れる非現実や感情の揺らぎを描いた、小さな宝石のような一曲である。
この曲は、何か大きな出来事が起こるわけではない。ただ、その「何も起きない」日常の中にある、ささやかな感情の起伏――あるいはそこから抜け出したい衝動――を、淡く、優しく描いている。
主人公は、特別でも劇的でもない“水曜日”という平凡な一日を生きながら、その中でふと訪れる「空想」「欲望」「孤独」などの感情を断片的に語っていく。
その語り口は決して明るくもなく、完全に沈んでいるわけでもない。“白昼夢”のような、曖昧で美しい時間が流れている。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Dreamy Wednesdays」が収録されている『Be a Girl』は、The Wannadiesにとって3枚目のスタジオアルバムであり、彼らの名を世界に広げるきっかけとなった作品である。
「You and Me Song」や「Might Be Stars」などに象徴される、甘酸っぱくポップで、かつエモーショナルなサウンドはこの時期の彼らの真骨頂であり、「Dreamy Wednesdays」もまたその中に溶け込むように配置されている。
この曲は、アルバムの中で激しさのある曲と、柔らかく淡い曲との中間に位置しており、作品全体の流れにひとときの“夢”を与える役割を果たしている。
タイトルに曜日を使うというアプローチも印象的で、日常と非日常の境界線を曖昧にし、「あなたの普通の日のどこかに潜む魔法」のようなテーマが込められている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に歌詞の一部を抜粋し、その和訳を紹介する。
“Dreamy Wednesdays, I don’t want to go”
「夢みたいな水曜日、まだここにいたいんだ」
“Lying in the sun with nowhere to run”
「太陽の下に寝転んで、どこにも行くあてなんてなくて」
“I think of you / When nothing’s new”
「何も起こらない日には / 君のことを思い出す」
“I wish you’d come around”
「君が来てくれたらいいのに」
こうした詩は、直接的な愛や別れを語ってはいない。しかしその中に、誰かを待つ気持ち、つながりを求める気持ち、変わらない日々への少しの苛立ちと甘さが丁寧に綴られている。
歌詞全文はこちら：
The Wannadies – Dreamy Wednesdays Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「Dreamy Wednesdays」は、その題名のとおり、何かが始まるわけでも終わるわけでもない、けれど確かに“夢”が滲むような時間の感覚を音楽に落とし込んだ作品である。
「水曜日」という、週のちょうど真ん中にあたる平凡な日を舞台に選んでいるところに、この曲の詩的な意図がある。
誰かに会いたい。けれど会えない。
何か変化が欲しい。けれど起きない。
そんな“空白の一日”において、唯一の心の支えとなるのが“思い出”や“誰かの存在”であり、この曲ではその“記憶の居場所”としての「君」が非常にやわらかく描かれている。
また、抑制されたテンポと優しいギターの音色が、この曖昧で繊細な心理描写を支えており、まるでリスナーを水の中に漂わせるような心地よさを生み出している。
「愛してる」とも「寂しい」ともはっきり言わないまま、ただ“想う”という行為そのものの美しさに焦点が当てられているのが、この曲の最大の魅力である。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Nothing Matters When We’re Dancing by The Magnetic Fields
平凡な一日の中で見つけた“魔法のような瞬間”を、やさしく綴ったインディ・ポップの名曲。 - Your Picture by Camera Obscura
写真という記憶の断片にしがみつくような感情を、緻密に描いたノスタルジックな一曲。 - Lazy Line Painter Jane by Belle and Sebastian
日常の怠惰の中にある詩情と、突然訪れる感情の爆発を優しく包み込んだ曲。 - Lorelei by Cocteau Twins
言葉にならない感情を、サウンドの輪郭だけで描き切るような夢幻的トラック。 -
Sunflower by Low
沈黙と光の狭間に揺れるような、内省的で美しいスロウコア。
6. “水曜日にだけ咲く、静かな夢”
「Dreamy Wednesdays」は、The Wannadiesが得意とする“感情の揺らぎ”と“日常に潜む非日常”を見事に音楽化した楽曲であり、リスナーにとっての“心の余白”となるような存在である。
派手さはない。しかし、そのさりげなさの中に、きらりと光る感情のかけらが詰まっている。
この曲は、何も起きない日をそっと肯定してくれる、“夢見ることを忘れないための歌”である。
いつかの水曜日、午後の光の中で聴きたくなる――そんな“今すぐではないけれど、確かに必要な”音楽なのだ。
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